本日は、オリジナルの猫の童話、『マーサは釣り人』の第6話を書き進めてみたので、ご紹介します。
このお話は、今回で完結です。
子猫のマーサが、初めての釣りで、マスを釣ったところから、お話を再開します。

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「もっと釣るね!」
マーサはまた、ジローさんにえさを付けてもらって、さっきと同じように、竿を川の上に伸ばすと、糸をゆらゆら揺らしてから、丸い岩の近くにポチョンと落としました。
すると、すぐにまた、竿がブルブルふるえて、水の中に、糸がぐいぐい引っぱられはじめました。
ジローさんが、「放すなよ。」と言いながら、すぐに竿を支えて、マーサといっしょにゆっくり後ろに下がりました。
「ほう、またマスだ。」
水の中で、魚の影が、右へ左へ泳ぎながら、時々うろこをまぶしく光らせています。
「ほら、もう少しよ。がんばれがんばれ!」
夢中で竿を引っぱるマーサの体を、マリアが横から支えて応援しました。
やがて、水面にあらわれた中くらいのマスが、ふらふら岸に引き寄せられたので、ルネが駆け寄って両手でつかみました。
ジローさんが釣針を外したので、ルネはマーサと一緒に、そのマスをバケツまで運んで、水の中に入れました。
「まるで魚が釣られたがってるみたいだわ。やっぱりクロードのミミズが良いんだねえ。」
マリアがバケツをのぞき込む二人を見下ろしながら、笑って言いました。
マーサは得意そうに、「クロードのおかげよ!」と言いました。
それから、マーサは、みんなに手伝ってもらって、クロードが帰ってくるまで、わいわい楽しく釣りを続けました。
本当によく釣れたので、クロードが戻る頃には、バケツには、マスや小ブナが六匹も泳いでいました。
クロードは、何も持たずに、息を切らして走って来ると、魚でいっぱいのバケツをのぞき込んで、「えらく釣れたもんだなあ。」と言いました。「みんなマーサが釣ったんだよ。休む間もなく次々とね。」とマリアが言いました。マーサは「これが一番に釣られた、一番大きいお魚よ!」と言って、バケツのまん中で泳ぐ大きなマスを指さしました。クロードは、「良い型だな。」とうなずきました。マリアは、クロードがすこししょんぼりしているのに気が付いて、「悪いことしたねえ。クロードも釣りたかったんだろう。」と言いました。クロードは、肩をすくめて、「うん。だけど、たくさん釣れたからいいんです。」と答えました。
マーサが、「お土産よ!」と言って、ルネにマスの小さいのと中くらいのを三匹あげたので、ジローさんたちは「ありがとうよ。」と言って、バケツからつかみ上げると、マリアが持っていた手提げ袋に手早く入れました。三人がお別れを言って立ち去ろうとすると、マーサはまたルネのところへ駆けて行って、「ここはクロードの秘密の釣り場だから、秘密よ。」と言いました。ルネは、「うん。言わない。」と言って、ジローさんたちと一緒に小道を帰って行きました。
クロードとマーサはそれから、並んで川べりに座ると、バスケットを開いて、お弁当を食べる事にしました。
二人とも、たくさん体を動かして、すっかりお腹が空いていたので、何段も具をはさんだベーコンサンドを、大きな口を開けてどんどんほおばりましたし、お母さんが焼いた二人の大好きなビスケットも、数をきちんと分け合って、「とっておきのごちそうだね!」と言いながら、お互いの食べる様子を見つめ合って食べました。水筒の温かい紅茶は、一つのコップで、交代々々に飲みました。
お弁当をすっかり平らげてしまうと、クロードはナフキンをバスケットにしまいながら、マーサに言いました。
「さあ、帰るよ。忘れ物しないようにね。」
マーサが立ち上がって、
「バスケットとバケツ、私が持つね。」と言いました。でも、クロードは、
「バケツは魚が入ってるから、来た時よりすごく重いんだぞ。代わりに釣竿を一本持ちなよ。」と言いました。
マーサは釣竿を担いで、家まで歩いてみたかったので、喜んでそうすることにしました。
バスケットは、空になってとても軽かったので、マーサはそれを片手に提げたまま、釣竿をもう一方の手だけで肩に担ぐことが出来ました。
バケツと釣竿を持ったクロードと並んで歩きながら、マーサは自分がいよいよ、本当の釣り人になったんだな、と感じました。
そこで、
「一番大きいお魚、クロードにあげるね!」と言いました。
クロードは、
「いいの?」と聞きました。
「それ、うまそうなマスよ!」と、マーサが言いました。
クロードは、「じゃあ、三匹しかいないから、大きいマスは僕とマーサで、半分こにしような。」と言いました。
マーサは、「それが一番ね!」と言いました。
二人は、小川のせせらぎと、ちりばめられた柔らかな木洩れ日の中を歩いて、ジローさんのクルミ林を通り抜けました。そうして、小さな木橋を渡ると、土手の向こうに見えてきた、お母さんが待っている緑の切妻屋根の家まで、声を合わせて、カモメの歌を歌いながら意気揚々と帰って行きました。




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猫の童話 『マーサは釣り人』 第6話(完結)|Kobitoのお絵描きブログ