ファンタジー小説「魔法使いサキの物語」の、第12章・第5話です。
この作品は、前回の更新から、かなり期間が開いてしまいました。その間、他の小説を書いたり、フィギュア作りにいそしんだりしていましたが、そういう寄り道を経ることで、滞っていた筆が走りはじめることを期待していたわけです。

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魔法使いサキの物語 第12章・第5話 『密航』

その夜、サキたちは農場を出て、街から離れた人気のない海岸に向かうと、砂浜に引き上げられていた穴の開いた小舟を手早く修理して、肩を寄せ合うようにそれに乗り込み、カイザールの魔法の力で、風と波を操りながら船出しました。
「この小舟でシンギ半島まで行けないかしら。交易船に審問官が乗っていたらと思うと、近づくのが怖いわ。」
ホピンは寒さにショールをかき合せると、船首に立って舟をあやつるカイザールに問いかけました。
「無茶を言うな。シンギ湾は海流が早くて波も荒い。俺の頼りない魔法では、途中で力尽きてしまうぞ。」
カイザールは舟の操縦に集中しているらしく、振り向かずに答えました。
そして、
「なに、取り締まりが厳しいのは、船が港から出るまでさ。審問官も、国境を越えてまでは追って来るまい。」
と付け足しました。
「お母さん、大丈夫よ。いざとなったら、こっちには腕の立つ魔法使いが三人もいるんだから。捕まえようなんて来た日には逆にやっつけちゃえばいいのよ。」
とレカが言いました。
「ははは。その通りだ。俺たちより、レカの方がどうすればいいか分かってる。」
カイザールが朗らかに笑ったので、ホピンも少し安心して、「みんなで、力を合わせて乗り切りましょうね。」と言いました。
サキは、牢番から聞いた、フラトでの革命の勃発が本当ならば、サドゥの地方長官は出国する交易船よりも、東の国境から流入する人々の取り締まりに人手を割くよう、審問官に命じるだろうと思いました。ただ、サキは革命のことを、カイザールにはまだ話していませんでした。
彼が再びフラトに戻って、今度は革命軍に身を投じようとする事を、心配したからです。
カイザールの操る小舟は沖合に出ると、波を鎮めながら夜明けまでそこに留まりました。
まだ薄暗いうちに、交易船はサドゥの港を出て、波をかき分けながら小舟の方に近付いてきました。
朝霧がうっすらと立ち込めた上、小舟はカイザールの魔法のもやに厚く包まれていたので、交易船の船尾に小舟を付けて、ロープを伝って四人が交易船に乗り込んでも、船員や乗客に気が付かれることはありませんでした。
カイザールはサキたちを物陰に隠れさせると、魔法で船員の一人に扮装して、船長室に忍び込み、船底の三等客室の乗客名簿に、四人の乗客の名前を書き足しました。
これで、密航者たちの船旅の安全は、ひとまず確保できたというわけです。
サキは、カイザールの魔法を操る力、そして用いる魔法の多彩さに、ただただ感心するばかりでした。

つづく

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