きょうは、ファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第12章・第4話をご紹介します。
サドゥの審問官カニエに捕らえられ、危うく処刑されるところだったサキは、寸でのところで護送馬車から助け出され、難を逃れることができました。
今回は、どうやってサキを護送馬車から助け出したのか、その種明かしのお話です。

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魔法使いサキの物語 第12章・第4話 『生きた心地』

サドゥ郊外の農場の納屋では、つい今しがた、空飛ぶ幌にまぎれて助け出されたサキが、干し藁の上に寝かされて、カイザールやホピン、それにレカから介抱を受けているところでした。
「ものの見事に上手く行ったわね!ああ、あのみんなの驚きようといったらなかったわ!」
ホピンはすっかり有頂天で、歌い出しそうなくらいはずんだ声でそういうと、冷や汗をかいたサキのひたいに濡れたハンケチをあててやりました。
サキは震える手でホピンの手を握ると、涙目で見上げながら申し訳なさそうに、
「助かった事が分かったら、力が抜けてしまって……。」
と言いました。
「無理もないわ。本当に奇跡みたいな救出劇だったものね。」
ホピンが手を重ねて握り返すと、サキもようやく気持ちが落ち着いてきたようで、ホピンに支えられて少し体を起こすと、みんなを眺めながら、
「火刑にされると聞いて、気を失いそうになったんだけど、その時すがり付いた鉄格子が、封印の魔法の力をあまり受けていない事に気が付いて、もう無我夢中で、鉄を腐らせる魔法を唱え続けたの。」
と話しました。
「護送馬車の檻に刻まれた封印の魔法を、ねずみにかじらせて改ざんしたのさ。全体の封印の効力を増す代わりに、一部分に負荷をかけてもろくするようにな。封印に用いられていた魔法が、ごく一般的なものだったのが幸いだった。しかし、時間的に細工が完全でなかったから、仕上げにお前の力を借りなければならなかったがね。」
カイザールが言いました。
ホピンはうんうんと大きくうなずきながら、
「あなたがカイザールさんの細工に気が付くかどうかが、脱出が成功するかどうかの鍵だったのよ。」
と言い添えました。
サキはカイザールを見あげて、
「助けてくれてありがとう。」
と言いました。
するとカイザールは首を横に振って、
「礼はこの子に言ってくれ。俺たちはあきらめていたんだ。」
と言って、レカの肩に手を置きました。
「ありがとう。」
サキが手を差し伸べると、レカはうれしそうに握手をして、
「カイザールさんは、ねずみをあっという間に調教したり、穴を掘らずに落とし穴を作ったり、風を操って自在に幌を飛行させたり、すごかったのよ。どうして、サキさんを助けられないなんて思ったのか、分からないくらい、すごい魔法使いだわ。」
と言って、羨望のまなざしでカイザールを見ました。
「いや、まったく、驚きなんだが、魔法の力が、少し戻って来ているらしいんだ。」
カイザールは自分の手を、珍しい物でも見るように眺めながら言いました。
サキは、自分が助かった事もさることながら、この三人が、うれしそうにお互いの事を話す様子が、とても幸福に思えて、微笑みながらしきりにうなずいていました。
そうするうちに、生きる喜びが、温かく心と体に満ちて来て、気が付くと、いつの間にか、不安や恐怖は、どこかに行ってしまっていました。

つづく

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【ホピンとレカ】



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