制作を進めていた「魔法使いサキ」のイラストが完成したので公開します。スカートと帽子の色で最後まで悩みましたが、青味のあるグレーという色合いで落ち着きました。
今回も、この絵にまつわるストーリーを書いてみましたが、内容はとても悲しいものになりました。それは、サキの親友、ジャックについて話さなければならなかったからです。
これまでで一番長いお話になりましたが、もし、サキを好きになってくれた方がいるとすれば、ぜひ最後まで読んで、彼女の事をより深く知ってもらいたいなと思います☆

魔法使い完成 - コピー正視化やや縮小



ジャックというのは、帽子に宿った霊魂の名前です。(ただし、この絵でサキがかぶっている帽子は、ジャックではありません。)
罪を犯して死んだ人が、成仏できずに帽子に宿った姿だと言われています。ジャックはもともと、サキのお母さんの帽子でした。お母さんが亡くなったので、ジャックはサキの帽子になりました。魔法使いは、この帽子を弟子に授ける事で、自分の後継者にする、という習わしが古くからあります。サキは知らないうちに、お母さんの跡継ぎとして、魔法使いになる道を選んだという事です。

ジャックは、自分が生きていた頃の事を、全く覚えていませんでした。もう何十年も帽子の中にいて、すっかり帽子の気持ちになっていたからです。ジャックは言葉が話せるので、サキとは赤ん坊のころからの仲良しでした。サキの両親が亡くなってからは、ジャックはいっそう、サキを守ってやろうという気持ちを強くして、この心やさしい女の子が立派な魔法使いになれるように、励ましたり、アドバイスを与えたりして、一緒になって魔法の習得に励みました。

カン・ソク先生が来て、サキを教え始めると、サキは次々と新しい魔法を覚えました。サキは魔法の勉強が大好きでしたし、カン・ソク先生の教え方も、ユニークですが大変上手だったからです。

正式な魔法使いになるためには、三つの試験に合格しなければなりません。『水を御(ぎょ)する試験』と、『火を御する試験』、それに、『雷を御する試験』です。
水を御する試験は、おばあさんが生きていた頃に合格していたので、サキの次の目標は、『火を御する試験』に合格する事でした。

サキは十七歳のとき、この試験を受けたいとカン・ソク先生に申し出ました。本来は、二十歳になった時に受ける試験なので、カン・ソク先生は早すぎるのではないかと思いましたが、サキはすでに、基礎的な魔法を使いこなすまでになっていましたし、カン・ソク先生も、サキの努力と才能には一目を置くようになっていたので、十分な練習を積んでから、という条件で、試験の前倒しを許可する事にしました。ジャックは、サキの身を案じて、最初は反対していましたが、サキが一生懸命練習する様子を見て、絶対に合格できるように、自分は力を貸さなければいけない、と思うようになりました。

試験の日、サキとカン・ソク先生は、村のはずれにある古い砦(とりで)跡に出かけました。この砦は、建物はほとんど壊れていましたが、敷地に石造りの大きな地下室が残っていて、火を御する試験を行うには、ちょうど良い場所でした。

カン・ソク先生は、地下室に降りると、前日に書いておいた床の魔法陣を示して、サキに真ん中に立つように指示しました。魔法陣に沿って、カン・ソク先生は油をまき、手早く火を付けました。

魔法陣の力で威力を増した炎が、サキの周囲を赤々と壁のように取り囲みました。この炎の壁を操って、やけどを負うことなく、自分の頭上まで炎で覆ってしまう、というのが、『火を御する試験』の内容でした。

サキは思った以上の炎の迫力に驚いて、戸惑いながらも、自分を覆い隠せるだけの大きさになるように、魔法陣の周りの炎を少しずつ高めていきました。
炎はなかなかサキの思い通りにならず、いびつに形を変えながら、次第に勢いだけを増して行きました。

サキは必死の思いで魔法を操り、ついに頭上を炎で覆い尽くすまでに至りました。高々と天井まで噴きあがった炎が最後の抵抗を見せて激しく暴れまわります。その時、地下室の入り口の扉が開いて、サキと親しい村の子どもが顔をのぞかせました。サキが試験を受ける事を知っていたこの子供は、どうしてもその様子が見たくなって、村から二人を、こっそり尾けて来ていたのです。
天井に噴き上がった炎は、新鮮な空気を求めて、一斉に入口の方へ押し寄せました。
サキはそれを見て、炎を抑え込んでいた自分の魔法を解きました。炎は威力を弱める代わりに、サキの体に燃え移りました。サキは悲鳴を上げてその場に倒れ込みました。ジャックはサキに襲いかかる炎を少しでも和らげようと、口を広げてありったけの熱風を吸い込みました・・・。

カン・ソク先生は、炎の壁を破ってサキを魔法陣から引きずり出しました。カン・ソク先生もひどいやけどを負いましたが、それどころではありません。サキは命も危ないほどの大やけどを負っていたのです。


三日ほどして、サキは目を覚ましました。ベッドの上で、全身を包帯に巻かれて、横たえられていました。
カン・ソク先生が、そっとサキを覗きこみ、「何があったか、覚えているかい?」と尋ねました。サキはかすかにうなづいて、かすれた声で、こう尋ねました。
「・・・ジャックは?」
先生は、少し躊躇した後で、首を横に振りました。
サキは、大声を上げて泣き出しました。
カン・ソク先生も、泣きました。
ジャックは、二人にとって、かけがえのない親友だったのです・・・。


