きょうは、久しぶりに、童話「アンチャンの小人たち」の第12話を、書き進めてみようと思います。
挿絵も、シンプルですが描いてみたので、お話と照らし合わせながら楽しんでもらえると嬉しいです。


あらすじ
落葉の舟で川下りの旅に出たアンチャン村の五人の小人たち(ムスビ、ウタオ、ツキヨ、ユニオ、ケラ)は、途中で大きな白い鯉に舟を跳ね飛ばされて、無人島に漂着することになりました。
さいわい、無人島の山の頂上で、ケラが舟になりそうな落葉を見つけたので、小人たちはふもとから中腹まで一列に並んで、順々に落葉を渡して行って山から降ろすことにしたのですが・・・。

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アンチャンの小人たち 第12話

そんなふうに、ケラは何度かほらと崖っぷちを往復して、落葉を投げ落としました。なにしろ、落葉はどれも、一人乗りほどの大きさしかなかったので、五人分だと五枚必要でしたし、かいを作るための落葉も要りましたし、上手くムスビに舞い降りずに、風に吹かれてどこかに飛んで行ってしまう落葉もあったので、その分、ケラはたくさん、ほらと崖っぷちを往復しなければなりませんでした。
そうこうするうちに、とうとう、ほらの中の落葉があと一枚になったので、ケラは落葉を崖っぷちまで運んでから、「もうこれ一枚きりだよ。逃がさないでね。」とムスビに言いました。ムスビは、「おれが逃がしてるんじゃないや。舟に逃げるなと言い聞かせろよ。」と答えました。
そこでケラは、落葉にしかめっ面を寄せると、「逃げちゃだめだよ。お前が逃げると、ぼくらのうちの誰かが舟に乗れなくなるじゃないか。」と言って、やっかいそうに頭の上に抱え上げました。
ところが、その時ちょうど、川風が強く吹き渡ったものですから、落葉はケラを引っぱって崖っぷちからしきりに空に逃げ出そうとしました。ケラは足をつっぱって踏ん張りましたが、とても辛抱できずに、ふわりと崖から離れると、落葉にぶらさがって、川下の方へふわふわと移動しはじめました。
「どこに行くんだ。もどって来いよう!」
ムスビが叫びましたが、ケラは、「分からないよう!」と言いながら、どんどん石積みの島から離れて行きます。
小人たちは大あわてで、岩山をかけ下ると、ツキヨが作っておいた落葉を切り抜いたかいを受け取って、それぞれの落葉の舟に乗って川に漕ぎ出しましたが、ケラをぶら下げた落葉は、もうずいぶん遠くに飛んで行ったらしく、空のどこにも見当たりませんでした。
「ともかく、舟は持って行ったんだ。堰(せき)を越えて川に落ちたなら、かえって好都合さ。」
ムスビがみんなの先頭を進みながら言いました。
「ごめんよ。ぼくの提案でこんなことになってしまって。」
ウタオに謝られて、ユニオはせわしくかぶりを振ると、「他に、方法、なかったもの。」と言いました。
「ケラちゃんはしっかり者だから、きっとうまく降りてくるわよ。」
ツキヨは、二人に舟を寄せるとこう言って励ましました。
川の流れが速くなってきたので、舟はこがなくてもぐんぐん進みました。
この先には、ムスビの言う(小人たちにとってはナイアガラの滝ほどもある)大きな堰がありましたが、堰の横手には、魚が上流と下流を行き来できるように魚道(ぎょどう)が作ってあったので、小人たちはそっちの方へ舟を進めました。
魚道だって、小人たちにしてみれば、白波の渦巻く危険な急流に違いありませんでしたが、ケラを一刻も早く探さないといけなかったので、一度川岸に上がって、下流まで歩いてから、再び川に出る、なんてのんきなことは、とてもしていられませんでした。
魚道の入り口が近づくと、舟はますます速度を上げて、やがて吸い込まれるように、急な下りの流れに入って行きました。
コンクリートの塀(へい)に囲まれた、左右に曲がりくねった魚道の中は、音がとてもよく響きます。たとえ小人たちが、お互いに声をかけ合ったとしても、波やしぶきが反響した大変なやかましさの中でかき消されてしまったでしょうし、舟が宙返りしそうなほど飛び跳ねていたので、もし騒音に負けじと叫んだりしようものなら、とたんにしたたか舌をかんでしまったことでしょう。
ともかく、目まぐるしく変わる流れの中で、もうへさきを進路に向ける事さえできなくなった小人たちのできることと言ったら、舟から投げ出されないように、舟べりをしっかりつかみ、できるだけ舟の中に水が入らないように、左右から舟べりをしっかり引っぱっておく事くらいでした。

つづく

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【新作童話】アンチャンの小人たち 第12話|Kobitoのお絵描きブログ