きょうは、オリジナルのファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の第6章第3話を書き進めてみます。
挿絵は、今回からまた新たに描き始めました。
現在のサキは、こういう旅に適した服装で、髪型も、元は二本のおさげでしたが、今は後ろで一つに束ねてあります。


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前回までのあらすじ

フラトの西の国境で、出国許可証を持たないために足止めされていたサキですが、思わぬ事から、出国を許されることになりました。
魔法庁長官スナクフが、王の暗殺を企てたかどで失脚し、フラトに居る魔法使いはすべて、国外追放を命じられたという知らせが、国境警備団長のアムサラの元に届いたのです。
サキにとって、スナクフは師匠カン・ソクの消息を教えてくれた恩人であり、温厚で堅実な人柄も知っているだけに、王の暗殺を企てるなど、にわかには信じられませんでした。

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「スナクフ様がそんなことをなさるはずがないわ!」
サキは戸惑いながらかぶりを振りました。
「もちろん、あの方に限って王を裏切るようなことをなさるはずがない。魔法使いの地位向上を、快く思わない者の計略かもしれない。」
アムサラは、自分の馬の方に歩きながら、後ろをついてくるサキに言いました。
「ここへも、じきに王が差し向けた軍隊がやってくる。出国すれば、二度と戻れないと思え。」
「アムサラたちはどうするの?」
木に結んだ馬の綱を解いたアムサラに、サキが尋ねました。
「王のご気性から言って、布告が撤回されることはない。私たちも、フラトを去る他ない。」
アムサラは、つらそうに口を結ぶと、「さあ、これに乗れ。私はあの馬に乗って行く。」と、灰色の裸馬をあごで示しました。
サキは言うとおりにアムサラの馬にまたがると、裸馬に乗ったアムサラと並んで、検問所へ向けて馬を駆けさせました。
しばらく行くと、検問所の方から馬に乗った二人の国境警備団員が近づいてきました。
一人はカイザールという浅黒い禿頭の男で、アムサラがもっとも信頼している補佐役でした。
「都から早馬が来たようだが。」
アムサラたちと合流したところで、カイザールが尋ねました。
そこで、アムサラはサキに話した通り、都で起こった政変をカイザールたちに伝えました。
そして、「この女を検問所から出国させてくれ。私の馬はこの女に与える。国境警備団西部方面師団は、本日をもって解散する。カリムはこのことを北の各詰所の団員に知らせてくれ。カイザール、すまんが君の馬を私にくれ。私はこれよりクジャトに向かわせてもらう。」
カリムと呼ばれた部下は、すぐさま馬を駆けさせて北へ向かいました。カイザールは、黒馬から降りて、裸馬から下馬したアムサラと馬を交換しました。
黒馬にまたがったアムサラは、「お元気で。」と言うカイザールと握手を交わすと、サキに、「君ははるか遠くにいる馬に気が付き、その姿を見分けることができた。無意識に魔法を使ったのだ。カン・ソク様の弟子だという言葉を、私は疑っていたが、どうやら人を見る目がないのは私の方だったようだ。」と言いました。
そして、「諸君の幸運を祈る!」と言い置くと、馬首を返してテトの方角へ駆けて行きました。
サキはその後ろ姿に、「お気をつけて。ありがとう!」と呼びかけました。
アムサラは振り返らずに遠ざかり、サキたちは彼をゆっくり見送る暇もなく、検問所の方へ馬を走らせました。
検問所は、石灰岩の白壁と大きな丸屋根の、寺院を思わせる堅牢そうな建物でした。
カイザールはサキと共に建物に入ると、部屋にいた二人の団員と、二階の見張り台に上っていた団員を呼び寄せて、都の政変について伝え、南方の検問所への伝令を一人に命じてから、こう言いました。
「これから家に戻る場合は、軍や市民による魔法使い狩りを警戒するように。この国にはもはや我々が安住できる場所など、どこにもないと思え。」
団員たちはカイザールと握手して、別れの言葉を交わすと、足早に部屋から出て、馬を駆ってそれぞれの目的地に去って行きました。
カイザールは、書類棚から分厚い帳面を取り出すと、
「国境警備団員としての最後の仕事だ。」と言って、机に着き、サキの身元を聴き取りながら、書面にその内容を書き写していきました。
聴き取りの途中で、サキが尋ねました。
「アムサラも家族のところへ行ったの?」
「クジャトには彼の女がいる。彼が魔法使いであることを理由に、両親が結婚を許さなかった女だ。アムサラは、その娘がまだ自分を待っていると思っているのだろう。」
カイザールが手を止めずに答えたので、サキはさらに尋ねました。
「あなたも家に帰るの?」
「いや、俺に迎えに行く家族はない。ヘルムードで魔法使い狩りに遭って以来、ずっと一人きりだ。」
サキは自分が、魔法使い狩りについて何も知らない事が、とても情けなくなりました。トミーの言うとおり、自分は魔法使いとして、あまりにも世間知らずなのだと、やっと分かったのです。
国境警備団の人々や、スナクフを含む魔法庁に勤める魔法使いたちの事、そして、この国で暮らす全ての魔法使いたちの行く末がどうなってしまうのか、サキには心配で仕方がありませんでした。

つづく




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ファンタジー小説『魔法使いサキの物語』第6章・第3話|Kobitoのお絵描きブログ