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 梅の花も満開になって、そろそろ春も始まりそうな気配です。
きょうは、ファンタジー小説「魔法使いサキの物語」の、第11章・第5話を書き進めてみたので、ご紹介します。

今回から、また視点が変わって、魔法庁の元役人、ダンケルとマイネの旅のようすをお話しします。
マヒャライ族の子供タダニが、サキとカイザールをナーグリアの国境近くまで送って、集落に帰ってきたところから始まります。



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魔法使いサキの物語 第11章・第5話 アタジャニ

タダニがマヒャライ族の集落に帰ってみると、兄のアタジャニはアンバリ族のシャーマンのところから戻って来ていて、布製の住居の前に座ってのんびりとパイプをくゆらせていました。そして、集落の外れの空き地には、二人のよそ者の男が、麻布を斜めに張った日よけの下でぐったりと横になって休んでいるのが見えました。アタジャニが、「フラトで魔法使いたちとそうでない者たちのいさかいが起きて、追い出されて来たのだそうだ。」と言って、タダニを二人のところへ案内しました。
それは、長い野宿生活で、頭から足の先まで、すっかり薄汚れてしまった、あの魔法庁の役人の、ダンケルとマイネでした。
アタジャニは物憂そうに体を起こした二人のそばに座ると、
「カイザールをナーグリアまで送って行ったそうだな。若い女が一緒だったろう。」
と、隣に座らせたタダニに尋ねました。
「うん、その人も魔法使いだったよ。」
「この者たちはな、その女を追っているのだ。女がフラトに残した忘れ物を、届けてやりたいのだそうだ。」
マイネがタダニの方に身を乗り出して、
「ナーグリアのどの町に行ったか分かるかい?」
と尋ねたので、タダニはカイザールたちが、サドゥの港からシンギ半島へ渡る交易船に乗ると話していたことを伝えて、
「今から追っても、たぶん船出には間に合わないよ。」
と付け加えました。
ダンケルはマイネと顔を見合わせると、タダニに、「どのみち、俺たちもギリーニャとエレスに帰るんだ。次の船で半島に渡るよ。」と言いました。
タダニが、サキの忘れ物を見せてほしいと言うので、マイネは向こうのブーの柵につないだ馬のところへ行って、荷物の中から、スナクフから預かった小箱を取り出して持ってきました。
タダニに小箱を渡したマイネは、
「この中には、口をきく帽子が入ってるんだ。だけど、その帽子が内側から引っぱっているせいで、ふたが開かなくなっているんだ。」
と説明しました。タダニは小箱をためつすがめつして、側面に刻まれた細かな文字を指で何度かなぞってから、「怖がることはないよ。おれたち味方だよ。」と、小箱に顔を近付けてつぶやきました。
すると、小箱の中でカタッと小さな音がして、ふたが、ほんの少しだけ勝手に開いたのです。ダンケルとマイネは思わず「あっ!」っと声をあげました。
その声に驚いたのか、ふたはすぐに閉じてしまい、それからはタダニがどんなに呼びかけても、ダンケルが力任せにこじ開けようとしても、ちっとも開かなくなってしまいました。
「まあとにかく、自分から開けようとしたんだから。焦らずにもう少し待ってやろうよ。」
マイネが小箱の中に聞こえるように、少し大きな声で言ったので、ダンケルも、「ああそうだなあ。俺たちは、トミーの味方だものなあ。」と、小箱を横目に見ながら、いかにも演技がかった大声で言いました。
アタジャニもそのようすを見ていて、自分も試してみたくなったようで、「どれ。」と言ってダンケルから小箱を受け取ると、「良い天気だぞ。出てこい。」と声をかけてみたり、ふたのすき間に爪をひっかけて、こじ開けてみようとしたりしましたが、やっぱり貝のように固く閉じたままで、まったく開きそうにないので、残念そうに小箱をダンケルに返してから、タダニに言いました。
「どうだ、この者たちもナーグリアへ送り届けてやらないか。」
タダニはうつむいて、「うーん。」と言ったきり、なかなか返事をしませんでした。
アタジャニはタダニが面倒くさがっているのだと思って、少し居住まいを正すと、
「カイザールに恩はないが、あいつの師匠のプントには、お前は大変な恩があるのだぞ。母が難産だったのを、旅の途上で居合わせたプントが助産師をつとめてくれたおかげで、母は死なずにすみ、お前も無事に生まれて来ることができたのだ。縁(えにし)というものは、不思議とどこかで別の縁とつながっているものだ。だからこそ、大きな縁につながる者は特別、大事にしないといけないのだ。」
と言いました。
「分かっているよ。腹ごなしをしたら出かけるよ。」
タダニは踏ん切りがついたという口ぶりで返事すると、「サンバロが出るよ。覚悟しなよ。」とダンケルたちに言い置いてから、自分の住居の方に戻って行きました。
「サンバロって何だい。」
ダンケルがたずねると、アタジャニは、
「西の方の丘に住んでいるけだものだ。卑しい心を持った人間は嗅ぎ付けられてサンバロのえじきになる。」
と答えたので、ダンケルとマイネはお互いのこわばった表情を確かめ合ってから、ごくり、とつばを飲みました。

つづく



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魔法使いサキの物語 第11章・第5話「アタジャニ」|Kobitoのお絵描きブログ
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