きょうは『魔法使いサキの物語』の、第7章・第3話をご紹介します。
前回は、魔法長官スナクフが大鷲(おおわし)に変化してアモス王を襲うという、重大な事件が起きましたが、今回はその後の王宮での顛末が描かれます。
挿絵は、アモス王の肖像です。聡明にして進歩的な王として、フラト国民から慕われている人物です。


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御前会議での騒動から数時間後、アモス王は謁見の間の玉座に座り、先ほどさやから抜くことができなかった王の証の短剣に、不具合が無いかをあらためていました。短剣は、普段と変わりなく、容易にさやから引き抜くことができましたし、さやにもつばにも、問題は見当たりませんでした。
そこへ、宰相のテクネが現れて、ひざを曲げて一礼すると、
「例の物ですが、調べが終わりました。」
と言いました。
例の物とは、スナクフが化身した大鷲が、窓を突き破って逃走したのち、アモスが足元に落ちているのを見つけた、鉄製の小さな串でした。
「先端にアミヒルガの毒が塗られていました。刺されていれば、お命も危のうございました。」
アモスは、
「スナクフが連れ去った衛兵は見つかったか。」
と尋ねました。
「空から大運河に落とされたのち、西地区側の岸に泳ぎ着いたのが目撃されておりますが、その後の行方はまだ分かっておりません。」
「謀反人の一人である。手配をして必ず捕まえよ。」
テクネは深く一礼して、謁見の間から退出しました。
アモスは思い立って、足早に自室に向かいました。
そして、部屋の奥の、壁の一隅にある小さな隠し扉を開けると、中から朱塗りの書類箱を取り出しました。
書類箱には、スナクフと魔法によって取り交わした契約書が入っていました。
しかし、契約書を手に取ると、羊皮紙に記された文字は浮きあがって次々に下にこぼれ、空中で煙のように消えてしまいました。
アモスは天を仰いで、低い声でうなりました。
スナクフを信用するための根拠だった魔法による契約は、どうやら偽物だったようです。しかし、衛兵が毒の串を使って暗殺を企てたのだとしたら、スナクフは身を挺してそれを阻止したことになります。

アモスには、誰が謀反の中心に居るのか、はっきりとは見当が付きませんでした。しかし、毒の串の件と、不具合のない短剣が引き抜けなかった件を考え合わせると、魔法使いと、そうでない者たちが、どちらもこの陰謀に関わっていることは間違いないようでした。自分がこのところ頻繁に見ていた悪夢も、魔法使いが魔法で見せていた幻覚かもしれないのです。

もし、魔法使いを含む一派が、この国を乗っ取ろうとしているのなら、それはたやすいことでした。
スナクフを失った今となっては、国内の魔法使いを統率し、王を魔法から守る魔法使いは、王宮にいなくなったからです。

アモスにとって、魔法使いたちの得体の知れない力は、もはや王政を揺るがす脅威でしかありませんでした。
そして、アモスにはこの切迫した状況を、相談できる相手が誰なのかさえ、分からなかったのです。

王が全ての魔法使いの国外追放を命じたのは、それから二日後のことでした。


つづく


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ファンタジー小説『魔法使いサキの物語』第7章・第3話|Kobitoのお絵描きブログ