こんばんは。
今日はひさしぶりに、『魔法使いサキの物語』の第9章・第5話を書き進めてみます。
カイザールがサキに物語る、カン・ソクの冒険譚の後編、その1です。

今回の内容は、冒険譚の登場人物イヅミが語る回想なので、物語の中で語られる物語という入れ子方式になっています。
挿絵は、イヅミの姿を写したものです。
それでは、絵の下から物語をお楽しみ下さい。


img821c2 - コピー (2)

ーカイザールが物語るー
ブリーズ海の暴れ竜を退治した魔法使い 後編1
『イヅミの回想』

「ギンバースの王宮には宝物庫があり、世界中から集められた珍しい品々が収められております。その中に、『三法者の書』は厳重な魔法の封印をほどこされて保管されていました。私の父であるヨナ王は、その書物を、オルゴという魔法使いをだまして奪い取ったと聞いております。
ある日、王宮にフェルノポルタの隊商が訪ねてきました。彼らは西方で手に入れた貴重な品々を売りに来るのですが、その日は竜が封じられているという底光りする蒼玉(そうぎょく)を持ってまいりました。ヨナ王はその蒼玉の怪しい光がいたく気に入り、商人が要求した途方もない大金を支払って手に入れました。
蒼玉は宝物庫には収められず、ペンダントに仕立てられてヨナ王の胸に飾られました。
ヨナ王のようすがおかしくなったのは、それからです。
蒼玉を、いつも肌身離さず持ち歩くようになり、時には何時間も、一心にその光をながめつづけ、他の事は目に入らなくなって行きました。粗暴さが目立つようになり、玉を見ている時に家臣が話しかけようものなら、怒鳴りつけて追い払うこともありました。
そして、とうとうある日、私は見たのです。
変わってしまったヨナ王を諭すために、私が王の私室を訪れると、ヨナ王は薄暗い部屋で、蒼玉の放つ青白い光に照らされていました。そして、こんなことを、蒼玉に話しかけていたのです。
「おれはずいぶんな力を得たが、この程度では三法者の書の封印はまだ解けない。しかし、じきに三法者の書を手に入れ、蒼玉から俺の肉体を開放することができれば、俺は世界の支配者にもなれるのだ。」
そう言ったヨナ王は、しだいに背中がもり上がり、びっしりとうろこが生え、首は蛇のように伸び、間もなくすっかり、銀色の翼を持った竜の姿に変わってしまいました。
私は恐ろしさに声をあげてしまいました。すると、不思議なことに、竜の姿になったと思ったヨナ王が、今はもう当たり前の人の姿をして、私を見つめながら、「何を驚いているのだ。」といぶかしそうに聞くのです。
私は今見たことを王に明かして、竜があなたを乗っ取ろうとしているのではないかと話しました。しかし、王は夢でも見たのだろうと笑うばかりで、まともに取り合ってはくれません。
私はこのことを、誰に相談したらいいのか、思い悩みました。
その時ふと、庭師のバザムという男を思い出しました。チロクの出身で、正直で素朴な男でしたが、どこで覚えたのか、魔法を自在に操ることができました。そして何より、私に好意を寄せているのが、隠しようもなく表れていたのが、好都合に思えたのです。
私はだれにも知られずに、三法者の書を手に入れて、隠してしまわなければなりませんでした。
そこで、私はバザムに事情を話して、三法者の書を宝物庫から盗み出してほしいと頼みました。
バザムはその夜すぐに約束を果たし、盗み出した三法者の書を抱えて私の部屋をおとずれました。そして、
「この書物は、封印から解かれて、今強い力を発しています。竜が察知すれば、すぐに追って来ることになるでしょう。しかし、一方でこの書物は、破ることも、燃やすこともできないように作られています。それから、発せられている力を隠すのも容易なことではありません。」と言いました。
私は、「どうすれば良いの?」と、尋ねました。
「竜の肉体が蒼玉に封じられているうちに、先手を打って、私たちに手出しをできないような魔法の契約を交わしてしまうのです。今ならまだ、ヨナ王の魂も半分乗っ取られただけで留められます。」
「そんなことがあなたにできて?」
バザムはゆっくりとうなづいて、
「あなたが、私と一緒に来て、手助けしてくれるなら。」と言いました。
私は覚悟を決めて、バザムと行動を共にする事にしました・・・。」



つづく

関連記事
拍手ボタン
コメント:
この記事へのコメント:
コメント:を投稿する
本文:
 
魔法使いサキの物語 第9章・第5話『カイザールが物語るーブリーズ海の暴れ竜を退治した魔法使い・後編1』|Kobitoのお絵描きブログ