きょうは童話「アンチャンの小人たち」の、第13話を、書き進めてみたいと思います。

川下りの冒険に出たアンチャン村の小人たちの、一難去ってまた一難の物語です。
落葉といっしょに風に飛ばされてしまったケラは、はたして無事でしょうか?

--------------------------------


アンチャンの小人たち 第13話

ふいに、景色がぱっと開けて、小人たちの舟は、緑の草が茂った川岸の見える大きな川の、波立つ流れの中をゆっくりと進んでいました。
ウタオが振り返ると、先ほどの堰(せき)は、もうずいぶん遠くになっていて、川幅いっぱいに落ちた流れが、堰の下でゴウゴウと白いしぶきをあげていました。
「また沈没だ。だれか乗せてくれえ。」
誰かが大きな声で叫んだので、沖の方を見ると、舟底に穴が開いたらしいムスビが、かいをひしゃく代わりにして、水をしきりに、舟の外にかき出していました。ウタオがすぐに舟をこぎ寄せて、ムスビがすっかり沈んでしまう前に、自分の舟に乗せてやりました。
ユニオはさっきから、じっと目を凝らして、あたりの水面を見まわしています。
ツキヨも波がおさまるのを待ってから、立ち上がって遠くの流れや、岸辺の川沿いをくまなく見わたしました。
けれど、ケラの姿はどこにも見あたりませんでした。
「ひょっとすると、一人でスッカラン村に行ったんじゃないか。」
ウタオの舟に乗ったムスビが、大声でみんなに言いました。
みんな夢中でケラを探していたので、すっかり忘れていたのですが、彼らが目指していたスッカラン村は、もうすぐそこだったのです。
そこで、小人たちは、ひとまずスッカラン村に行ってみることにして、水際の浮草をかきわけて、チドメグサの薄い葉の茂った草むらに舟をこぎ着けました。
河原の土手の下に、一本の若いひょろ長のクヌギが立っているのが、草むらの葉っぱをすかして小人たちに見えました。
あのクヌギは、アンチャン村の大クヌギのどんぐりから育った子供で、スッカラン村がある場所の目印でした。
ケラ以外の小人たちは、川下りをして、この村に来た事が何度かあったので、歓迎のご馳走がどんなに美味しいかや、お返しの、ポロンや歌や踊りの披露がどんなに面白いかを、ケラにも話していました。だから、その話をケラが思い出したなら、スッカラン村の場所も、だいたい見当が付くはずでした。
ところが、小人たちは、草むらをだんだん進んで行くうちに、ケラがスッカラン村にたどり着くなんて、どうしたって無理じゃないか、と思うようになりました。
それはなぜか、というと、あの色とりどりの草花でいっぱいで、秋の収穫だって、きのこや木の実や、村人総出でも集めきれないくらい集まった、すてきな楽しい河原が、ずぅっと先の先まで、赤いレンガで真っ平らに敷き詰められて、まるで、干からび切った砂漠みたいな、さびしい景色に変えられてしまっていたからです。
クヌギの木の横には、二本の鉄柱で大きな看板が立ててあって、そこには、『大自然のさわやか散歩道』と書いてありました。
小人たちには、人間の字が読めませんでしたから、もちろん、その看板に何と書いてあるのかも、分からなかったのですが、でも、もし、私が仮に小人たちに、それを読んで聞かせて、意味を教えてあげたとしても、ぜったいに納得しなかったでしょう。

つづく


img968cs-.jpg




関連記事
拍手ボタン
コメント:
この記事へのコメント:
コメント:を投稿する
本文:
 
【新作童話】 アンチャンの小人たち 第13話|Kobitoのお絵描きブログ