きょうは、製作中のファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第7章第2話を書き進めてみようと思います。
挿絵は、今回で完成です。お話の末尾に添えてあるので、物語を読んだ後、場面の参考として見てみて下さい。


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アモスは、夢の中で先王マテオから伝えられた予言を、すっかり信じているわけではありませんでした。
しかし、魔法使いの力が、人間業を越えたものであり、王の権威や法律だけでは、統治することが難しいことも承知していました。
テクネがもたらしたスナクフに関するうわさ話は、アモスの心配を裏付ける内容でした。
アモスは、名だたる魔法使いの中でも、ほとんど唯一といってよいほどスナクフを信頼していました。
それは、スナクフを側近として登用するにあたって、全てを王と王国のために捧げるという厳格な契約を、魔法によって取り交わしていたからです。
アモスは不遇をかこつ魔法使いたちの力を活かすことで、辺境の小国であったフラトを、西方のナーグリアに匹敵する大国に発展させる事ができると考えていましたし、そのためには、この練達な魔法使いの知識と技と影響力が不可欠であるとも考えていました。
スナクフは、自分の全てを王と王国に捧げる代わりに、この国での魔法使いの地位と自由を保証するようにアモスに求めました。
王はそれを受け入れ、スナクフは魔法の契約書に署名をし、王は契約書のない約束としてそれを守る事としました。
その、スナクフの結んだ契約の中には、〈王に隠し事をしてはならない〉、という項目もありました。ですから、もしスナクフがうわさの通り、悪魔と契約を交わしていたのなら、王もそれを知っていなければおかしいのです。
王がそれを知らず、スナクフがそれを隠し通せているということは、すなわち、彼女が王と交わした魔法の契約自体が、偽りであったという事になります。
アモスはこんな思いにふけりながら、かつてとは見違えるように発展した城下の街並みを窓際から見わたしたのち、テクネを付き従えて御前会議の会場に向かいました。

会場にはすでに、魔法庁長官スナクフをはじめ、大臣や将軍たちが揃って長机の周りに整列していました。
アモスが長机の一番奥の席につくと、テクネが王のすぐわきに着席し、列席者もそれぞれの席に着きました。
テクネは一同を見渡してから、
「今朝はまず、皆に見てもらいたいものがある。」
と言うと、扉のそばに立っていた衛兵の一人に手をかざして指図しました。衛兵が扉を開けると、廊下から黒いローブを頭からかぶった数人が足早に入室して、驚く列席者を取り囲むように立ち並びました。
彼らはローブのたもとから淡く黄色に輝く手のひら大の石を取り出して、頭上に高々と掲げました。
彼らがいっせいに呪文を唱え始めると、明るかった大窓は次第に薄暗くなり、間もなく室内は、彼らの掲げる光る石だけが列席者の姿を照らし出す、真夜中のような暗闇に変わりました。
突然、鋭い悲鳴のような声が上がり、長机の中ほどの席にいたスナクフが、激しく悶えながら床に突っ伏しました。
彼女の体はみるみる膨らんで、服は破れ、茶色い羽毛が全身にびっしりと生え、首は伸びて頭が小さくなり、口は突き出して鋭いかぎ状のくちばしになり、皆が恐れおののくうちに、一羽の化け物のように大きな鷲(わし)の姿になって長机の上に飛び上がりました。
「殺せ!こやつは悪魔に魂を売ったのだ!」
テクネが叫びました。すかさず、一人の将軍が剣を振り上げて切りかかりましたが、大鷲は舞い上がって剣をかわすと、将軍の肩をかぎ爪でつかみ、槍を構えてせまって来た衛兵たちの上に振り回し、長机の向かい側から切りかかろうとした将軍たちめがけて投げ飛ばしました。
そして大鷲は、部屋の奥の窓辺に後退したアモスを見定めると、天井すれすれに勢いよく滑空して、真上から両脚のかぎ爪をいっぱいに伸ばしました。
アモスは王の証の短剣を引き抜こうとしていましたが、どんなに引っぱってもさやから抜くことができずにいました。
大鷲は耳をつんざくような叫び声を上げ、王の前に立ちはだかった衛兵の腕をつかんで舞い上がると、くちばしから大窓に突っ込んで粉々に打ち破り、まぶしい朝の光が差す外の世界に、衛兵を連れたまま、羽音もせわしく飛び去って行きました。


つづく



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ファンタジー小説『魔法使いサキの物語』第7章・第2話|Kobitoのお絵描きブログ