こんばんは。
今日は、オリジナルのファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第9章・第4話を書き進めてみます。

カイザールがサキに物語る、カン・ソクの冒険譚の中編です。

挿絵は、カイザールの話に聞き入るサキの様子が描いてあります。

それでは、絵の下から物語の続きをお楽しみ下さい。


img829cs-.jpg


img824c2s-.jpg

----------------------------------

その夜、カン・ソクは気がかりなことがあり、再びイヅミのもとを訪れました。
すると、浜辺の家の前には二人の兵士が立っており、家の中からはサズメ王の話し声が聞こえてきました。
「やはりお前は、ギンバースの王女ではないか。余は以前、王宮の式典でお前に会った事がある。名前も確かイヅミであった。ギンバースの王女なら、王宮に出入りしていた男と駆け落ちして行方不明になったと聞いていたが、まさかこのようなところで暮らしていようとはな。」
すると、イヅミの声で、こう答えるのが聞こえました。
「恐れながら、私は王のおっしゃられている方とは別人でございます。私は生まれも育ちもこのツムの村でございます。村の者にお尋ね頂ければ、それはすぐにお確かめ頂けることでございます。」
「では、もしこの村の者でないと分かれば、ギンバースへ連れてゆくが、異存はないな。」
「よろしゅうございます。どうぞ、村の者によくお確かめください。」
やがて、サズメ王が家から出てきて、宿営地の方に引き上げて行きました。
カン・ソクは入れ替わりに家の戸を叩き、イヅミに招き入れられました。
「一つ確かめたいことがあるのです。竜が渡せと言った三法者の書ですが、バザムは、それに関わるようなことを、一切話したことはありませんか。」
カン・ソクが尋ねると、イヅミは、
「バザムは漁の事に詳しいばかりで、学問には関心のない人だと思っていました。もし、彼がそういう書物の話をしたなら、私も意外に思って覚えていたでしょう。」
「あなたは三法者の書を、学問の書物だと思っているようですが、違うかもしれませんよ。」
「そうですね。竜から名前を聞いたとき、そういう書物ではないかと思ったのですが、違うかもしれません。」
「本当に違うと思いますか?」
イヅミは怪訝そうにカン・ソクを見つめました。
「じつは、私はあなたが、三法者の書について、知っていると思うのです。今は忘れているだけでね。それはバザムが、あなたの記憶から、三法者の書に関する部分を消してしまったからではないかと思います。」
イヅミはあっけにとられました。
「魔法使いでもない夫に、どうしてそんなことができましょう。」
「バザムが魔法使いであれば、それができるのです。しかも、記憶を操る魔法は大変難しいですから、彼は並の魔法使いではないということになります。」
「夫にそんな力があるとは、到底思えません。漁以外にとりえの無いような人でしたから。」
「先ほど、あなたはサズメ王と話していましたね。私はそれを、外で聞いてしまったのですが、あなたがもし、本当にギンバースの王女なら、バザムは魔法を使って、村の人々の記憶を操り、あなたがこの村で暮らせるように支度を整えたのです。そして、自分も漁師として村に溶け込んで、ギンバースの捜索を逃れたのだと思います。」
イヅミはとうとう笑い出しました。
「そんなに言うなら、何か信じられる証拠を見せて下さい。バザムが私や村の人たちの記憶を操り、私がギンバースの王女であることを忘れさせていると、証明できますか?」
カン・ソクはうなずきました。
「私には、あなたたちに掛けられた魔法の糸口が見えているのです。でも、それをあなたに見せることはできません。しかし、私にはバザムの掛けた魔法を解く力があります。魔法を解けば、あなたはすべてを思い出すでしょう。それが証拠です。そして、もしすべてを思い出すことができたなら、その見返りとして、私に三法者の書のありかを教え、それをゆずっていただきたいのです。」
イヅミはあきれて言いました。
「分かりました。私が王女であることを思い出し、三法者の書のありかを知っている事が分かれば、必ずあなたにお譲りするとお約束いたします。」
「忘れてはいけませんよ。」
カン・ソクはそう言うと、イヅミの近くに座り直し、装束を整えてから、その手を取りました・・・。


つづく



関連記事
拍手ボタン
コメント:
この記事へのコメント:
コメント:を投稿する
本文:
 
魔法使いサキの物語 第9章・第4話『カイザールが物語るーフリース海の暴れ竜を退治した魔法使い・中編』|Kobitoのお絵描きブログ