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 きょうは、ファンタジー小説『魔法使いサキの物語』の、第12章・第1話を書き進めてみます。

第12章は、久しぶりにサキとカイザールの旅のようすを書いて行きます。


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魔法使いサキの物語 第12章・第1話 『サキ捕まる』



「波止場で今朝、魔法使いが審問官に捕まったらしい。」
こんなうわさが、ナーグリアの、サドゥの街の人々の間に広まりました。
その魔法使いは、若い女で、混乱するフラトから逃れて来たのだが、シンギ半島へ渡る船に乗ろうとしたところで、審問官の検問に引っかかったのだ、ということでした。
それから、連れのやはり魔法使いの男が、その場から逃れたらしい、ということもあわせて伝わりました。
「まったく、魔法使いというものは、どこにでもそ知らぬ顔で紛れ込んでいるからたちが悪い。」
「審問官は、“はざめ石”というものを使って、相手が魔法使いかどうかを見分けることができるのだそうだ。それが無ければ、奴らは城中へだって何食わぬ顔で仕官できてしまうだろうよ。」
「逃げた男は、褐色人だったという事だ。一目見れば分かるのだから、よもや隠れおおせはすまいて。」
そんな話が交わされる、サドゥの市場の雑踏を、カイザールは顔を隠すこともなく、恰幅のよい婦人と、その娘らしい八つくらいの子どもの後に連れられて歩いていました。
カイザールの顔は、魔法によって、褐色ではなく、ナーグリア人と同じ黄褐色に変えてありました。
「もう少し行けば、私たちの宿がありますから、ひとまずそこに落ち着きましょう。」
婦人は振り返ってカイザールに言いましたが、カイザールはすっかり意気消沈して、言葉もない様子でした。
市場の裏手の、せまい路地へ少し入ったところに、入り口の開け放たれた民家があって、婦人はそこに入って、階段を上ったつき当たりの部屋にカイザールを案内しました。
婦人は窓をとじると、カイザールをきたないテーブルに着かせて、娘に手伝わせて茶器を並べ、急須で紅茶をいれはじめました。
「助けてくれてありがとう。」
カイザールは、やっと顔を上げて婦人に言いました。
「魔法使い同士、困った時はお互い様よ。でも、兵隊たちがもやい綱に引っかかっていっせいに転んだ時は、気分がスカッとしたわね。」
「お母さん、声に出して喜ぶんだもの。私は役人たちから気が付かれやしないかと、背筋がヒヤッとしたわ。」
たのしそうな婦人をなじるように、娘が言いました。
婦人は屈託なく笑うと、落ち込んだ様子のカイザールを見て、
「あそこでお連れさんを助けようとしなかったのは、賢明でしたよ。審問官カニエの奴隷たちはいずれも手練れの魔法使いですからね。いくらあなたが腕に覚えがあっても、立ち向かえば数の力であっという間に取り押さえられてしまっていたでしょう。」
と言いました。
カイザールは名前を名乗って、捕らえられた娘がサキという名前である事や、彼女と連れだってフラトからナーグリアに来ることになった事情を、二人に話して聞かせました。
婦人はホピンと名乗り、娘をレカだと言って、シンギ半島のアスタカリアからフラトに向かっていたが、ナーグリアまで来てみると、フラトで魔法使い追放の王命が発せられたと知らされ、やむなくアスタカリアに引き返そうとしているところだったのだと話しました。
「アスタカリアでも、この頃は魔法使い狩りが起きるようになって来たんですよ。だから、もっと安全なところがあれば、引き返したくはないのだけれど・・・。」
ホピンはカイザールにも勧めると、小さくため息をついてから紅茶をすすりました。
「俺たちも、アスタカリアへ行こうとしていたのだ。だが、条件の悪さはどこも同じようだな。」
「ええ、それに、フラトでこんな事が起きてしまっては、ますます私たちの肩身は狭くなるばかりよ。」
その時、二人の話を静かに聞いていたレカがたずねました。
「サキさんはどうするの?」
言葉に詰まった二人は、顔を見合わせると、
「助けたいのはやまやまだが、俺の力ではもうどうにもならんよ。」
「そう、残念だけど、こうなってはもう助けようがないわ。」
と、申し訳なさそうに口々に言いました。
レカは、
「サキさんが捕まる時、あんなに抵抗したのは、カイザールさんを逃がすためだったんじゃないかしら。」
と、二人の顔色をうかがいながら言いました。
カイザールはハッとすると、目を伏せて、何も言えなくなりました。

つづく

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魔法使いサキの物語 第12章・第1話 サキ捕まる|Kobitoのお絵描きブログ
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