きょうはオリジナルのファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の第8章・第1話を書き進めてみようと思います。
第7章では、フラトの王アモスが、全ての魔法使いを国から追放する命令を出した理由が語られましたが、今回は、白い影によってナップに飛ばされたカン・ソク先生が、同じ頃どうしていたのかをお話ししたいと思います。
挿絵は、今回用に描き上げたものです。
では、挿絵の下から、物語の続きをお楽しみ下さい。


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 通年風雪に閉ざされるナップでも、夏期には風が止んで、晴れ間が見られる日もあるのです。
けれど、今年の夏は、激しい吹雪が一向に収まらず、チェロとフキの兄妹が暮らす小屋でも、外出することさえままならない日々が、二カ月間も続きました。
カン・ソクは二人の介抱のおかげで、怪我の具合は良くなりつつありましたが、魔法を使いすぎた事から来る疲労がなかなか癒えず、まだベッドから起き上がることができずにいました。
フキは普段、家事をしたり、機織りをしたりで、小屋の中にいたので、カン・ソクは時折、彼女を呼んでは、話し相手になってもらいました。
「君たちが二人きりになってから、誰か、村から引き取りに来たり、世話をする人が来たりしなかったのかい?」
カン・ソクが尋ねると、フキは頭を横に振って、
「私たちは、大人と同じように何でもできた。村の人たちも、それが分かっていたから来なかった。」
「ダジーから教わったのかい?」
「ここで生きていくために必要な事は、初めから知っていた。星を授かったから。」
「星?」
「チェロも授かった。空から落ちた光、幸運の証。」
カン・ソクはフキの青く澄んだ瞳に見入っていましたが、引き込まれるような力を感じて、ハッとすると、窓の外で吹き荒れる風雪に目をそらしました。
すると、玄関扉を開く音がして、チェロが薪の束を持って隣の部屋に入って来ました。
「チェロ、ちょっと来てごらん。」
カン・ソクが呼びかけると、チェロは薪を持ったまま、部屋の入り口につっ立ちました。
フキがふたの付いた大きなガラス瓶をカン・ソクの枕元に置きました。
カン・ソクは、ガラス瓶のふたに包帯の巻かれた手を当てて、つぶやくように短い言葉を唱えました。
すると、瓶の中に、ぱっと火花が散って、青や赤や黄色に輝く光が、伸びたり輪になってはじけたり、まるで生き物のようにせわしく飛び回りはじめました。部屋の壁や天井にも、その光が映って、すすでくすんだ部屋は、にわかに色鮮やかな別世界のような景色に変わりました。
チェロもいつしか、フキの横に立って、瓶の中の美しい花火に見入っていました。
不意にフキが手を伸ばして、カン・ソクの手に自分の手を重ねたので、花火は光を弱めて、やがて消えてしまいました。
フキが言いました。
「私にも魔法が使える気がする。風の声がそう言っている。」
「風の声?」
「星を授かった時、風の声も分かるようになった。いまは、私に力を与えると言っている。」
カン・ソクは耳をすましてみましたが、聞こえるのは、外で吹き荒れる風と、雪が窓を打つ、うなりのような音だけでした。
ただ、そのうなりは、不思議な意思のようなものを、持っているように感じられるのでした。

つづく

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ファンタジー小説『魔法使いサキの物語』第8章・第1話|Kobitoのお絵描きブログ