きょうは、オリジナルのナンセンス童話、『忘れかけていた物語』の第9話を、書き進めてみようと思います。

このお話は、これまで『私の物語』というタイトルを付けていましたが、林真理子さんの小説に同じ副題が用いられたので、今回からタイトルを変えてみることにしました。オリジナリティーのあるタイトルのほうが、楽しく書き進めることができますからね。

挿絵も、色塗りがすんでこれで完成です。今回新登場のキャラクターだけ濃い目の色を塗って、見る人の注目が集まるようにしてみました。
それでは、絵の下から、お話の続きをお楽しみ下さい♪


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 トンおじさんは、寄り目でフールを見ながら言いました。
「どんなに首根っこを長くして待っても、お前さんたちは戻ってこない。仕方なくわしはこう考えた。『“遠くの他人より、近くの自分”という言葉もある。幸いわしは頼りになるクスノキだから、大船に乗ったつもりで任せてみよう。』とな。そしたら・・・。」
「大船なんかに乗らなくたって、トンおじさんは水に浮かべるわよ。まがう事なきクスノキだもの。」
フールが口を挟んだので、グルがこぶしを振り上げながら、「だまってろったら、このおしゃべり!」と言いました。
フールが「黙っているって思ったより難しいのよ!」と言って、静かになったので、トンおじさんは、せき払いをしてから、またしゃべり出しました。
「そしたら、わしの頭で、なにやら話し声が聞こえるじゃないか。それも、ずいぶんたくさんの声だ。わしは耳を澄ませたね。すると、ある者がこう言った。『ずいぶん派手に詰まったもんだ。風通しが悪いったらないよ。』それに答えて、また誰かが言った。『日当たりも悪くなるぜ。いや、ここらがとこやみの森になってからは、どこに行ったって日当たりなんかありゃしないんだが。』すると、また別の誰かがしゃべった。『おまけにこの木はさっきまで、首根っこを地中に伸ばしてたんだよ。このまま頭を根っこにするつもりかしら。』『そんなことをされてはたまらん。みんなで力を合わせて押し出すんだ!』」
「わしはピンと来たね。しゃべっているのは、わしの頭の枝葉たちなんだ。だから、風通しが悪くなるだの、日当たりが悪くなるだの、頭を根っこにするだの心配してるんだ。だからわしはこう言ってやった。『そうさ、わしが穴から抜け出せないのは、お前たち自身の問題でもあるんだぞ。早く押し出さないと、わしはこのまま、腹ならぬ、幹をくくって逆さまに根付くぞ!』とな。」
「枝葉たちは、『なんてひねくれたクスノキだろう!』とか、『親木の顔が見てみたいよ!』とか、口々に悪態をついていたが、なあに元をたどればわしの枝葉なんだ、何の遠慮もすることはない。わしが木で鼻をくくった態度なもんだから、枝葉たちもぶつくさ言いながらわしをせっせと持ち上げ始めた。」
「ずいぶん難儀をしたようで、掛け声を合わせてえっちらおっちら押し上げていたが、さすがはわしの枝葉だけあって、この通り、とうとうすっかり、落とし穴から抜け出させてくれたというわけだ。」
さえはトンおじさんの頭を見上げながら、感心して言いました。
「トンおじさんの頭の枝葉は賢いのねえ。」
トンおじさんは、ほくほく笑いながら、
「良い枝葉を持って、わしは幸せ者だわい。」
と言いました。
すると、トンおじさんの頭から、「それはクスノキのかんちがい!」という声が聞こえました。
「かんちがいなものか、お前たちはわしの自慢の枝葉だわい。」
とトンおじさんが答えましたが、さえがトンおじさんの頭を指さして、「いいえ、枝葉じゃないのよ!赤い服の小人よ!」と言ったので、トンおじさんは、自分の頭を見ようと、幹をくねくね動かしてしきりに上を見上げました。
赤い服の小人は、ゆらゆら揺れるこずえの枝につかまって、愉快そうにこんな歌を歌いました。

「さかさまに、
植え付けられた、
ひねくれものの、
クスノキを、
力を合わせて、
押し出したのは、
穴底住まいの、
穴底人さ!」

リリィが拍手しながら、赤い服の小人に言いました。
「ピコ!私たち、あなたを探していたのよ。見つかって、良かったわ!」
「わしも、みんなを探していたから、一石二鳥だな!」
ピコはそう言うと、トンおじさんの幹をつたって、するすると下りてきました。


つづく


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ファンタジー小説『忘れかけていた物語』第9話|Kobitoのお絵描きブログ