お久しぶりです。今日は、童話『アンチャンの小人たち』の、第15話を書き進めてみたので、ご紹介します。
『アンチャンの小人たち』は、この15話で完結です。
最終話はとても長い文章になりましたが、一気に読んでしまった方が良いと思って、あえて二話に分割する事はしませんでした。
それでは、さっそく、描き下ろしの挿絵と一緒に、物語をお楽しみ下さい。


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アンチャンの小人たち 第15話(最終話)


そのころスッカラン村では、アンチャン村の冒険者たちを歓迎するために、子供も大人も勢ぞろいでお祝いの準備におおわらわでした。
土手の坂にある村なので、お祭りなどを催す時は、みんな村のまん中の、突き出た平らな大岩の上に、集まることにしていました。村人たちは、坂に掘ったほら穴の家から、椅子やテーブルをそれぞれ持ち寄って、お祝いの会場を整えて行きました。そして、テーブルの中央には、スミレやハコベやオドリコソウの花をにぎやかに飾って、そのまわりに、貝がらのお皿に盛られたメダカの香草蒸しや、いろんな木の実のお団子、アワのお餅入りのスープ、それにホトケノザの蜜と木いちごで作ったジャムや、パンみたいに切り分けられた柔らかいキノコなどを、ところせましと並べて行きました。
そこへ、アシホさんに案内されて、アンチャン村の子供たちが到着したので、村人たちはわっといっせいに拍手して駆け寄りました。
村長のクンダリさんが、みんなの前に進み出て、うやうやしく一礼すると、「スッカラン村へようこそおいで下さった!それも、ものすごい冒険談を持って来て下さったそうで、一同感謝にたえんじゃ!」と言いました。
アンチャン村の子供たちも、かしこまって思い思いにあいさつしましたが、みんないっぺんに話したものですから、村長さんには何と言っているのか、ちっとも聞き取れませんでした。それで、村長さんはあいまいにうなずきながら、「あいさつはこのくらいにして、お祝いをはじめようじゃないか!」と言いました。
村の人たちが、アンチャン村の子供たちの手を取って、宴会の席へ案内しました。川下りの旅に出てから、冒険続きで何にも食べられなかった事を思い出したムスビは、できたてのご馳走の数々を見て、「スッカラン村がなくなっていなくて、本当に良かった!」と思わず大声で叫びました。
村の人たちも席に着くと、クンダリさんは、「さっそくじゃが、食べながらで構わんので、冒険談をきかせてもらえるかの。それを聞いてしまわんことには、わしは気になって気になって、食事ものどを通らんのじゃ!」
と言いました。
村の人たちも、口々に、「そうだ、そうだ!」と叫びました。みんな、ケラから聞いていて、アンチャン村の小人たちが、まれに見る大冒険のすえにスッカラン村にたどり着いた、というところまでは知っていました。けれど、そのまれに見る大冒険、というものが、いったいどんな内容なのかまでは知らなかったので、残らずすっかり聞いてしまわない事には、もう、居ても立っても居られない、といった様子なのでした。
そこで、アンチャン村の小人たちは、代わる代わる食事をご馳走になりながら、川下りをはじめて間もなく小さな渦につかまった事や、鯉のしっぽで空に跳ね上げられた事、最初の舟が沈没しかけて、すんでのところで無人島にたどり着いた事などを、身振り手振りを交えながら話しました。
スッカラン村のみんなは、もう食べる事さえ忘れて、ぽかんと口を開けたまま、肩を寄せ合って話に聞き入っていました。
そして、無人島で新しい舟を見つけたケラが、風のいたずらで、舟にぶらさがったまま空に飛ばされそうになったくだりでは、まるで自分たちがそんな目にあっているように、「ひやー!」といっせいに声をあげました。
さらに、荒れ狂う魚道の急流をくぐり抜けて、とうとうレンガ道でケラを探し当てて、五人そろって新しいスッカラン村にたどり着くことができた、というところまでを話し終えると、みんなはやっとひと息ついて、ぐったり椅子にもたれかかり、深々と深呼吸をして、「無人島に流されたときには、もうだめかと思ったな!」とか、「さいしょのマールマールで、わしはすっかりあきらめてたよ!」などと、感心しきりで語り合いました。そしてその騒ぎがおさまると、みんなは、「もう一回聞かせておくれ!」と、机やお皿をドンチャン叩きながら、声をそろえて何回も何回も言うのでした。
ですから、アンチャン村の子供たちは、同じ話を三回も、繰り返しスッカラン村の小人たちに、話して聞かせなければなりませんでした。
やがて、三回目の冒険談を語り終えて、ムスビがきっぱり、「おしまい。」と言うと、村人たちはようやく満足したようすで、小さな冒険者たちに、さかんな拍手や、「メンボー!」という、かっさいの言葉を、割れんばかりに送りました。クンダリさんも立ち上がって、「いやはや、この上なくすばらしい冒険談をご馳走になったじゃ。そして、おまえさん方も、わしらが腕によりをかけた、心づくしのご馳走をたらふく食べて、すっかり大満足と言ったところじゃ。そこでじゃ、今から歌と踊りと、とりわけゆかいな音楽で、腹ごなしをしたいと思うが、ご都合はいかがじゃな?」と提案しました。
もちろん、アンチャン村の子供たちも反対なわけがありません。
「さあこれを使うんだよ。」
アシホさんがウタオに、栗の実の皮で作った、ポロンにそっくりなモロンという楽器を貸してくれたので、ウタオは大喜びで、歌い手のツキヨといっしょに、スッカラン村の楽手たちが座る小枝の長椅子に加わりました。
「ぽいぽぽいぽい!」
アシホさんの掛け声で、息の合ったさわがしい演奏が始まりました。さわがしいといっても、人間にとっては、せいぜい小さなかねたたきの合奏くらいでしたが、小人たちはその時々の気持ちを音楽にするのがとても上手なので、こんな風にうれしい日に奏でるなら、踊りの大好きな小人はもちろん、はずかしがり屋の小人も、おすまし屋の小人も、のんびり屋の小人も、つられて踊り出さずにはいられないくらい、むやみに面白い演奏になるのでした。
やがて、小枝の上に立ったツキヨが、一番星のかがやく藍(あい)色の夕空を見上げて、鈴のように澄んだいい声で、こんな歌を歌いはじめました。

