きょうは、オリジナル童話の新作を書いてみたのでご紹介します。
タイトルは、『たんぽぽ、たぬき、しまふくろう』です。
挿絵も描いてみたので、お話の内容と照らし合わせながら楽しんでもらえると嬉しいです。


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 これから、たんぽぽ、たぬき、しまふくろうのお話をします。
だけど、もし、あなたが、たんぽぽ、たぬき、しまふくろうのうち、残念ながら、どれにも関心がなかったら、目を閉じるなり、上を向くなりして、どうにかこのお話を読まないようにして下さい。それから、そばで誰かに読んでもらっている人は、両方の耳を、手のひらで餃子のように丸めて、お話が勝手に入り込まないようにして下さい。
いいですか、では、たんぽぽ、たぬき、しまふくろうのお話を、知りたい人だけ、聞いて下さい。

野原の丘を、たんぽぽ、たぬき、しまふくろうが歩いていました。
あ、たんぽぽが歩いていたというのは、間違いです。
たんぽぽは、土から掘り出されて、たぬきが両手で包んで、運んでいただけです。だから、ほんとうに歩いていたのは、たぬきと、しまふくろうだけです。

たぬきは、丘の上に住んでいて、丘の上は、黒いゴツゴツの岩地で、殺風景でした。
だから、たぬきは、ふもとの野原から、たんぽぽを掘り出して、丘の上に運んで、岩のくぼみに植え付けて、たんぽぽ畑にしようとしています。
しまふくろうは、その物見客です。

しまふくろうは、なれない坂道を、ホウホウ息して登りながら、「あんなへんぴな岩地に、好んで住んでる君の気が知れないよ。」と、言いました。
たぬきは、「ふもとは住んでる動物が多いから、岩地ほど、広い土地を自分だけのものにはできないだろう。」と言いました。
しまふくろうは、「寂しかないかい。」と聞きました。
「寂しいよ。だからたんぽぽ植えるんだよ。」
「なるほどね。」
たぬきの答えに、しまふくろうが納得しました。

たぬきは、丘のてっぺんの、岩地のまん中の、自分のすみかの穴ぐらに着くと、玄関前の岩のくぼみに、たんぽぽを下ろして言いました。
「さあ、早く根付いておくれ。そして、ここらを見事なたんぽぽ畑にするんだよ。」
すると、たんぽぽが言いました。
「駄目ですよ。くぼみが浅すぎて、根なんか下ろしようがありません。それに、こんなに少ない土では、お日さまが照るたびに、すぐに干からびちまいますよ。」
しまふくろうが、「もっともだ。」と言いました。
たぬきは、ぷりぷり怒って、「そんなことは、もっと早くに言ってほしかったね!」と言いました。
たんぽぽは、「まさか岩地がこんなところだとは、夢にも思わなかったのですよ!」と言い返しました。
しまふくろうが、「どこかほかに、具合良さそうなくぼみはないのかね。」と、たぬきに聞きました。
「このくぼみだって、昨日やっと見つけたんだ。ほかのくぼみは、もっと浅くてもっと小さいのばっかりだよ。」
たぬきは、腕を組んで、すっかりふてくされて、近くの岩に座り込みました。
そして、「もう面白い見世物はないよ。君は帰ってもいいんだぜ。」
と、しまふくろうに言いました。
しまふくろうは、肩をすくめて、すこし離れた岩に歩いて行くと、そこに登って、これからたぬきがどうするのか見ていることにしました。
すると、見かねたたんぽぽが言いました。
「花壇をお作りなさいよ。あなたの座っている岩なんか、囲いに使うのにちょうどいいんです。私は、花壇のとても具合良いことを、町から飛んできた仲間の綿毛から聞いたんです。」
たぬきは、その花壇というものを、見たことがありませんでしたが、たんぽぽが「私だけを植えるくらいの小さな花壇なら、すぐにできますよ。」と言うので、ひとつ教わりながら作ってみる事にしました。
実際、作り方を聞いてみると、そこらにある岩を積み上げて、囲いを作るだけだったので、たぬきは大きい岩や小さい岩を拾って来ては、崩れないように一つずつ積み上げて、半時間くらいで、円い形の岩の囲いを作りました。
「その囲いに、土を入れて、私を植え付けるんですよ。」
たぬきは、たんぽぽに言われた通り、岩地を駆け下りて、丘のふもとの草地まで来ると、土を掘って手にすくい、また岩地に戻ってきて、岩の囲いの中に投げ込みました。でも、ほんの少ししか、土がたまらなかったので、たぬきはまた岩地を駆け下りて、丘のふもとの土をすくっては、岩地に戻ってきて、囲いの中に投げ入れる、という事を、三十三回も繰り返しました。

やっとのことで、岩の囲いが土でいっぱいになると、たんぽぽがたぬきに言いました。
「土運びが、こんなに大変だと知らなくて、ご苦労をおかけしてしまいました。大丈夫ですか?」
「あんたは岩地のことをよく知らなかったんだから、気にするなよ。さあ、植え付けるぞ。しまふくろうも、そばでごらん。」
たぬきは、近くでうろうろしていたしまふくろうも呼び寄せました。
花壇に植え付けられたタンポポは、ほっとしたように黄色い花をもたげて、たぬきを見上げました。そして、
「ああ、本当に良い具合です。ここなら、私もしっかり根を張れます。」と言いました。
しまふくろうが、「一本きりで、寂しかないかい。」と聞きました。
するとたぬきが、「大丈夫さ、僕は他にも花壇を作って、たんぽぽやすみれやれんげを植え付けるつもりなんだから。」と言いました。
「素敵です!この岩地が花でいっぱいになるんですね!」
たんぽぽはたいそう喜んで、花をしきりに左右に揺らしました。
たぬきは、すっかり花壇作りが好きになったので、それから毎日のように岩で囲いを作っては、丘のふもとからこつこつ土を運んで来て、岩地のあちこちに野の草花の花壇を作りました。
しまふくろうも、しょっちゅう遊びに来ては、途中できれいな花が咲いている場所を見つけると、それをたぬきに教えてあげたので、殺風景だった岩地は、今ではあらゆる花が咲き誇る、とても美しい場所になりました。
ある日、たぬきは最初に植え付けたたんぽぽのそばに座って、
「僕のすみかがこんなに美しい場所になったのは、みんなあんたのおかげだ。ありがとうよ。」と言いました。
たんぽぽは、
「きれいな仲間たちがたくさん咲く花壇を作ってもらえて、私も本当に嬉しいのです。ちょうちょやみつばちたちも毎日遊びに来てくれます。しまふくろうさんも、ここがどこより大好きになったそうですよ。」
と言いました。
たぬきは頭をかきながら、
「そいつが一番嬉しいな。」
と言って笑いました。
その時岩地を、ふもとからそよ風が吹き抜けました。
花壇のとりどりの花たちは、ほのかに光る波を描いて、春らしい甘い香りを、たぬきたちのいるそこらの岩地いちめんに、やさしくふくよかに満たしました。


おしまい



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新作童話 - たんぽぽ、たぬき、しまふくろう|Kobitoのお絵描きブログ