オリジナルのファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第13章・第3話をご紹介します。
今回は、この物語の根底にある謎の多くが、帽子のベレーズによって打ち明けられて行くという、重要な回です。
これまでに登場した人物を大まかにまとめた、「登場人物相関図」も書いてみたので、テキスト末尾に貼っておきます。参考にしながらお読みください。

前回までのあらすじ
サキの帽子のトミーが入っていると思っていた小箱には、魔法長官スナクフの帽子だというベレーズが入っていました。
マイネはあきれ、ダンケルは怒り心頭です。ベレースは、二人をだましてまで、サキを追わせた事情を語りはじめます…。


魔法使いサキの物語
第13章・第3話「白い影の正体」

「なぜ今まで小箱に閉じこもっていたんだい。僕らが旅の間、どんな目にあって来たか、お前だって知ってるんだろう。スナクフ様の考えあってのことにしても、あんまりじゃないか。」
マイネが、ダンケルをなだめるように、穏やかにベレーズにたずねました。
「私だって、どんなにふたを開けて、お二方に事情をご説明したかったかしれません。でも、それはお二方にとって、さらなる危険を招くことになりますので、できなかったのです。」
「どういう意味だ?俺たちに話すとまずいんなら、今だって話せないって事じゃないか。」
ダンケルが、帽子のつばを握る力をゆるめたので、ベレーズはふうっと息をつくと、「今だからこそ、お話しできるのです。お二人は、たった今、サキ様を追う事を完全にあきらめましたから。それが、付きまとう影をまくために、必要なことだったのです。」
「影って、あのモリーの宿場の手前で僕らが見た、白いうすっぺらな人影かい。」
マイネがベレーズに顔を寄せて聞きました。ベレーズは声を潜めて、
「左様です。あれはスナクフ様に掛けられた魔法から生じた影で、ブランと言います。ブランはお二人の監視をし、サキ様にある役目を果たさせるために、お二人やその周囲の人々の行動を操って、サキ様をナップへ向かわせようとしていました。しかし、お二人がサキ様を追う事をあきらめたことで、魔法の効力がなくなり、ブランも消え失せました。だから、私は安心して、お二人に事情を話せるようになったのです。」
「スナクフ様にそんな強力な魔法をかけるようなすごい魔法使いって、いったい誰なんだ。」
ダンケルがたずねると、ベレーズはいっそう声を落として、
「ミタマ様でございます。」
と答えました。
マイネが目を丸くして、
「ミタマ様って、あの、三法者の一人の?」
と、つられて、声を潜めて聞きました。
「スナクフ様はミタマ様のお弟子でございます。ミタマ様は、たいへん用心深い方でしたので、お弟子の方々それぞれに、ご自身の影響力を保つ魔法を、ひそかにかけておられたのでございます。」
「しかし、ミタマ様って、大昔の人だろう。まだ生きていたのか?だって、呪文を刻んだ魔法以外は、自分の死後も効力を残すことはできないんだろう?」ダンケルが聞きました。
「肉体は滅びておりますが、魂はまだ存在しております。その、ミタマ様の魂が封じられている場所が、おそらく東の果てのナップなのです。」
「封じられているって、どういうことだ?」
「ある魔法の実験の失敗で、ミタマ様の肉体と魂は分離され、魂だけが、遠く離れたナップの地に飛ばされ、何らかの方法で封じられているのだろうと、スナクフ様は申しておりました。その、魔法の実験というのが、三法者の書に記されている膨大な魔法の中でも、最も難しいとされる三大魔法の一つである、“死者をよみがえらせる魔法”なのです。そして、その魔法の実験の材料として利用されたのは、サキ様のお父様のセイヴァン様と、お母様のニールスエスタ様でした。」
「ミタマ様は、セイヴァン様がお仕事で命にかかわる重傷を負い、ニールスエスタ様が救いを求めて訪れた時に、ニールスエスタ様をだまして、セイヴァン様を死者をよみがえらせる魔法の材料にしようとしたのです。そして、その魔法の儀式の途中で、ミタマ様がセイヴァン様を救うつもりがないことを悟ったニールスエスタ様は、儀式を妨害して、魔法を失敗させたのです。ミタマ様はその失敗の反動で、肉体と魂を分離させられて、遠くナップまで飛ばされてしまったのだろう、ということです。」
「サキは、ミタマ様の魂が封じられている場所に行こうとして、ナップを目指しているのか?」
「違います。サキ様は、ミタマ様の事も、ミタマ様とご両親とのいきさつも、まったくご存じありません。サキ様は、ブランの力でナップに飛ばされた、お師匠のカン・ソク様を助け出すために、ナップを目指しているのです。」
「なんてこった!サキがカン・ソク様の弟子だと言っていたのは、本当のことだったんだ!」
ダンケルが叫ぶと、マイネも、
「カン・ソク様の安否を、スナクフ様に占ってもらうために、サキはスナクフ様に会いに行ったんだ。」
と、うなづきながら言いました。
「しかし、なんでスナクフ様は、サキに両親の事を話してやらなかったんだろう。お前の話を聞いてると、ミタマ様ってかなりやっかいな人みたいじゃないか。そんなやばい人の魂に、サキが近づかないように、注意してやることもできただろうに。」
「もし、スナクフ様がすべてを話せば、サキ様はミタマ様の魂の力を意識することになり、ブランがもたらす影響を、より強く受ける事になっていたでしょう。まだ未熟なサキ様では、行動すべてをブランに操られてしまう恐れもあったのです。しかし、ブランの力は、すでにサキ様やその周囲の人々にもおよんでおりましたから、スナクフ様は、たとえサキ様を一時的にお守りできたとしても、いずれブランの力が上回ってサキ様を操ってしまうだろうと予見されて、サキ様の魔法使いとしての資質の高さを信じて、因縁のあるこの問題の解決を、サキ様自身に委ねようとなさったのです。」
「ミタマ様は、サキを自分のところに来させようとしているようだけど、それはなぜなんだい?」
「分かりません。スナクフ様は、その点を詳しく教えては下さらなかったのです。」
「スナクフ様は、王様を暗殺する計画を立てていたのか?」
ダンケルのこの質問には、さすがのベレーズも声を荒げて、
「スナクフ様が、どんなにアモス王に忠誠を誓い、また心から慕っておいでだったか、私はそばで見ていてよく存じております。魔法庁の内部に、革命の動きがあることは、スナクフ様も察知して、警戒はしていたのです。しかし、多勢に無勢で、スナクフ様の力では、どうにも抑えようがなかったのです。せめて、暗殺未遂などという濡れ衣を着せられても、アモス王には、スナクフ様の忠心を信じて頂きたかったのですが、それもかなわず…。」と、自分のリボンを噛んでくやしがりました。
ダンケルは、
「分かった、悪かったよ。俺も、スナクフ様がフラトで魔法使いの地位を認めさせたってことを、誇りにしていたんだ。だから、これからもスナクフ様を信じるよ。」
と、ベレーズに味方するように言いました。


つづく
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