今日は、聖書(旧約聖書)の中の物語をモチーフにした童話を書いてみたので、ご紹介します。
私には信仰はないので、あくまでも題材として、聖書の物語を用いています。そして、聖書らしい雰囲気や教訓が含まれるように、文体を意識しながら書いています。

ヨセフという人が、自分が見た夢のために兄弟から恨みを買ったり、他人が見た夢を分析して未来を予言したりするエピソードが、聖書に出てきます。

この童話の中に登場する、絵に描かれた景色が、その夢の光景です。
その他の部分は、私の創作です。

では、挿絵と合わせてお楽しみ下さい。




画家と両替商

エルサレムの街角で、画家のヨシュアが、昨日描いたばかりの絵を二枚、いちじくの木に立てかけて売っていました。
絵には、友人のヨセフが話してくれた、夢の中で見たという景色が描いてありました。
一枚の絵には、畑の真ん中の芝の束を、十一の芝の束がとり囲んでひれ伏す様子が、もう一枚の絵には、太陽と月、それから、十一の星に囲まれたヨセフの姿が描いてありました。
ヨシュアの絵は、ずいぶんきれいに描けていましたが、立ち止まって絵を見る人の多くは、ヨシュアが有名な画家ではないと知ると、興味をなくして立ち去ってしまうので、いつまで経っても、ちっとも売れないのでした。
ヨシュアは、食べるものにも困って、お腹が空いていたので、いちじくの木を見上げました。青い実がいくつか、枝葉の間から見えましたが、まだ小さかったので、食べられそうにありませんでした。
そこへ、神殿にいくつも店を出している両替商の金持ちが通りかかりました。
両替商は、ヨシュアの絵をじっくり眺めると、畑に並ぶ芝の束の絵を指さして、「いくらだね。」と聞きました。
ヨシュアは、あらためて聞かれると、自分の絵にいくらの価値があるのか、見当もつかなかったので、「あなたの言い値でお売りします。」と答えました。
両替商は、「じゃあこれで。」と言って、青銅貨を十枚、ヨシュアに渡すと、いそいそと絵を抱えて立ち去りました。
ヨシュアは大喜びで、そのお金で、夕食のパンと、次の絵を描くために必要な画材を買いそろえて、家に帰りました。
次の日、ヨシュアは昨日売れ残った絵と、昨晩新しく描いた絵を持って、いちじくの木の下に行きました。
新しい絵には、やはりヨセフから聞いた夢の話の、三本の枝があるブドウの木と、ブドウの房を摘んで杯に絞り、王に捧げる給仕役の男の姿が描いてありました。
ヨシュアが絵を並べて売っていると、昨日の両替商がまたやって来て、腰帯に手を入れたままひとしきり絵を眺めて、二枚を指さして、「いくらだね。」と聞きました。
ヨシュアはやはり、自分の絵に値段を付ける事がためらわれたので、「あなたの言い値でお売りします。」と答えました。
両替商は、「昨日より小さく見えるな。」とつぶやきながら、青銅貨を五枚、ヨシュアに渡すと、あまり嬉しくもなさそうに、絵を両脇に抱えて帰って行きました。
ヨシュアはそのお金で、次の絵を描くための画材を買えるだけ買いました。帰りにいちじくの木を見ると、実は大きくなっていましたがまだ固かったので、お腹が空いていましたが、我慢して家に帰りました。
次の日、ヨシュアがまた新しく描いた絵を持って、いつものいちじくの木の下に行ってみると、両替商がもう来ていて、熟したいちじくを食べながら待っていました。
両替商は、ヨシュアが持ってきた、頭に編みかごを三つ載せた料理役と、一番上の編みかごの中の料理をつついて平らげている鳥の絵を、うさんくさそうに眺めてから、青銅貨を一枚ヨシュアに渡して、「あんたの絵に価値はあるのか?」と、はばかりもなく聞きました。
ヨシュアは、両替商が代金を決めたのだから、私に絵の価値を聞くなんておかしいじゃないかと、腹が立ちましたが、「絵の価値は買った人が決めるものですよ。」と、できるだけおだやかに答えました。
両替商は、その答えにも不満な様子でしたが、それ以上何も言わずに、受け取った絵をためつすがめつしながら帰って行きました。
ヨシュアは、両替商とのやりとりに疲れて、あんまりお腹がすいたので、気を取り直して、いちじくの木を見上げました。でも、実は一つも見当たりませんでした。
両替商が残らず、食べてしまったからです。



img2-213.jpg



関連記事
拍手ボタン
コメント:
この記事へのコメント:
コメント:を投稿する
本文:
 
【童話】 画家と両替商 聖書の物語から|Kobitoのお絵描きブログ