今日は、オリジナルのファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第6章第1話を、書き進めてみようと思います。
挿絵は、前回紹介した下絵に、ペン入れをした線画の状態です。


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これからさらに、色塗りを進めて行く予定です。衣装の色で、雰囲気がずいぶん変わりそうなので、配色を決めるのが難しい分、仕上がりが楽しみな絵でもあります。

では、今回は、彼が登場する、西の国境でのサキの様子について、お話しします。

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「おい、君。」
ミレの大木の下から、こずえを見上げて、若い男が言いました。
ここは、フラトの西の端、ワナイとの国境沿いに広がる、見通しのいい荒野です。
男は、仕立てのいい柿色の軍服を着て、腰には立派な長剣を差しています。
彼は、名前をアムサラといって、フラトの国境警備団の西部方面師団の団長を、四年前から任されている、まだ二十代半ばにも満たない青年でした。
彼の見上げる、こずえのてっぺんの太い横枝には、女が立って、ワナイ方面の荒野を見渡していました。
女は、アムサラの呼びかけに気がついて、彼の方を見下ろしました。それは、白いブラウスを腕まくりして、黒い乗馬ズボンを身に着けた、男のようななりの、サキでした。
「あら、魔法磁界に触れたのかしら。」
サキはハッとして、ズボンのポケットに手を当てました。
アムサラは、
「関所から、君が木登りしているのが見えたから、注意しに来たのさ。」
魔法磁界というのは、国境にそって立てられた魔法力のある鉱石が生み出す、境界線のことです。魔法庁の出入国許可証を持たずに、魔法使いが魔法磁界を越えると、国境警備団の屯所(とんしょ)や検問所に設置された鈴が鳴って、すぐに国境警備団員が駆け付けます。
それから、魔法磁界には、魔道具の効能を失わせる力も備わっているので、魔道具を持ち込んだり、持ち出したりする際は、必ず検問所を通さなければなりません。
「木に登ったくらいでは、魔法磁界は越えられないさ。ほうきで空を飛べば越えられるかもな。」
ほうきで空を飛ぶ、というのは、魔法使いの間で交わされる冗談です。到底できそうもない、という意味です。
「木に登るくらい、自由でしょう。」サキが不平そうに言いました。
「不法な出入国者を手引きしているかもしれないからな。それに、これ以上警備の邪魔をするなら、ひっ捕らえてテトに送還しなくてはならない。」
「お願いよ。どうしても国境を越えたいの。」
サキは、ポケットを握りしめながら言いました。
「もし、長官様が本当に君と面会して、魔道具を所持していることを知りながら、出国許可証を発行しなかったのなら、それは、君をフラトから出国させるな、という意思表示だと私は思うがね。」
「スナクフ様は、『“彼”無しでは、あなたがナップまで無事にたどり着くことは不可能でしょう。』とおっしゃったわ。そして、『国境に行けば、あなたは出国許可証無しで検問所を通ることができる。』、ともおっしゃったのよ。だから、“彼”もいっしょに、問題なく関所を通って出国できるはずだわ。」
サキはこう反論しようとしましたが、左手の中指が締め付けられるように痛んだので、あわてて口をつぐみました。そこには、スナクフが魔法で作った、見えない契約の指輪がはめられていました。
「それに、その、カン・ソク様だという師匠は、もう君を待っていないかも知れない。」
「待っていなくても、私行くわ。」
サキは唇を噛んで、、またワナイの荒野に目を向けました。
「とにかく下りてきなさい。君をいつまでも特別扱いすることはできないんだ。」
アムサラが強い口調で言ったので、サキは、これ以上頑張るのをやめてこずえから下りはじめました。


つづく


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ファンタジー小説『魔法使いサキの物語』第6章・第1話|Kobitoのお絵描きブログ