今日は、教訓話風の童話を書いてみたので、ご紹介します。
タイトルは、『窓』といいます。
読んでもらえればわかりますが、これはインターネットや携帯電話上の交流でよく見られる、ひとり言を相手に向けて発信する寒々しさについての、一つの不満の表明です。(ただの批判ではなく、自戒と、忠言を込めて書きました。)

ひとり言に返事をする事が、どんなにむなしい行為か、作中の登場人物たちのやりとりから感じ取ってもらえれば幸いです。

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『窓』

すぎおが越してきた部屋には、北側に、手のひらくらいの大きさの小さな窓が付いていました。
窓から見えるのは、となりの家の壁だけでしたし、作り付けてあったので、開くこともできませんでした。それに、冬だったので、窓には露がおりて、うっすら白く曇っていました。
夜になって、すぎおはその窓に、誰かが指で書いたらしい、文字が映っているのに気が付きました。
そこには、「世界中の人々が、違いを認めあって、仲良く暮らせるように願っています。」と、書いてありました。
すぎおは、これを書いたのは、とても優しい人なんだな、と思ったので、余白に、「私も、そうなったらいいなと思います。」と書き込みました。
すると、次の日の夜、窓には、あたらしく露がおりて、そこに、昨日の字で、「今日は月が丸くてきれいですね。」という返事が書いてありました。
すぎおは、外に出てみて、満月がとても明るく、通りを照らしているのを見て、部屋に戻ると、
「本当にきれいですね。月はすすき色に光るのに、通りは青白く照らされていて、ふしぎでした。」と書き込みました。
次の日の夜、すぎおが窓を見ると、そこには、
「今日は、デパートでめずらしい緑と黒の縞模様のかばんを買って、あんみつを食べました。美味しかったです。」
と書いてありました。
すぎおは、
「楽しいお出かけになりましたね。緑と黒の縞模様のかばんは、お洒落で洋服とも合わせやすそうですね。私も甘いものが大好きです。」
と返事を書きました。
すると、次の日、窓にはやっぱり、書き込みがあって、
「今日はピアノで『町娘の踊り』の練習をしました。休み休み、長い時間弾いていたので、少し早く弾けるようになりました。」
と書いてありました。
すぎおは、「ピアノが弾けるんですね。『町娘の踊り』とはどんな曲かな。好きな曲が、自由に弾けたら、さぞかし楽しいでしょうね。」
と返事しました。
さて、次の日、窓には、またあたらしく、こんな書き込みがありました。
「今日は、少しやせようと思って、部屋で半時間ほど体操をして、夕食は軽い食事で済ませました。やせたら、デパートで見つけた、サイズの小さい、きれいな花柄の服を買いたいです。」
すぎおは、考え考え、
「やせるには、運動が一番ですからね。お気に入りの服が買えるように応援しています。」
と書きました。
そして、きょう、窓には、ピクニックに行って楽しかったということが書いてありましたが、すぎおはもう、返事を書きたいとは思いませんでした。
そして、その次の日、すぎおは窓に、花の苗を買ったという一文が書かれているのを見ると、カーテンを取りつけて、文字を見なくても済むようにしました。
そうするのが、自分にとって、一番安らげると思ったからです。
こういうことは、残念ながら今の世の中では、わりとめずらしくないのですよ。


おしまい


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教訓話風の新作童話 『窓』|Kobitoのお絵描きブログ