お早うございます。
きょうは、ファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第10章・第1話を書き進めてみたので、ご紹介します。
新しい章に入って、登場人物も、サキとカイザールから、ダンケルとマイネの役人コンビへとバトンタッチされます。

それでは、新しい挿絵とともに、お話の続きをお楽しみ下さい。

img843s-.jpg

【魔法使いサキの物語 第10章・第1話】

ところ変わって、魔法庁長官スナクフの命を受けてサキを追うダンケルとマイネは、フラトの西の国境にほど近い、ミナンザの谷に来ていました。
この谷を抜ければ、開けた荒野の先に、国境警備団の西部方面師団が詰める検問所が見えてくるはずです。
実は、彼らはこの谷の手前のバンサの丘で、野盗と思われる白い頭巾姿の男五、六人に取り囲まれて、あやうく荷物を奪われそうになっていました。マイネがすぐに魔法の笛を吹き鳴らして、男たちを踊らせたので、事なきを得たかに思われましたが、彼らの中の一人が魔法使いで、マイネに縄を打って魔法を打ち消してしまったので、二人は大慌てで逃げ出して、ようやく男たちの追跡を逃れ、丘を迂回してミナンザの谷に入る頃には、予定から半日も時間を無駄にしてしまっていました。
この半日の遅れが、二人の運命をおかしな方向へ向かわせてしまうのですが、それはまだ、彼らには知る由もないことでした。

むき出しの堆積岩の丘に挟まれた谷間を、追手に用心しながら突っ切って、二人は赤茶けた礫(れき)と砂の平らかな荒野に出ました。
行く手のはるか先には、小さな白い点のような建物が、陽炎(かげろう)に揺らめきながらかすかに見えて来ました。
二人はそのまま馬を駆けさせて、白い切石を組んで建てられた検問所の近くまで一息に来ると、やっと警戒を緩めて速度を落としました。
検問所は表の鉄の扉が開いたままになっていましたが、二人の到来に気が付いて出てくる警備団員は一人もありませんでした。
二人は下馬した馬を、建物の横手の馬止めにつなぐと、スナクフから預かった書類を手早く荷から取り出して建物に入りました。
マイネは書棚に囲まれて机が並んだこじんまりとした部屋を見回してから、「こんにちは。」と、大きな声で二度呼びかけました。けれど、いくら待っても役人が現れることはなく、奥の二階へ続く階段から降りてくる者もありませんでした。
マイネは冗談めかして、「やけに物騒な検問所だね。」と言いました。
ダンケルは疑わしそうに部屋の隅々をながめながら、「物騒なだけじゃない。この道中、ずっとおかしな事づくめじゃないか。」と言うと、ふんと鼻で息をついて、「馬に水を飲ませてくる。」と表へ出て行きました。
それから、二人はずいぶん長い間、警備団員が戻って来るのを待ちましたが、荒野にそれらしい人影が見えることはなく、念のために検問所の中も探してみましたが、奥の部屋や二階の見張り台にも、人が隠れていそうな気配さえまったくないのでした。
「真面目な話、これからどうする?」
マイネは椅子に座って、頭の後ろで手を組みながら、あきらめ気味に尋ねました。
「南の検問所に行ってみるか、昨日の宿場に戻って、役所に早馬を出して状況を知らせるか・・・。」
ダンケルも机に腰かけて、腕組みしたまま決めかねている様子でした。
マイネが突然飛び上がって、
「一ついい方法があるよ。」
と言うと、ダンケルを手招きしながら表に駆け出しました。
ダンケルがついて出ると、マイネは検問所の横の、国境線を定めた点々と続く標石の列のそばで得意げに立っていました。彼はダンケルにいたずらっぽく目をやると、ワナイの側に足を延ばし、その国境線をおもむろにまたぎ越えました。
検問所の中から、途端にけたたましい鈴の音が鳴り響くのが聞こえて来ました。
「これで誰も駆けつけなかったらお笑い草だね。」
マイネが国境をフラト側に戻りながら言いました。
ところが、それから二人はまた、半時間ほど検問所で待ったのですが、彼らの行為をとがめ立てる警備団員など、予想に反してただの一人も現れなかったのです。
これには二人もすっかりあきれて、とても笑うどころではなくなりました。


つづく



関連記事
拍手ボタン
コメント:
この記事へのコメント:
コメント:を投稿する
本文:
 
魔法使いサキの物語 第10章・第1話|Kobitoのお絵描きブログ