こんにちは。
きょうは、『魔法使いサキの物語』の、第9章第3話を書き進めてみます。
内容は前回同様、カイザールがサキに物語る、カン・ソクの冒険譚の一つです。
今回の冒険譚は長い内容になったので、前篇、後篇に分けて掲載します。
挿絵は、今回のために描いたアクリル画の一部分です。
カン・ソクが弓を持って立っている姿です。
じつは、カン・ソクの姿を絵に描いたのは、これが初めてです。なぜ今まで彼の姿を描いてこなかったのかは、いつか物語の中で語る機会が来るのではないかと思います。
それでは、絵の下から、お話の続きをお楽しみ下さい。

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ーカイザールが物語るー
ブリーズ海の暴れ竜を退治した魔法使い 前篇

チロクは霧に包まれた国です。
北からの冷たい風が、ブリーズ海の温かい水を、終始霧に変えているからです。
魔法使いのカン・ソクが、チロクのツムという村を訪れたのは、隣国のナンノーアで、ブリーズ海に住み着いた暴れ竜のうわさを耳にしたからです。
この竜は、ブリーズ海沿岸の村々を襲っては、家や田畑を焼き払い、多くの漁船を海に沈めて、すでにたくさんの人々を、住み慣れた土地から追い立てているという事でした。
カン・ソクはツムの村長、テンジムの許を訪れて、暴れ竜のうわさが本当かどうかを尋ねました。
テンジムは、彼が有名な魔法使いだと分かると、すっかり恐縮して答えました。
「このあたりに竜が出るのはまことの事でございます。霧が濃い土地柄のため、はっきりと姿を見た者はおりませんが、鯨のように大きな体で、悠々と空を舞い、村々にやって来ては、舟を壊し、家や農地を焼き払って、人々を苦しめ、故郷から追い立てようとしております。」
カン・ソクは、ツムの村落や田畑に荒らされた様子がないのを見ていたので、
「この村は襲われたことがないのですか?」
と尋ねました。テンジムはうなずくと、
「漁に出ていた舟を何隻か壊されましたが、村落が襲われたことはまだありません。しかし、先日竜が、村の漁師を通じて、『近いうちにこの村を襲う。』と我々に言づてをよこしたのです。ですから、途方に暮れた私どもは、王宮のサズメ王に救援を求めに参りました。サズメ王はこの村に軍隊を派遣すると約束して下さいました。じつは今日が、その軍隊が到着する日なのです。」
と答えました。
カン・ソクは納得すると、
「竜の言づてを預かったという漁師から、話を聞く事はできますか?」
と聞きました。テンジムは喜んで、「ぜひお願い致します。軍隊とカン・ソク様がこの村をお守り下されば、まさに鬼に金棒でございます。」と言うと、彼を海岸にほど近い一軒の家に案内しました。
テンジムは家の前でカン・ソクに、
「この家の主は、漁に出たまま行方知れずになったのです。後に、竜の仕業だと分かりましたが、いまはその妻が、一人で漁をして暮らしております。」と教えました。
すると、浜の方から魚の入っためかごを担いだ女が帰ってきました。
まだ若く、漁師にしては華奢な女で、名前はイヅミといいました。
イヅミは二人を家に上げると、竜から伝言を預かった時のようすを話しました。
「沖の方で、網打ちをしていると、霧の向こうに、大きな鳥のようなものが舞い下りてきて、私にこう話しかけました。『お前の村を、これまで襲わなかったのは、お前の夫のバザムが俺に結ばせた契約のためだ。その契約では、バザムの魂と、三法者の書を俺に譲り渡せば、村を襲わない、という決まりになっていた。しかし、三法者の書を、俺はいまだに受け取っていない。このまま三法者の書を渡さないつもりなら、お前の村も近いうちに草一本生えない焼け野原にしてしまうからそう思え。』と。私は、『三法者の書など知らない。バザムを返してくれ。』と言いましたが、竜は嵐のような突風を起こすと、返事もせずに飛び去ってしまいました。」
カン・ソクは、語り終えたイヅミをいたわって、礼を言いました。
するとイヅミは、「どうか、私を竜退治に加わらせて下さい。私の手で、バザムの仇(かたき)を討ちたいのです。」と言って頭を下げました。
カン・ソクは、「あなたにできることがあれば、お願いすることになるでしょう。」と言って、テンジムと共に彼女の家を後にしました。
午後になって、王宮が派遣した軍隊がツムに到着しました。
村人たちと共に広場で出迎えたテンジムは、兵士の隊列の先頭に、サズメ王の姿を見つけると驚いて、
「王直々にお出ましを頂けるとは、誠に恐れ多いことにございます。」
と頭を下げました。
「竜という生物が本当に居るのか、この目で確かめてみたくなったのでな。」
サズメ王はそう言うと、司令官に宿営地の設営を命じました。
テンジムは、帯同していたカン・ソクを、「森羅万象を操る高名な魔法使いでございます。」と言ってサズメ王に引き合わせました。
サズメ王も、この魔法使いのうわさは聞き及んでいたので、
「竜に加えて、伝説の魔法使いにも出会えるとはありがたい。」
と言って、下馬すると握手を交わしました。
カン・ソクは、
「恐れながら、この度の竜退治は大変に危険なものになります。なぜなら、竜というものは魔法を自在に操ることができるからです。これは、兵力の大きさでは抗し切れない力です。兵士や村民への被害を最小限に抑えるためにも、ぜひ私を作戦の指揮に加えて頂きたい。」と申し出ました。
サズメ王は、
「気遣いは嬉しいが、この度の指揮は余が執り仕切る。虎や獅子の狩りでも、危険はつきものだが、その危険があるからこそ、狩りの醍醐味も存分に味わえるというものだからな。」
と言いました。
「では、私は万一のために、村民を守りつつ備えております。」
カン・ソクが申し出ると、サズメ王は、
「そうしてもらいたい。」
と言って、テンジムの案内で司令官たちと村の視察に出かけました。


つづく

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魔法使いサキの物語 第9章・第3話『カイザールが物語るーブリーズ海の暴れ竜を退治した魔法使い・前篇』|Kobitoのお絵描きブログ