今日は久しぶりに、シリーズ物ではない中編童話が完成したので、ご紹介します。
童話の題名は、『お日さまと小舟』です。

励ましを与えてくれる存在は、とても貴重で尊い、ということを、言いたくて書きました。


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お日さまと小舟

広い広い海原の上を、一そうの小舟がただよっていました。
どこから来たのか、どこへ行こうとしているのか、誰も私たちに教えてはくれませんし、また、当の小舟も、教えるつもりはありませんでした。
ただ、お日さまだけは、小舟の事を、今までずっと見守ってきましたので、そんなわけがらは、すっかりご存じでした。
でも、小舟には、それがどうしても、うとましく思えました。
「そうやって見ているだけなら、もう僕のことは、放っておいてください。」
小舟は、お日さまの方を見もしないで、そう言いました。
お日さまは、困ったようにほほえむと、
「お前がどこか、あんばいの良い所へ、落ち着くことができるまでの辛抱だよ。」
と、なだめるように言いました。
小舟は幾日も幾日も、何もない海の上で、不満そうな顔をして浮かんでいました。
陸からうんと離れているので、一羽のカモメも見かけることがありません。
あんまりさびしいので、小舟はお日さまに話しかけたくなりました。
でも、自分から話しかけるなんて、自分のまちがいを認めるみたいで、やっぱりできませんでした。
あくる日、遠くの方で、ゴロゴロと不機嫌そうな響きが聞こえ、山のようにそびえ立つ、大きな積乱雲が、近づいてきました。
お日さまは、
「辛抱するんだよ。私がそばにいるからね。」
と言い残すと、そのまっ黒な雨雲に、おおい隠されてしまいました。
風がしだいに強まって、波が逆巻き、まぶしいいなずまがほとばしると、雷鳴といっしょに大粒の雨がいっぺんになだれ落ちてきました。
小舟は荒れ狂う景色に肝を冷やしながら、一方で、あたりがすっかり真っ暗になってしまわないのは、あのお人好しのお日さまがまだ空に居て、灯りをともしてくれているからなんだなと、そんなことを考えました。
やがて、大きな波が、小舟をのみ込んで、ひっくりかえしました。
そして、次の波が、小舟を空に放り投げて、水面に叩きつけました。
嵐のあいだ中、何度も何度も、小舟は沈められたり投げつけられたり、おそろしい目にあいましたが、そのたびに横板をギッギときしませながら、雲の向こうで灯りをともしてくれているお日さまのことを思って、じっとこらえていました。
嵐の大あばれは、終わりがないほど続きましたが、とうとうようやく、風がまばらになり、波が小山になり、雨が小降りになり、だんだんあたりが静まって来ました。その時、小舟は、自分がうまい具合に、表を上にして、海の上に浮かんでいる事に、気が付きました。
やがて、厚い雲が崩れて、お日さまが顔をのぞかせました。
お日さまは、海原にポツンと浮かんだ小舟を見つけると、
「お前は強い小舟だね。それに、大変運も良かった。」
と、静かに話しかけました。
小舟は照れくさそうに、
「僕は、あなたが居てくれることを、心の支えにしたのです。」
と答えました。
お日さまは、にっこり笑ってうなずきました。
小舟とお日さまとは、これで、お互いに、本心が言い合えるほど、打ち解けることができたのです。
それから、何日かして、小舟は、椰子(やし)の木のたくさん茂った小さな島に、流れ着きました。
浜辺で蟹をつかまえて遊んでいた子どもたちが、波打ち際に打ち寄せられた小舟を見つけて、歓声をあげました。
子どもたちはすぐに、屋根を椰子の葉でふいた近くの家に飛んで行って、白髪あたまのおじいさんを連れてきました。
おじいさんは、舟の中に入ってよく調べて、
「どこも傷んでいない。ていねいに作られた舟だ。」
と言いました。
「どこから来たんだろうね。」
子どもたちが聞くと、おじいさんは、
「外国からだろう。見たことのない形だから。」
と言いました。
島の大人たちで話し合った結果、小舟は、見つけた子どもたちの物、ということになりました。そして、その子どもたちが大きくなるまでは、おじいさんが使う、という事にも決まりました。
もちろん、小舟にとっては、これ以上にいい塩梅はありません。お日さまも、それはそれは、小舟の幸せを、喜んでくれました。
小舟には、そのことが何よりも、うれしかったのです。

おしまい

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