10月も半ばになって、朝夕がひんやりしてきましたね。
イチョウやカエデなど樹木の紅葉が、少しずつ進んで行くのを、日々楽しめるのも、この季節の良いところです。

きょうは、ファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第10章・第5話を書き進めてみたのでご紹介します。

あらすじ
サキの忘れ物を届けに、フラトの西の国境まで出向いた魔法庁の役人、ダンケルとマイネですが、そこで革命派のヘブから、『すべての魔法使いを国外追放にせよ』との王命が下されたことを知らされ、革命の一派に加わるよううながされました。
辛くもその場を逃れた二人は、王命の真偽を確かめるため、ミステル職人が集まる村、キッタスに向かうのですが・・・。


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魔法使いサキの物語ー第10章・第5話

キッタスのコロビンが、その二人の訪問を受けたのは、魔法使い追放の王命の第一報が村に届いて、半日ほどたった、たそがれ時の事でした。
あわただしく家財道具を荷車にまとめている村人たちの、右往左往の合い間を縫うように、二人はコロビンの腰かける幌馬車の荷台の方に歩み寄ってきました。
一人は丈が七尺もありそうな大男で、背中の背負子(しょいこ)には一尺くらいの木箱が頑丈にしばり付けてありました。
もう一人は背の低い、ひ弱そうな色白の若者で、あたりのようすをしきりに気にしているのが傍目にも分かりました。
「コロビンさんですね。」
背の低い若者が話しかけて来たので、コロビンは「あなた方は?」と尋ねました。
「僕らは魔法庁長官のスナクフ様の遣いです。あなたにこれを渡すようにと言い付かって来たのです。」
その若者は、連れの大男が下ろした背負子から、魔法で縄を解いて木箱を外すと、ふたを開けて中に収められた黒曜石の手水鉢をコロビンにあらためさせました。
コロビンは
「ああっ・・・。」
と嘆息を漏らすと、
「これで、スナクフ様が起こしたという事件や、魔法使い追放の王命が本当の事だと、認めなければなりませんね。」
と、力なく言いました。
二人の使者が、息をのんだ後、そろってうなだれるのを見て、コロビンは、
「あなた方も、半信半疑だったのですね。ええ、王命は本当のようです。一番早い伝書鳩が、二日前の、都の混乱のようすを伝えています。すでに、軍や市民による、魔法使い狩りが始まったという事です。」
周りがいっそう騒がしくなって、馬車や荷車が、村の出口の方へゆっくりと、いっせいに動き出しました。御者台の方から、「受け取っちゃいかんぞ!」という声がして、コロビンの乗る幌馬車も動き出しました。
よろよろと荷台の後を追う二人の使者のうちの一人が、「俺たちはどうすりゃいいのさ?」と尋ねました。
コロビンは、申し訳なさそうに、
「ミステル職人たちは、魔法使いの中でも特に危険視されていますから、身の上を隠して、行動しなければなりません。ミステルを引き取ることはできないのです。」
と言うと、途方に暮れて立ち止まる二人に、遠ざかりながらこう声をかけました。
「スナクフ様は、それを承知で、あなた方にミステルを託したのです。それは占いをする時に使う水鏡です。差し上げますから、捨てるもよし、売り払うもよし、ご自由にお決めなさい。」
難民となった村人たちの一群は、しだいに列を整えながら、ゆっくりゆっくりと西へ向けて移動して行きました。
後には、もぬけの殻のバラックや、打ち壊されたミステルの破片、テントの切れ端、そして、行く当てのない二人の使者が取り残されました。

つづく








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【ファンタジー小説】 魔法使いサキの物語 第10章・第5話|Kobitoのお絵描きブログ