ファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、久しぶりの更新です。
このところ、がっかりする事や、落ち込むことが多くて、創作も滞りがちになってしまいました。
ただ、作品を書いていると、気持ちが晴れて来る面もあるので、ぼちぼちがんばって取り組みたいと思います。

今回は、第13章・第5話です。

前回までのあらすじ
帽子のベレーズが空飛ぶ舟「カラブネ」の作り方を教えてくれると言うので、ダンケルとマイネはその代わりに、シンギ半島に渡ってからも、サキを捜す事を約束したのでした。


魔法使いサキの物語
第13章・第5話「カラブネ」

ダンケルとマイネは、ベレーズからまずは南の海岸へ行くように言われたので、二時間ほど歩いて、岩場の小さな入り江に来ました。
岸から見ると、海の中には紫色の海藻がたくさん生えていて、潮の流れに絶えずゆらゆらと揺らめいていました。
「あの海藻を、鍋一杯集めて下さい。」
ベレーズが言うので、ダンケルは海に入って行って、生い茂った海藻を二、三本根元から引き抜くと、岸に置いた鍋に運んで来ました。「やけにべたつく海藻だな。」
手や足に切れ端がへばり付くので、ダンケルは海水で洗い流そうとしましたが、なかなかきれいに落とせませんでした。
「そのべたつきが良いのです。お次は、海岸沿いを東へ行って下さい。そこに小高い灰色の崖があるので、今度は麻袋いっぱい、崖の土を集めて下さい。」
ベレーズの言葉通り、二人が東へ行くと、海岸のそばに、灰色の小高い崖が見えてきました。
崖の土は手で削れるほどもろくて、しかもとても軽かったので、麻袋いっぱい詰めるのに、大した手間はかかりませんでした。
マイネが麻袋を片手で持ち上げて、「こんなもんでいいのかい。」と聞くと、ベレーズは、
「ええ、十分です。」と答えて、
「お次は、この崖の上に生えている、とがった葉を茂らせたやせた低木の根元を掘って、丸くて黒いきのこを探して、きっかり三粒集めて下さい。」と、言いました。
二人はゆるやかな斜面を登って、灰色の崖の上に出ました。そこには、ベレーズの言ったとおり、とがった葉を茂らせたやせた低木がまばらに生えていました。二人はさっそく、その木の根元を掘りはじめました。しばらくは、何も見つかりませんでしたが、方々掘っていると、やがて、土の中から、黒くて丸い、胡桃(くるみ)くらいのきのこが出てきました。
「おいしそうな匂いだな。」
ダンケルがしわだらけのきのこを鼻に近付けて、食欲を誘う甘やかな香りをかいでいると、ベレーズは、
「それはブタゴロシという猛毒のキノコですので、間違っても食べてはいけませんよ。」と注意したので、ダンケルはあわてて鼻から離しました。
二人は半時間ほどかけて、その毒キノコを、きっかり三粒集めました。
「では、海岸に戻って下さい。そこで、集めた材料を加工する手順をお教えします。」
海岸に戻ると、二人はベレーズの指示に従って、海藻と毒キノコの入った鍋を火にかけ、真水を加えて温めはじめました。
時折、魔法で起こした電流で刺激してやると、さっきまで良い匂いを漂わせていた毒キノコが、次第に猛烈な悪臭を放ちだしたので、二人はたまらず、布で口元を覆うと、煮汁がドロドロになるまで、ひたすらかき混ぜつづけました。その煮汁を、岩場に半分あけた崖の土にまぶして、顔を背けながら素手でこね続けると、次第に色が白っぽくなって、臭いもなくなって来たので、残りの崖の土を加えてさらに練り続けました。
日が暮れて、すっかりあたりが暗くなった頃、でき上がったのは、まっ白くて柔らかな、大きな一かたまりの粘土でした。
「ここからは、時間との戦いですよ。粘土が固まってしまうまでに、カラブネの原型を作ってしまわなければなりませんから。」
「カラブネの原型ってどんなのさ。」
「ここに図面がありますので、この通りに。」
ベレーズがいつの間にか、口に図面をくわえていたので、マイネは、
「怖いくらいに用意周到だなぁ。」と感心しました。
図面には、脚が四本ある奇妙な帆舟が描かれていて、図の内側や外側には、各部の寸法や角度、それに、細部を仕上げるための魔法の種類が、びっしりと書き込まれていました。
幸い、マイネは図面が読めたので、ダンケルに作業の手順を教えながら、粘土を伸ばしたり貼り付けたりして、船体の大まかな形と、脚や帆柱などの部品を作って行きました。
寝ずの作業のかいがあって、夜明け頃には、船体や部品が全てでき上がったので、二人はそれを組み立てて形を整え、魔法でたき火の火力を高めて固く焼き上げると、冷めるのを待ってから、麻布の帆を帆柱に二枚張って、どうやら図面通りの帆舟を完成させることができました。
ダンケルは波打ち際に帆舟を浮かべると、
「ミュステル職人も顔負けのきれいな出来栄えじゃないか。」
と、朝日を浴びてまぶしく輝くその真っ白な船体を満足そうに眺めました。
「でも、こんな舟が、僕らを乗せて本当に空を飛ぶんだろうか。」
マイネが、舟をよくよく見て、疑わしそうに言いました。
「もちろんです。風を操る魔法で走らせるだけで、簡単に空を飛ばすことができます。」
ベレーズの言葉に、ダンケルとマイネはけげんそうに振り返ると、「俺たちは風を操る魔法なんて使えないぜ。」と声をそろえて言いました。
「え?お二人は、魔法使いの試験に合格した、正式な魔法使いなのでは?」
「魔法使いの試験は、水を御する試験、火を御する試験、雷を御する試験の三つじゃないか。風を操る魔法は必須科目じゃないよ。」
「そんな、風を操るなんて、ごく初歩的な魔法ではないですか。」
「ああぁ!なんてこった!カラブネ作りは全くの無駄骨か!」
ダンケルはへたり込んで岩の上に大の字に倒れ込みました。

つづく


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【カラブネを作るダンケルとマイネ】


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魔法使いサキの物語 第13章・第5話 「カラブネ」|Kobitoのお絵描きブログ