今日は、オリジナルのファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第13章・第2話を書き進めてみたので、ご紹介します。

前回までのあらすじ
サキを追ってナーグリアの国境までやって来たダンケルとマイネですが、ナーグリアでは魔法使いを入国させないために、国境の警備を厳重にしていたので、関所に近付くこともできずに追い返されてしまうのでした。


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魔法使いサキの物語
第13章・第2話「帽子の小箱、ひらく。」

イストパ(フラトやナーグリアを含む、ゴンドラ大陸東端の地域の総称)からシンギ半島に渡るには、ナーグリアのサドゥから出航する交易船に乗るほかに、ナーグリアを西へ横断して、サランダムから陸路で南下する方法もありました。しかし、いずれにしても、ナーグリアには入国しなければいけないので、二人は何か良い手立てがないか、考えてみる事にしました。
「ナーグリアが、審問官のしもべの魔法使いたちも例外視せずに追い出してくれたら、楽なんだけどなぁ。」
マイネがぼやくと、ダンケルは、
「そこがナーグリアの巧妙な所さ。普通の人間が束になっても、一人の魔法使いをとっつかまえることさえ難しいからな。審問官は手下の魔法使いたちに、身の安全と仕事を保障する代わりに、家族を人質に取って、魔法使いが裏切ったり逃げ出したりしないようにしているそうだ。」
「サキはどうしたろうね。ナーグリアに入国できて、交易船に乗れただろうか。」
「あいつがここにたどり着いた頃は、まだ国境の警備もそれほど厳しくなかっただろうから、案外すんなり交易船に乗れて、今は優雅な船旅の最中ってとこかもな。」
「交易船がサドゥに帰港するのは二ヶ月後だろう。サキを追う任務も、これでお手上げだね。」
「他人のことより、とりあえず自分たちの身の振り方を考えようや。」
マイネは、馬に負わせた荷から、地図を取り出して、それを地面に広げながら、
「交易船が戻ってくるまで、この辺で野宿して待つのが妥当だろうけど、その頃には、魔法使いへの取り締まりもますます厳しくなっているだろうから、どうだろう。交易船に乗らないで、シンギ半島に渡る方法として、夜中に、小舟を漕いで海岸沿いを移動して、サランダムを目指すっていうのは?」
と提案しました。
「無理だな。シンギ湾の海流は海岸沿いでもとても強い。陸から気付かれない程度に沖に出なければいけない事も考えると、魔法で波を操れでもしない限り、ぐんぐん東に流されちまう。」
「じゃあ、ナーグリアの北側の海岸に出て、小舟でサランダムを目指す、というルートは?」
「ずいぶん遠回りになるが、穏やかな内海だし、陸は山地続きで途中に大した要衝もないから、小舟でかなり沖を通って旅する分には安全かもな。」
「じゃあ、ナーグリアの北の海を通って、気長にサランダムを目指すって事で、決定だね。」
マイネがそう言って地図をたたもうとすると、「とんでもない!」というかん高い声がしたので、マイネはまた地図を広げながら、「他に妙案があるの?」とダンケルを見上げました。
ところが、ダンケルは、馬に結わえた荷袋が、ごそごそ動いているのを無言で指さしただけでした。
マイネが荷袋をのぞいてみると、あのスナクフから預かった、サキの帽子のトミーが入っている小箱が、ふたを開けたり閉めたりして、袋の中であばれていました。
マイネが小箱を取り出して、「お前さんには悪いけど、僕らはサキを追うのはあきらめたよ。」と話しかけると、小箱のふたが勢いよく開いて、中の帽子が、「考え直していただきます!今すぐに!」と叫びました。
マイネが驚いたのは、それが、テトで見た三角帽子のトミーとは似ても似つかない、リボンのついた桃色の女性用の丸い帽子だったからです。
「お前は誰だい?トミーはどこへ行ったんだい?」
マイネがたずねると、桃色の帽子は、「私はスナクフ様の帽子で、ベレーズと申します。まことに申しあげにくいのですが、この小箱は、サキ様の小箱とよく似ておりますが、全くの別物で、実際はスナクフ様のものです。そして、トミー様が入った小箱は、今でもサキ様が大切にお持ちになっているはずです。」
と、おどおどしながら、早口で答えました。
ダンケルがマイネから小箱を取りあげて、中から帽子をつまみ出すと、「なんだと!じゃあ、スナクフ様は、サキが忘れ物をしたなんて、俺たちをだまして、こんなところまで、サキを追わせたってのか!?」と、今にも帽子を引き裂かんばかりの剣幕でどなりました。
ベレーズは、小箱から出されるとすぐに、人がかぶれるくらいの大きさに広がりました、そして、あまりのダンケルの怒りように、がたがた震えながら、
「さ、さ、左様にございます!しかし、これもひとえに、スナクフ様の、深謀遠慮の為せる業にございます!なにとぞ、このような、役目を、お二方に負わせた事情について、私に説明の機会をお与え下さいますように、平に、平に、お願い申し上げます!」
と、切れ切れの哀れな声で頼みました。

つづく

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