きょうは、久しぶりに、ファンタジー小説『忘れかけていた物語』の、第13話を書き進めてみたので、ご紹介します。
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』のような、ナンセンス童話にしたいと思って書いています。




登場人物

少女=さえ
かえる(大)=ブーン
かえる(小)=チョコ
緑の小人=グル
赤い小人=ピコ
蝶=フール
テントウムシ=ピック
樹木=トンおじさん
ロバ=ローマン
操り人形=ジョージ
猿=チャッキー
熊=リリィ
悪い魔法使い=ズル

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忘れかけていた物語 第13話 「テーブルにさえが舞い降りた」

さえは穴のふちにひざまずいて、「おーい!落着した?」と問いかけましたが、声はずいぶん深くまで響いて行って、耳を澄ましても、返事はちっとも聞こえませんでした。
「声が届かないくらい穴が深いか、もしくは、声に届けようという気がなかったんだな。」
ジョージが穴をのぞき込みながら、残念そうに言いました。
ローマンがさえの横に来て、「ぼくに乗りなよ。どんなに深くても軟“落着”できるよ。」と言いました。チャッキーがローマンの頭の上に飛び乗ると、急かすようにキーキー鳴いて、さえを手招きしました。
さえはリリィをだっこすると、「お願いするわ。でも、私ロバにもポニーにも、またがるなんて生まれて初めてよ。」
と言いながら、ローマンの背にまたがりました。
「忘れてるだけさ。自転車と同じで、一度覚えたら、乗ってるうちに思い出すよ。」
ローマンはひょいと穴に飛び込むと、泳ぐように前脚を動かしながら、木の葉みたいにひらひらと舞い降りて、首っ玉にしがみついたさえが明るさに目を細めた時には、もう穴底の広い部屋のテーブルの上に立っていました。
部屋は土を固めた黄色い壁に囲まれていて、テーブルの他にも、食器棚やクローゼットや、暖炉まである、気持ちのいい居間になっていました。
テーブルには、名前のない宝石が明々と灯ったランプに、花柄のティーポットに、六つの小皿が置いてあって、取り囲んだ椅子には、ブーンとトンおじさんとピコが、もぐらのような毛むくじゃらの二人の穴底人と並んで、緑茶の注がれたティーカップを、守るように胸に抱いて座っていました。
「はじめまして。素敵なお部屋ね。」
さえはみんなが妙に黙りこくって見上げているので、間が悪そうにあいさつしました。
「ありがとう。だけど、初対面の人がテーブルの上でロバにまたがってあいさつするなんて、いかがなものかと思うよ。」
穴底人の奥さんが、小さな目をつりあげてぴしゃりと言いました。
すると、となりの席の、よく似た顔の穴底人の旦那さんが、
「出入り口の真下が居間のテーブルというのが、そもそも具合が悪いのさ。」
と、奥さんに聞こえないように、となりの席のトンおじさんに言いました。
さえはローマンからおりて、テーブルからも下りると、
「ごめんなさい。私、軟落着する事ばかり考えて、ここがおもてなしの席上だなんて、想像もしていなかったんです。」
と言って頭を下げました。
「お前さんが乗っているのは席上じゃなくて机上だよ。それに、お行儀が二の次ってのは感心しないね。」
穴底人の奥さんはそう言ってから、「お行儀を重んじる王母さまの前だから、良い所を見せようと思って、叱っているんじゃないよ。」と付け足しました。
「もちろんです。あなたは根っからの教育家ですわ。」
ブーンが片手にティーカップを持ち、片手にチョコの入った真鍮鍋を抱えながら、鷹揚(おうよう)にうなずきました。
「私は、よその子だって、地上の子だって、遠慮せずに叱りますよ。ええ、それが責任ある大人の役目ってもんですからね。」
穴底人の奥さんは、誇らしげにツンと鼻を上向けると、熱い緑茶を一気に飲み干しました。
「王母さまだって、テーブルの上からごあいさつなさったんだぜ。その時俺たちは、昼食のじゃがいもを食ってたんだ。」
穴底人の旦那さんが、奥さんやブーンに聞こえないように、今度はさえに耳打ちしました。

つづく




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『テーブルにさえが舞い降りた』


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