ちょっとご無沙汰でした。
きょうは、オリジナルの新作童話、「アンチャンの小人たち」の第8話を書き進めてみようと思います。
落葉の舟に乗って、川下りの冒険に出た、アンチャン村の五人の小人たちのお話です。

今回のお話に出てくる、”うなぎを捕るための石積み”というのは、以前私が住んでいた地域の川では、ごく当たり前に見られた漁法で、人が川に入って行って、石と石のすき間に潜むうなぎを手さぐりで探している様子も、目にしたことがあります。

童話の書き方は人それぞれですが、現実に見た事のある光景を物語に取り入れて、無理なく楽にストーリーを書き進めた方が、結果的に感情移入しやすい、親近感のあるお話が書けると思います。

それでは、挿絵の下から、物語の続きを、お楽しみ下さい。

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「アンチャンの小人たち」 第8話

ちょうど、川上から、川風が吹き渡ったものですから、落葉の舟はそれに乗って、するする空をすべり、やがて川の中ほどに人間が作った、うなぎを捕るための石積みの近くまで来たところで、水の上に落ちました。
小人たちは、落葉の縁をつかんで、張り付くように伏せていましたが、おそるおそる顔を上げたムスビが、
「全員無事か?」
と聞いたので、みんなも用心しいしい顔を上げて、それぞれのようすを確かめました。ツキヨは、息をのんだウタオとユニオを見て、それからまだ見てない顔がないか探しましたが、はっと気がついて、「ケラちゃんがいないわ!」と叫びました。すると、小さなケラは、幸いなことに、ユニオの陰から顔を出して、「僕は無事だった!」と言ったので、それで、みんなはようやく安心して、笑顔になりました。
でも、ほっとしたのも、つかの間でした。
「あっ、浸水だぞ!」
ウタオが、舟のまん中あたりに、ひびが入って、そこから水があふれ出しているのを、見つけたのです。
みんなはすぐに、手で水をすくい出しましたが、水はどんどん溜まるばかりで、どんなに急いでも、とても追いつきそうにありません。ウタオは、前方の石積みの島を指さして、「あの島にこぎつけよう!」と言うと、舟べりから手で一心に流れをかいて、舟をそちらに向けようとしました。
みんなも、水をすくい出すのはあきらめて、すぐに夢中で川面をかきはじめたので、舟はだんだん沈みながらも、しだいしだいに、石積みの島の方へ近づいて行きました。
やがて、舟は島のすぐ横を通り過ぎようとしましたが、みんなが、いっそうがむしゃらに水をかきつづけたので、どうにかこうにか、島の下流側の岸にたどり着くことができました。
小人たちは次々に岩場に飛びつくと、そこをはい上がりました。落葉の舟は、もうほとんど水に浸かっていて、小人たちが残らず島に移ってしまうと、透き通った水の中に沈み、ゆっくり回転しながら下流に流されて行きました。
みんなはくたくたに疲れて、丸い岩のてっぺんに座り込みました。ムスビが、すっかり遠くになった川岸を見つめて、「泳いでむこうに渡るのは無理だろうな。」と、つぶやきました。
確かに、私たち人間なら、歩いて渡れるほどの何でもない浅瀬なのですが、小人たちにとっては、海峡みたいな広さの大河を、流れや、渦に逆らいながら、泳ぎ続けなければいけないわけですから、とんでもないことでした。

つづく



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【新作童話】 アンチャンの小人たち 第8話|Kobitoのお絵描きブログ