きょうは、オリジナルのファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第7章・第1話を書き進めてみます。

第6章では、サキが国境を越えるまでのいきさつを書きましたが、第7章では、少し時間を戻して、サキがテトの都を発った後の、王宮でのできごとをお話ししたいと思います。
挿絵は、次回のシーンの一部分を切り取ったものです。描かれているのは、フラトの王アモスです。


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フラトの王アモスは、このところ、同じ内容の夢を頻繁に見ることを気にかけていました。
それはいつも、暗い夜の、王宮の玉座に座った先王マテオと向き合うところから始まる夢でした。
マテオの深いしわが刻まれた顔は青白く、落ちくぼんだ眼窩(がんか)には漆黒の影が差していましたが、アモスには、マテオが生前と同じ険しいまなざしで、自分を見つめているのを感じ取ることが出来ました。
マテオは肘掛けにもたれた姿勢のまま、厳かにアモスに語りかけました。
「わが王国に、混沌と破滅が迫っておる。獲物は狩り手の付けた道筋をたどり、狩り手は獲物から逃れる術を知らない。」
「王国は栄えております。私はあなたの願い通り、この国を当代一の強国に発展させようとしているのです。」
アモスはひるまずに答えましたが、自分の声は闇の中で妙にうつろに響きました。
「その強国を治めるのはお前ではない。人外の力を持つ者たちである。」
マテオは王の証である短剣をさし出して、さらにこう言いました。
「妖(あやかし)との契約を断て。さもなければ、お前は王国もろとも破滅の坂を転げ落ちるだろう。」
アモスが短剣を受け取ると、マテオの姿はうっすらとぼやけて、間もなく、玉座に吸い込まれるように消えて行きました。
アモスはめまいのような疲労を覚えて玉座に座り込みました。
すると、玉座は朽木(くちき)のように崩れ去って、アモスは叫ぶこともできずに底の知れない闇にまっさかさまに落ちて行きました---。

定例の御前会議の日の朝、アモスは宰相のテクネから、魔法長官スナクフについての良からぬうわさを聞かされました。それは、スナクフが強い魔法力を得るために、悪魔と契約を交わし、人としての容姿を売り渡したのではないか、という内容でした。
「魔法技師長のワラスミが、都の外れの森で、異様に大きな鳥の羽根を採取しています。その羽根と、スナクフの毛髪を比較すると、帯びた魔法の性質が極めて似ているという事が分かったそうです。王のお許しがいただけるようであれば、今日の御前会議の場において、このうわさの真偽を、確かめさせていただきとう存じます。」
テクネはそばで誰かに聴かれることを恐れるように、アモスに身を寄せて小声で伝えました。


つづく


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ファンタジー小説『魔法使いサキの物語』第7章・第1話|Kobitoのお絵描きブログ