きょうは、ファンタジー小説、「魔法使いサキの物語」の、第11章・第3話を書き進めてみようと思います。
前回に続いて、カイザールがサキに、自分の半生について物語ります。
挿絵は、漫画的にならないように意識しながら描きました。
いつもより、文章が長くなりましたが、絵と物語を照らし合わせながら、楽しんで頂けると嬉しいです。

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魔法使いサキの物語 第11章・第3話
カイザールがサキに物語る -魔法庁に仕官するまでの事-その2


「プントが去ると、俺は、自然派か、進歩派か、どちらの味方につくのか迫られることになった。
もちろん、俺はスナクフ様とコネのある進歩派に組することにしたが、自然派の連中は俺を裏切り者だと言って、プントの代わりに今度は俺を目の敵にしはじめた。この二派は、三法者のうちの二人、ヌマ様とミタマ様の主義の違いから端を発した派閥で、弟子は師と同じ派閥に属するのが暗黙の習わしになっていた。
ちょうどそのころ、俺はプントから紹介された薬師のシャムスフェッドの娘ガラと恋仲になった。シャムスフェッドは初歩的な魔法が使えたが、魔法試験を受けてはおらず正式な魔法使いではなかった。プントから俺の魔法の才能を吹聴されていたシャムスフェッドは、この先俺が魔法庁で成功すると踏んで、ガラを俺に近付けようとしたが、俺としても、ヘルムードの魔法使いや商人、それに貴族たちにも顔が利くシャムスフェッドと手を結べるのは願ったりだったし、なにより、ガラは商いに長けた如才ない女で、父と同様に、俺の魔法の力を家業の発展に利用できると踏んでいたから、俺たちは互いに、利益をもたらし合うことを期待した運命共同体のようなものだった。
やがて、俺はガラを妻に迎え、一人娘を授かり、薬師の仕事を通じて人脈を広げながら、フラトの魔法使い受け入れが本格化するのを待ち続けた。
その間にも、自然派と進歩派の若い連中は抗争を続けていて、俺がヘルムードに来て三年も経つ頃には、両派の関係は抜き差しならないところまで悪化していた。
俺はどちらの派にも肩入れしないように努めていたが、ヘブは結束の固い地元の自然派の連中ではなく、よそ者の俺から自然派の情報を仕入れたがったし、ヘブの根回しで魔法庁がヘルムードの魔法使いの一部を登用する事が確実になってくると、この好機を逃したくない俺としても、魔法庁への推薦をちらつかせるヘブからの要求を、拒み続けることはできなくなっていった。
そして、いよいよフラトから、ヘブに登用の通知が届き、俺を含めて四人の魔法使いが、ヘブに同行することが決まった時、その事件は起こった。
俺が自然派から裏切り者と非難され始めた後も、交流の続いていた自然派の魔法使いがいて、名前はコンドゥといったが、俺たちがフラトへ出発する前日の夜半に、彼が深刻な面持ちで俺の家を訪ねてきた。
話を聞くと、自然派の有力者で、シャムスフェッドとも親交の深いグリムゴールトが、その日の朝に魔法使い狩りに遭って、審問官に捕らえられたという事だった。
「自然派の連中は、変名で暮らしていたグリムゴールト様の素性や居場所を役人に漏らしたのは、進歩派の連中に違いないと言っている。そして、その情報を進歩派に漏らしたのは、お前ではないかと疑っている。」
コンドゥはそう言って、俺の目をまっすぐに見た。
俺は実際に、グリムゴールトの事を、ヘブに話したことがあった。ただ、俺自身、グリムゴールトに直接会った事はなく、自然派の若手を束ねている指導者だということを、シャムスフェッドやプントから聞かされていたので、それをヘブに話しただけだった。
だが、その情報を基に、ヘブがグリムゴールトを探し当て、役人に密告したのだとしたら、それは俺が居場所を明かしたのも同然だった。
俺が黙っているので、コンドゥは表情を険しくして、
「今回ばかりは、俺もかばいようがない。若い連中は明日にも行動を起こすだろう。お前は家族を連れて、すぐにもヘルムードを離れた方が良い。」
と言い残して去って行った。
フラト行きを翌朝に控えて、俺がこの問題でとれる方策は限られていた。もしヘブが密告者だったとしたら、今後の事を相談するのはあまりに不用意だったし、シャムスフェッドやガラに事情を打ち明けて、これまで築いてきた地位や富を全て捨てて、ヘルムードから逃れるようにと伝える事など、何も起きていないその時点ではできるはずもなかった。それに、自然派の連中は俺を恨んでいるのだから、俺さえヘルムードから去ってしまえば、家族に危害を加えることもないのではないか、という楽観的な考えもあった。
だから俺は、朝になって外出先から戻ったシャムスフェッドが、「グリムゴールトが審問官に捕縛されたようだ。」と話した時、彼が状況を把握したのだから、たとえ何が起きても、上手く対処してくれるはずだ、と、内心すっかり安堵したのだった。
それで、俺はシャムスフェッドにもガラにも何も伝えずに、ヘブの一行に加わってヘルムードを後にすることにした。
ガラは、昨夜から娘が熱を出して寝ていたので、「薬師の家に病人がいては信用に関わるから、早く治さないといけない。」と冗談交じりに言いながら俺を見送った。
それが、俺たちの、最後の会話になった。
その日の夜に、自然派はグリムゴールトを開放するため、彼が収監された牢を襲い、それを事前に察知して待ち構えていた軍隊と激しい攻防になった。
間をおかず、軍隊は街に展開して徹底した魔法使い狩りを開始した。魔法使いたちが牢を襲ったと知った市民は、それぞれに武器を持って軍隊に加勢し、自然派も進歩派も関係なく、多くの魔法使いがこの混乱の中で捕縛され、あるいは命を落としていった。
ガラと娘も、魔法使いの仲間だという情報を得た兵士や市民から家を包囲され、投石を受けた上に火をかけられて殺されたそうだ。
俺はそのことを、バレシニアで、逃げ延びてきたシャムスフェッドから知らされた。
ヘルムードではそれから六カ月もの間、魔法使い狩りが続き、生き延びた魔法使いたちは難民となって方々の国々に逃れて行ったという事だ。
不思議なことに、俺の魔法の力は、ガラと娘の死を聞いたときに、大きく失われてしまった。
フラトでの成功をあれほど求めていた俺は、結局、ヘブの口利きで、あんな辺境の国境警備団員の職にあり付くのがやっとだった、という次第さ。」
「お嬢さんの名前は?」
「娘の名前は、サリといったよ……。」


(カイザールがサキに物語った自身の半生についての話はこれで完結です。)
つづく


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