『大きなもののかえりみぬ
野の片隅(かたすみ)に
蘇(よみがえ)りぬ
うつくしや
うつくしや
小さきものの造る郷(さと)!』

ウタオがモロンを爪弾いて、ツキヨの歌声をきれいに飾ったので、みんなは、「ぽいぽぽい!」とか「メンボー!」とか、感に堪(た)えないといった合いの手を、しきりに入れました。
音楽や踊りは、川向こうから顔を出したまんまるな月明かりに照らされて、ますます陽気に、ますますさかんになって行きました。
やがて、夜が更けて、空に大小のきら星がまたたき出すと、眠たくなったケラは、踊りの輪から少し離れた、静かな木陰に行って、木の枝に腰かけて、大きなあくびを一つやりました。
すると、ケラよりも小さな子供たちが、三、四人集まってきて、ケラの前に並んで座りました。
「さあ、いい子はもう寝なきゃいけない時間じゃないの。」
ケラは自分のお母さんのまねをして、子供たちに言い聞かせました。
ところが子供たちは、
「眠る前に、もう一度、お空を飛んだお話をして!」
と、競うようにケラにせがみました。
ケラはふんふんとうなずくと、これまでアンチャン村や、スッカラン村のみんなの前で、さんざん話した空でのできごとを、もういっぺん、子供たちに、話して聞かせはじめました。
「ぼくをぶら下げた落葉は、どんどんどんどん飛び続けて、ジャージャー(堰・せき)のずっとずっと上を通り過ぎても飛び続けた。それで僕は、どうせみんなにはもう会えないのだし、前から見たいと思っていたカラメロ(海)まで行ってみよう、と思ったのさ。すると、落葉は、そんなところまで行きたくなかったみたいで、だんだん空から下りて、ちょうど、スッカラン村の人たちがチーオプ(めだか)漁をしていた川の上に落っこちたんだ……。」
子供たちがどんなに肩を寄せ合って、またそしてどんなに目を輝かして、ケラの話に聞き入っていたか、あなたにも見せてあげたいくらいです。
本当に、小人たちときたら、三度の飯よりも、こんなに向こう見ずな事が大好きなんですからね。

おしまい


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この童話は、書きはじめたのが去年の3月なので、じつに11か月かけて、完成にこぎつけることができました。
その間に、短編の童話はいくつか書きあげましたが、やはり最後まで書くのが難しい長い童話が一つ仕上がったというのは、格別な嬉しさです。
書きはじめた時には、それぞれの登場人物の性格や顔立ちは、まだあいまいなままでしたが、今でははっきりと、その表情を思い出すことができ、その声の調子まで聞き取ることができます。

物語を紡ぐ面白さ、というのは、新しい世界を自分で作ることができる、という事であり、その世界に対して、生みの親としての責任を持たなければいけない、という事でもあります。
だから、私は読んだ人が明るく前向きになれるような、温かいお話を書こうと常々努力しています。

その想いに、登場人物たちが共鳴してくれた時、物語は活き活きと弾み始め、読んでくれた方にもその通じ合った心が伝わって、温かい気持ちになってもらえるのだろうと思います。

そういうことを、これからも続けて行けたらいいな、と思っています。

Kobito


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