きょうは、ファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第11章・第10話を書き進めてみようと思います。
今回のお話で、11章全体にまつわるいつくかの謎が解き明かされます。


前回までのあらすじ
サキを追って大陸を西へと向かう魔法庁の役人、ダンケルとマイネは、シェルの荒野を、マヒャライ族の少年タダニの案内で横断することになりました。
タダニは未来を予知する不思議な力を使って、二人がどう猛な獣サンバロに追われている事を告げ、サンバロを避けるために北側の谷地へと二人を導きますが、そこにはガリリ族の戦士ウルと、彼を今にも襲おうとするサンバロの姿がありました。
混乱のうちにタダニとはぐれたマイネは、サンバロに危うく襲われそうになりながら、タダニを追って谷地の底へと下りますが、そこで見たのは、気を失ったタダニと、絶命したサンバロ、そして、崖から落ちたと思われていたウルの姿でした。



-------------------------------------

魔法使いサキの物語 第11章・第10話 『サンバロとウル』


マイネは空を向いて、高く笛を吹きました。するとやがて、それを聞きつけたダンケルが、辺りをうかがいながら、さっきの岩棚を駆け下って来ました。
マイネはダンケルに紹介しようと、ウルを見あげましたが、彼はいつの間にか、そこからいなくなっていました。けれど、マイネが先ほどの出来事をダンケルに話していると、ウルはダンケルの馬と、タダニのブーを連れて戻って来ました。
マイネの馬は、荷だけ残して、どこかへ行ってしまっていた、という事でした。
その時、タダニが小さくうめいて、うっすらと目を開けました。
タダニのそばにしゃがんだウルが、「お前のおかげで、俺は死なずに済み、サンバロを仕留めることができた。ありがとう。」と声をかけました。
タダニは安心したようにかすかにほほえんで、うなずきました。
「全部分かっていたのか?ウルとサンバロがここに来ていることや、俺たちがここで、サンバロに出くわすことになるって事も。」
ダンケルが、タダニを上からのぞき込んで聞きました。
タダニは、マイネが持ってきた皮袋から水を飲ませてもらうと、少し元気が出たらしく、
「ごめんよ。黙っているのが、一番いいと思ったんだ。」
と答えました。
「まったく、大した奴だよ、お前は。いずれ世界一の勘の達人になるぜ。いや、もう世界一なのかもな。」
苦笑して、ダンケルが言いました。
するとタダニは、困ったようにほほえみながら、首を横に振って、
「おれの勘、もうないんだ。」
と言いました。
「ないって、どうして?」
「サンバロが欲しがったから、あげてしまったよ。」
ダンケルもマイネも、これには言葉を失いました。
「お前は、未来を見通す力を失くすことを承知で、ここへ来たんだな。」
ウルがたずねると、タダニは返事の代わりに、両目をとじて、ふうっと静かに息を吐きました。
タダニがまだしばらく、起きられそうもなかったので、みんなは、人間の姿のサンバロを、砂が厚く積もった場所まで運んで、そこに埋めてやることにしました。
マイネは穴を掘り終えると、「どうしてこの人は、獣の姿になっちゃったんだい?」と、ウルに聞きました。
ウルは穴底に、男を横たえると、砂をかけながら答えました。
「サンバロは俺の幼馴染だったのだ。子供の頃に、流れ者の魔法使いに教わって以来、こいつは簡単な魔法が使えるようになった。サンバロはそのことを、ずいぶん得意にしていたのだが、だんだん、自分を特別だと思うようになり、悪い道にそれて、魔法で人をだましたり、ひどい目に合わせたりするようになった。手を焼いた族長たちは相談の上、サンバロに三年間のスルガニ(難行)を課すことにした。スルガニを乗り越えれば、九つの部族の長(おさ)という地位が与えられるが、成功した者はおろか、無事に帰って来た者さえ一人も居ないのだから、実際は罰を言い渡したのと同じだった。
サンバロは負けず嫌いで、なによりうぬぼれていたから、たった一人の身内の、幼い妹を俺に託して、勇んで出かけて行ったが、二年ほどして、人目を忍んで俺のもとを訪ねて来た時には、人相が変わるほどやつれはてて、何かにおびえたような目つきになっていた。
そして、彼はこう言った。
『スルガニは全て乗り越えた。だが、そんなことはどうでもいい事だったんだ。俺はつまらない欲望のために、俺自身を信用できないものに変えてしまった。もし、俺がすっかり変わり果てて、だれかれ見境なく傷つけるようになったなら、どうかお前の手で、俺を始末してくれ。そして、俺の妹はお前の身内として育てて、俺という兄が居たことは絶対に話さないでくれ。』
俺は彼の話の半分も理解できなかったが、あまりのせっぱつまった様子に、『分かった。約束する。』と返事をしてやるしかなかった。
サンバロは、俺の手を握って、魔法の契(ちぎ)りを結ばせた。
その契りによって、俺はサンバロが今どのあたりに居るのかを、いつでも察知できるようになった。
日が暮れて、サンバロは逃げるように荒野に去って行った。見送っていると、彼はあの、まがまがしい獣の姿に変わって、夜の闇の中を振り返ることなく消えて行った。」

つづく


img2-064c.jpg

関連記事
拍手ボタン
コメント:
この記事へのコメント:
コメント:を投稿する
本文:
 
魔法使いサキの物語 第11章・第10話 『サンバロとウル』|Kobitoのお絵描きブログ