きょうは、ファンタジー小説『魔法使いサキの物語』の、第11章・第6話を書いてみたので、公開します。

サキとカイザールにつづいて、ダンケルとマイネも、マヒャライ族の少年タダニの案内で、シェルの荒野を横断する事になりました。
タダニは不思議な予知の力で、ダンケルたちの行く末に危険を感じ取り、より安全な方へ彼らを導こうとします・・・。



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魔法使いサキの物語 第11章・第6話 『タダニの勘』

シェルの内陸部は降雨がほとんどなく、耕作に適さないやせた土地が多いことから、各部族は点在する水場の周囲での牧畜か、水場に集う野生動物を狩猟することを主に生活の手段にしていました。
その水場も、枯れたかと思うと遠く離れた場所で湧いたりと、頼りにならないところがあったので、各部族は水が不足した部族に水を貸し付けたり、場合によっては領地と家畜を交換するなどして、複雑に利害の絡んだ地域関係を維持していました。
シェルを横断する旅行者が内陸部を避けて、沿岸部を通行するのは、こういう部族間の水場の所有権の問題によるところが大きかったのです。
ダンケルとマイネも、その事情を知っていたので、タダニが内陸部へ向かって案内していると知った時、「なぜわざわざやっかいな地域に立ち入るんだい。」と言って、それ以上馬を進めることをためらったのでした。
タダニは、「あんたたちには追手がかかっている。だけどそいつは、おれたちがやっかいな北寄りの道を通るとは思わない。それに、あんたたちはサンバロにも狙われている。サンバロはガリリ族(内陸の部族)の戦士を恐れている。だから丘地(沿岸部)から出てこられない。けっきょくあんたたちは、こちらの道を進む方が安全なのさ。」と言いました。
タダニがかまわずにブーを進めるので、マイネは仕方なく後に続きながら、「君はどうして、魔法が使えないなんて嘘をついたんだい。僕らに追手がかかっている事や、そのサンバロってけだものに狙われているって事は、予知の魔法が使えないと分からないはずじゃないか。」と聞きました。
「魔法じゃないよ。勘だもの。」
タダニがそっけなく答えたので、ダンケルも、
「おいおい、勘だけでそこまで分かっちまったら、お前の兄貴の占星術なんか形無しだぞ。」と言いました。
「兄さんは占星術をやる時に、長いセイ(呪文)を唱える。おれのは、ただ、頭の中でなんとなく分かった気がするだけさ。それは魔法じゃない、勘というものだと兄さんは言ってたぜ。」
タダニがダンケルを確かめるように見たので、ダンケルも、「俺が知る限り、セイを唱えないで操れる魔法なんてないな。」とうなずきました。
タダニはマイネにも顔を向けました。そこでマイネも、「ないだろうね。」と答えましたが、「魔法とは違う力もあると、僕の魔法の先生が言っていたから、もしかしたらそれかも知れない。」とも言いました。
タダニはやはり興味が無さそうに、「おれの勘は、兄さんの占いを手伝っている時に、よく働くんだ。だけど、ふだんはあてにならないから、セイを唱えれば操れる魔法の方が、おれは良いな。」と言いました。
三人はさらに北寄りに進んで、ミバン族の集落に立ち寄りました。
タダニが魔法とは別の力を持っている事を踏まえて、ミバン族の人々を見ていると、彼らはアタジャニの代理としてのタダニを敬っているのではなく、タダニ自身を敬っているのだという事が、マイネにははっきりと判りました。
族長から領地を通る許可を得て、集落を出ると、タダニはマイネとダンケルにこう伝えました。「族長が言うには、昨日、一羽のテイウル(伝書用の鳥)が、西へまっしぐらに飛んで行くのを、狩りに出ていた村の者が見たんだって。」
「フラトの騒動を知らせる伝書だ。」
ダンケルが眉をひそめると、マイネは、
「王命の布告からずいぶん経つから、もう第二報なのかもね。」と言いました。
しばらく荒野を行くと、ミバン族の若者たちが、長い槍をかついで西の方へ歩いているのに出会いました。
彼らは槍で行く手をふさぎましたが、タダニが事情を話すと、「この先に新しく湧いた泉があるが、シャーシ族のものになったから、近づくんじゃないぞ。」と言って、道をあけてくれました。
彼らの忠告にしたがって、さらに北寄りに進んで行くと、やがて南西に、ポツンと一か所だけ青々と草が茂っている個所が見えてきました。目を凝らすと、なるほど、その草地のふちには、弓を持った腰巻き姿の男が、仁王立ちで、こちらの様子をうかがっているのが分かりました。
荒野のまん中での野宿の翌日、三人はシャーシ族の小さな集落へ立ち寄って、族長に領地を通行する許可を求めることにしました。
シャーシ族の集落は、オアシスを取り囲むように作った、尖った石を無数に埋め込んだ土塀の中にありました。タダニが族長と話している間、マイネはダンケルと塀の外で待ちながら、退屈しのぎに笛を吹いていましたが、族長の娘が奥の住居から出てきて、マイネの笛をしきりに欲しがったので、マイネは「これは大事なものだからあげられない。」と断わりました。すると、その返事を伝え聞いた集落の人々が、土塀の外に出てきてマイネを取り囲み、口々に抗議し始めたので、タダニがあわてて間に入って、代わりの品物をさし出すから許してほしいと言って、彼らをとりなしました。
あいにく、マイネはその娘が喜びそうな品を持っていなかったので、ダンケルが自分の管玉(くだたま)の首飾りを外して、娘にさし出すことにしました。
娘がそれを気に入ったので、族長は三人に、領地を通行する許可を出しました。
集落を出た後、タダニはダンケルとマイネに馬を駆けさせながら、
「彼らは笛を取りあげに来るよ。あの娘がそれを族長に命じさせるから。」と言いました。
その日三人は、日が暮れてからも月明かりを頼りに、隣の部族の領地に入るまで、馬とブーを歩ませ続けました。

つづく


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族長の娘に首飾りをさし出すダンケル


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