こんにちは。
今日は、「魔法使いサキの物語」の、第11章・第4話を書き進めてみたので、ご紹介します。

現在サキは、西の大国ナーグリアを目指して、フラトの元国境警備団員のカイザールと旅を続けています。

今ほど移動手段が発達していない昔は、徒歩か馬で旅をしていたわけですから、知らない者同士が道中で出会って、しばし“旅の道連れ”になる、ということも、珍しくなかったのではないでしょうか。

そういう、旅の中での巡り合わせを描いた映画を、“ロードムービー”と言います。

サキの物語も、そういう作品の一種として、制作を進めています。


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サキの物語世界の地図。現在までに物語に登場した地名が書き込んであります。(クリックすると拡大できます。)


「魔法使いサキの物語」 第11章・第4話

ワナイの砂漠を抜けると、サキとカイザールは、いくつかの少数部族がそれぞれの領地を治めるシェルの、比較的温厚な部族が暮らす海沿いの地域を通って、ナーグリアの港町サドゥを目指すことにしました。
途中、カイザールは各領地を通行するための身元保証人になってもらうために、旧知の魔法使いが暮らすというマヒャライ族の集落を訪ねましたが、その魔法使いは不在で、かわりに十二、三歳くらいのタダニという弟が、途中まで二人について来て、身元保証人を引き受けてくれることになりました。
タダニは、魔法が使えないとの事でしたが、兄に習って毎日練習をしているから、もうじき使えるようになるんだ、と、得意そうにサキに話しました。
「兄さんは占星術で自分に悪い相が出たので、アンバリ族のシャーマンに厄払いを受けに行ったよ。」
タダニの説明を聞いて、サキが「どうして別の部族のシャーマンに厄払いをしてもらうの?」と聞くと、少年は、当たり前だと言うように肩をすくめて、「そのシャーマンが流行ってるからさ。」と言いました。
サキは、ブーというロバのような動物に乗って馬の横をついて来るタダニに、フラトで魔法使い追放の王命が発せられたことを話して聞かせました。タダニはその事件の重大さがよく分からないようでしたが、「間もなく、大勢の魔法使いが、シェルに逃れて来ると思うわ。」とサキが言うと、空を向いてかん高い叫び声をあげてから、「やあ、そいつは見ものだな!」と言いました。
サキは拍子抜けしてしまいましたが、カイザールは、「彼らは支配者を持たない部族なんだ。俺たちがそれに翻弄(ほんろう)されなければならない理屈が理解できないのさ。」と説明しました。
タダニが同行してくれたおかけで、隣接するカダン族の集落も、ニバタ族のニャーク(アルパカに似た乳と毛をとるための家畜)の放牧地の牧夫たちも、友好的にサキたちを通してくれました。それというのも、タダニの兄の占星術で、周囲の部族は降雨や干ばつを予知してもらったり、結婚式にふさわしい星のもとにある日取りを見立ててもらったりしていたからです。
「あなたのお兄さんってすごい人なのね。一度お会いしてみたかったわ。」
サキが感心すると、タダニは自分が褒められたみたいにニタニタして、
「うん、会えてたら、あんた達がこれからどっちの道へ進めばツキが回るのかも、占ってもらえたんだぜ。」と言いました。
サキたちはそれから、小さなはげ山の峠を三つほど越えて、野宿を挟みながらさらにいくつかの部族の集落を通り過ぎ、マヒャライ族の集落を出てからおよそ三日で、ナーグリアの東の国境にほど近い、赤土の街道がか細く始まる広々としたセラ原(丈の低いかやのような草原)にたどり着きました。
するとタダニは、街道の端でブーを止めて、「ここから先はおっかないところだから、俺は行かない。」
と言いました。
サキは馬から降りると、タダニと握手をして、
「ありがとう。またいつか会いましょう。」
と言いました。
カイザールも馬から降りて、タダニに歩み寄ると、
「遠くまですまなかったな。これはお礼だ。」と言って、タダニに金貨の入った革袋を握らせました。
タダニは、まだ何か言いたそうに、二人の顔を交互に見つめていましたが、やがて肩をすくめてため息をつくと、「じゃあな。」と言って、ブーの首をめぐらせてもと来た道を戻りはじめました。
二人も馬に乗って、赤土の街道を進もうとしましたが、その時、タダニがブーを止めて大きな声で、
「きっと、あんた達もおっかない目に合うよ。進もうとしてた道はことごとく閉ざされちまうだろうよ。だけど、なんでもないんだ。迷いに迷ってやっと見つけ出した道が、あんたたちのいちばん良い道になるんだから。」
と叫びました。
サキははっとしてふりかえると、「ありがとう!」と言いましたが、タダニはもうずぅっと向こうのセラ原を、逃げるように背を丸くして、わき目もふらずに走り去ってしまいました。

つづく

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ブーに乗ったタダニ



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【ファンタジー小説】 魔法使いサキの物語 第11章・第4話 マヒャライ族のタダニ|Kobitoのお絵描きブログ