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 きょうは、ファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第12章・第3話が書けたので、ご紹介します。
ナーグリアの東の国境に近いサドゥの町で、審問官に捕らえられたサキは、いよいよ刑を受けるために町の広場に引き出されます。絶体絶命のサキが助かるすべは、はたしてあるのでしょうか?
それでは、描き下ろしの挿絵といっしょに、お楽しみ下さい。

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魔法使いサキの物語 第12章・第3話 『脱出』

翌朝、サドゥの目抜き通りには、刑場の広場へ引き出されるフラトの魔法使いの姿を一目見ようと、町人たちが集まって、護送馬車が通りかかるのを待ち構えていました。
魔法使いの自由が認められていたフラトと違って、多くの国では人々が魔法や魔法使いを目の当たりにする機会が少なく、ナーグリアのように魔法使いを取り締まる目的で、下僕として魔法使いを使役している国であっても、その存在は極力目立たないようにせよとの規定が設けられていました。
ですから、魔法使い狩りで捕らえられた魔法使いへの刑罰を見物することは、町人たちにとって大きな関心事であり、またその量刑の重さ(審問官から魔法使いと断定されただけで死刑)からいっても格好の話題の種なのでした。
そして、今回刑に処せられる魔法使いが若い女であることも、人々の興味をかき立てていました。
「おれは、女の魔法使いというと、ほうきにまたがった婆さんを想像してたがね。」
「そういうのは、魔女というんじゃないか。魔法使いは、老若男女問わず居るもんだ。」
「どちらにしても、妖しい術で人をだましたり、呪いをかけたり、ろくでもない連中だぜ。おれも先日、いつの間にか、ふところの金を盗まれていたし。」
「それはおめえ、博打で全部すっちまったんじゃねえか。どさくさに紛れて何でもかんでも魔法使いになすり付けるのは気の毒ってもんだぜ。」
「ハハハ、おや、来たようだぜ。」
通りの向こうから、頑丈そうな檻付の荷台を引いた馬車がやって来ました。檻には金髪をおさげに編んで男装をした女、サキが入れられていましたが、サキは痛ましいほど真っ青な顔をして、鉄格子にすがりついたまま力なくもたれかかっていました。
魔法使いの処刑は、火あぶりによって行われるのが決まりだったので、炎への恐怖症を克服できていないサキはそれを知って、すっかり腰が抜けてしまったのでした。
その情けない姿を見て、町人たちは魔法使いへの嫌悪をいっそう露わにしました。
「見ろよ、まるで死人みたいな面をしてやがるぜ。もう半分悪魔になっちまってるんだ。悪魔に魂を売っちまうとああなるんだな。」
「よっぽどあくどい事を重ねて来たんだ。自分の罪の重さにふるえてやがるぜ!ざまあみろだ。」
「うちの亭主がわけの分からない病気になっちまったのも、きっとお前たちの仕業なんだろう!子供をたくさん抱えた上に、病人までいて、どうやって暮らして行けってんだい!」
何人かの見物人が、怒りに任せて檻に向かって拾ったつぶてを投げつけました。
そのいくつかは、サキの頭や胸にあたりましたが、魔法を封じられたサキには防ぐ方法がないので、通りを進む間、町人たちのなすがままに仕打ちを受けるしかありませんでした。
やがて、馬車が通りの角にさしかかると、民家の二階の窓から見物していた女が、「あれをごらん!」と大きな声で叫んで空を指さしました。幌馬車用の大きな幌が空に舞い上がっていて、それが護送馬車めがけて落ちてきていました。気が付いた町人たちからざわめきが起こり、その間にも、幌はきりもみしながらまっしぐらに飛んできて、護送馬車の檻に覆いかぶさるように勢いよくぶつかりました。
その拍子に、貨車がガクンと片側に傾いて、まるで幌に押されるようにゆっくりと片輪を浮かせて横ざまに転倒しました。
ものすごい音があたりに響き渡り、見物人たちは魔法使いの力だと思って、恐怖に駆られて悲鳴をあげながらその場から右往左往と逃げまどいました。
幌は強風にあおられてすぐに貨車から引きはがされると、再び勢いよく空に舞い上がり、家々の屋根をゆうゆうと越えて、役人たちがつかまえる間もなくどこかへ飛んで行ってしまいました。
町人たちが騒然とする中、役人たちが駆け寄って、横倒しになった檻を確かめると、鉄格子の一部が折れて外れていて、檻の中はもぬけの殻になっていました。
それらは、ほんのわずかな間の出来事でした。

つづく

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魔法使いサキの物語 第12章・第3話 脱出|Kobitoのお絵描きブログ
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