今日は、制作中のファンタジー、『魔法使いサキの物語3』の、第11話を、書き進めてみようと思います。
挿絵も描き上がったので、どうぞご覧下さい。


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今回の色塗りは、大まかに、童話風に塗る、という感じにしてみました。この人は、まだ物語に登場していませんが、とても優しい人です。そして、不思議な陰を持った人でもあります。そういう雰囲気が、見た人に伝わると良いなぁ、と思っています。
それでは、お話の続きをご覧下さいーーー。


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衛視は、先日の朝の若い男でしたが、サキが歩み寄ると、手で制しながら、迷惑そうに言いました。
「だめだだめだ、仕事の邪魔をするんじゃない。」
そこで、サキは紙片を開いて、示しながら言いました。
「魔法庁の紹介状です。”上がっていらっしゃい。”と、書いてあるんです。」
衛視は、紙片を受け取って、しばらく調べていましたが、サキの顔をあらためると、手のひらでさっと紙片の表を払って、サキに返しながら、
「奥の大階段を上りなさい。」
と言いました。
ふと見ると、紙片に押された文字が、赤から青に変わっていたので、サキは驚いて衛視を見ました。でも、彼はもう、われ関せずといった風で、まっすぐ立って通りを見つめているだけでした。
サキは両開きの大きな扉を開いて、魔法庁の建物に入りました。吹きぬけの明るい玄関広間には、行き交う人こそ多かったものの、石敷きの床に響く靴音の他は、いたって静かでした。サキは、彼らがみんな魔法使いなのかと思って、広間のまん中まで来ると、用心しながらそれぞれの表情をうかがいました。
「君!」
急に声を掛けられて、サキがギクッとしてふり返ると、茶色いチョッキを来た、髪の乱れた男が、サキの足元を、不機嫌そうに指さしていました。
サキが片足をあげると、床には、黒いタールのようなかたまりが、扁平になって張り付いていました。
「ごめんなさい、私・・・。」
サキは、しどろもどろに謝りました。彼は構わずに、かたまりを拾い上げると、目の高さまでかざして、中にちらちら燃えている、水色の光を確かめてから、
「加える圧力の加減が大切なんだ・・・。」
とつぶやくと、それを大事そうにガラス箱にしまって、そそくさと、広間の端の部屋まで歩いて行きました。
サキは、胸をなでおろすと、今度は足元に気をつけながら、広間の奥にある幅の広い階段を、役人たちに交じってのぼって行きました。

階を上がるに従って、人通りは少なくなって、最上階の廊下に着くころには、サキのほか誰もいなくなりました。
街並みを見渡せる窓のある、赤いじゅうたんを敷きつめた長い廊下を歩いて、突き当たりの、扉の前で、サキは立ち止まりました。そこで躊躇していると、「お入りなさい。」という声が聞こえたので、サキはおずおず扉を開けて、部屋の中に入りました。
大きなテーブルに、分厚い本と、数枚の図面が広げてありました。図面の上には、小さな機械の、骨組みらしきものが置かれて、組み込まれたガラス玉が、窓からの明かりを通して、中の黄色い液体を光らせていました。
窓際の安楽椅子に、一人の女性が腰かけていました。白髪を短く整えた、穏やかな顔立ちの老人でした。細かな刺繍入りの、ゆったりした苔色の服と、黄はだ色の膨らんだズボンを身につけて、ひざには一通の手紙を持っていました。
「ここに上がって来る間、誰かに話しかけられましたか?」
婦人に尋ねられて、サキはちょっと考えてから、
「茶色いチョッキを着た男の人に・・・。」
と答えました。
「そう・・・。」
婦人は、うつむいて、考え事をしていましたが、「ごめんなさい。こちらに来て、お座りなさい。」と言って、手近な椅子を、手招きして、自分の正面まで移動させました。
サキは、椅子に腰かけると、深い泉のような色の、婦人の瞳に見入りながら、おずおずと尋ねました。
「スナクフ様でいらっしゃいますか?」
「そうです。あなたは、何とおっしゃるの?」
スナクフは、微笑みながら、やっぱり、サキの青空のような美しい瞳を見つめ返しました。
「私は、サキと申します。ビレジ村から参りました。スナクフ様に、どうしてもお願いしたい事があるのです。」
スナクフは、うなずくと、手紙をサキに見せながら、言いました。
「その前に、いくつか質問があります。あなたは、この手紙を、鷲の脚に結びつける時、鷲の目に、何か薬をかけましたね?」
サキは恐縮しました。
「すみません。カマクビソウの煮汁です。水で洗えば、しびれは治まります。」
「そう、鷲が、あなたを襲ったのね?」
「はい。でも、私がいけなかったのです。スナクフ様に、どうしても、お手紙をお届けしたくて・・・。」
スナクフは、手のひらの上で、手紙を蝶のように羽ばたかせながら言いました。
「私のように、鳩を使えば良かったのに。」
サキは頭を横に振りました。
「紹介状がないと、お手紙を出してはいけない、という規則だとうかがったので、できるだけ、人目につかない方法で、お渡ししたかったのです。鷲を飼っていることは、他の方に隠しておられるようだったので、手紙を託すのに、ちょうど良いと思いました。」
スナクフは口元を手で押さえて、ふふっと笑いました。
「そうですね。でも、鷲が私のものだという確証はなかったのでしょう?」
「他者の気配を消す魔法は、大変難しいものだと、先生から教わっていたので・・・。」
スナクフは、不思議そうに聞きました。
「あなたには、鷲が見えていたのではないの?」
サキは、何とも言いようがなくなって、口ごもりました。
スナクフも、ふっと寂しい顔つきになって、しばらく窓の外を眺めました。


つづく


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【ファンタジー小説】 魔法使いサキの物語 第3章・第11話|Kobitoのお絵描きブログ