今日は、オリジナルのファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第5章・第1話を、書き進めてみようと思います。
第4章では、サキの後を追う魔法庁の新米役人、ダンケルとマイネの様子をお話ししましたが、第5章では、同じころ、極北の地ナップでどんなことが起きていたかを、お話ししようと思います。

挿絵は、今回のために新しく描いた完成品です。
白い影によってナップに飛ばされ大けがを負ったカン・ソク先生と、彼を助けた先住民のフキが描かれています。
カン・ソク先生は、この物語のもう一人の主人公ですが、まだ顔が分かる絵を描いたことはありません。(この絵でも、ベッドに横たわった後ろ姿で描いてあります。)

先生の顔立ちは、彼の言葉や行動を基に、推測するしかありません。


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カン・ソクの容体は、救助されてから二週間が経っても、思わしくない状態が続いていました。
足の骨折と凍傷に加えて、体力と、何より精神力を大きく失っていたからです。
精神力が消耗したのは、吹雪の中で、暖を取るために用いた難しい魔法が原因でした。
この二週間、吹雪は絶え間なく猛(たけ)り続け、チェロやフキも、医者を連れて来ることはおろか、小屋から出る事さえできなかったので、カン・ソクの治療は、ありあわせの薬草で続ける事になりました。
「今の時期は、長い吹雪が続くものだけれど、これほどひどいのは、あなたが以前、ここへ来た時以来だ。」
フキは、カン・ソクが長い眠りから目を覚ますと、こんなことを言いました。
「あなたはやはり、同じように床に臥せって、私たちに遠い国々のことや、魔法にまつわる珍しい話をしてくれた。」
カン・ソクは、かすれた声で、
「そうだったなぁ。君たちはまだほんの小さな子供だった。いつも二人で、私の寝ているベッドのそばに腰を下ろして、私が話し始めるのをおとなしく待っていた。」
と感慨深そうに言いました。
「色の違ういくつかの火花を小瓶に詰めて、私たちに見せてくれた。あれをまた、やってほしい。」
フキに言われて、カン・ソクはうなずきながら、
「君たちは、あれが好きだったね。元気になったら、また見せてあげよう。」
と答えました。
そして、
「ダジーやおばあさんはどうしたの。」
と、聞きました。
「父は、居ない。あなたがここを去ったあとしばらくして、どこかへ行ったきり帰ってこない。」
「おばあさんは?」
フキは、頭を横に振りました。
「では、今は君たちだけで暮らしているのか。」
「チェロは狩りも木こりもできる。誰からも教わらずに、自分で覚えた。」
カン・ソクは、この厳しい環境の中で、年老いた女性と、五歳程度の子供たちだけで、生き延びたという事が、奇跡のように思えました。
「チェロは大人と同じように働いたの?」
「そう、チェロは小さな大人のように働いた。何もかも、すっかり分かっていたからね。」
フキは、当然のように言いました。
カン・ソクはまだ聞きたいことがたくさんあったのですが、今にも目が回りそうなほど疲れてきたので、「少し休むよ。」と言って、目をつむって深く息を吐きました。
フキは、カン・ソクの具合が悪そうだったので、それ以上話しかけずに、見守っていることにしました。


つづく


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ファンタジー小説『魔法使いサキの物語』第5章・第1話|Kobitoのお絵描きブログ