数日後、カン・ソク先生は、しょんぼりしたサキを慰めようと、ひとつの贈り物をする事にしました。旅行かばんから、カン・ソク先生が取りだしたのは、星の模様が彫られた小箱、そう、カン・ソク先生が子供の頃、師匠のおばあさんから盗もうとした、あの可愛らしい小箱でした。
カン・ソク先生が、慎重にふたを開けると、中から飛び出したのは、ジャックにそっくりな、魔法使いが被るとんがり帽子でした。その帽子が、飛び出したとたん叫んだ言葉は、
「殺してやる!」
でした。
トミーという名前のその帽子は、カン・ソク先生がおばあさんから破門されて、家を出る時に、おばあさんから譲り受けたものでした。
カン・ソク先生は、長い旅の途中、この帽子を、ある土地の領主に売ってしまった事がありました。カン・ソク先生が惚れた商人の娘が、父の借金を返すために必要だという大金を、工面するためにやってしまった事です。しかし、結局この娘は詐欺師の仲間で、お金を持って逃げてしまったので、カン・ソク先生は魔法の力で何とかお金を取り戻すと、領主から危く王様に献上されそうになっていたトミーを、寸での所で買い戻した、という経緯がありました。

トミーはそのことで、カン・ソク先生をとても憎んでいたので、カン・ソク先生も復讐が怖くなって、箱の中に閉じ込めたまま、何年も出さないという状態を続けていたのです。

咬みつこうとするトミーをつかんで、カン・ソク先生はサキの所まで連れて行きました。トミーは包帯に巻かれたサキを見ると、急におとなしくなって、「お譲さん、そりゃあ・・・どうしたんだね?」と尋ねました。

カン・ソク先生は、火を御する試験が失敗した事と、ジャックが燃えてしまった事をトミーに話し、これからサキの帽子になる気はないかと持ちかけました。
トミーは、サキとしばらく見つめ合っていましたが、おもむろにこう言いました。
「俺は、ジャックの代わりにはなれねえが、お譲さんの話し相手くらいにはなれるよ。」

サキはトミーの親切をありがたく思い、自分の友達になってくれるように頼みました。それで、トミーはその日から、大嫌いなカン・ソク先生と別れて、サキの帽子になりました。

サキのやけどは、日に日に良くなっていきました。カン・ソク先生の作る膏薬と、手厚い看護のおかげでした。サキは時々、深い悲しみに苦しむ事がありましたが、トミーがカン・ソク先生との旅の話や、おばあさんとの思い出話をしてくれたので、次第に心も元気になって行きました。

二年後、サキは、体にやけどの跡が残ったものの、すっかり元気になっていました。サキは、燃やしてしまったジャックのためにも、高い能力を備えた、正式な魔法使いになりたいと、切に願うようになっていました。しかし、カン・ソク先生は、サキが火に対して、強い恐怖心を持つようになった事を知っていました。そこで、カン・ソク先生は、火を御する試験を後回しにして、雷を御する試験を先に取り組ませることに決めました。この試験は、三つの試験の中でも、特に難しいのですが、カン・ソク先生は、あえて難しい試験に挑ませる事で、サキにやる気と自信を取り戻させたいと考えていたのです。

雷を御する試験とは、落雷のエネルギーを地面から吸収し、それを魔法で操って、手元に思い通りの幻影を生み出す、という内容でした。
サキは一年がかりで、雷雲から雷を招く魔法や、電気を体に蓄積する魔法、蓄えた電気を自在に加工する魔法などを学びました。

試験の日、カン・ソク先生は、二十歳になったサキに、絹の手袋と、魔法に使う道具の入った金のベルトを贈りました。そして、この試験に合格すれば、サキを見習いではなく、正式な魔法使いとして認める、という事を伝えました。
サキはカン・ソク先生の配慮に心から感謝し、ジャックや先生の恩に報いるためにも、必ず試験に合格して、正式な魔法使いになってみせる、と固く誓ったのでした。

試験は、サキの家で執り行われることになりました。カン・ソク先生は、窓の外を見て、雷雲が空を満たしているのを確かめると、サキに魔法を唱えるように命じました。

サキが両手をかかげて、呪文を唱え始めると、低くとどろく雷鳴が、次第に遠くから近づいてきて、間もなく激しい閃光と共に、稲妻が、二人のいる家の屋根を目がけてほとばしりました。
サキの体が紫色に発光して、指先から、細かな火花と一緒に、白いもやのようなものが立ち昇りました。そのもやは、サキの手のひらの上で次第に形を整えて、いつしか黒い翼のある、可愛らしい竜の子どもの姿になって定まりました。その発光する竜の子どもは、サキの手のひらの上でひとしきり飛び回っていましたが、やがてゆっくりと、向かいに座るカン・ソク先生の方へ羽ばたいて行きました。カン・ソク先生は竜を優しく手の平で受け止めると、そっと息を吹きかけて、体を赤い色に染めてから、またサキの方へ飛ばしてやりました。

サキの手に戻った竜は、そのまま胸の中に沁み込んで、サキを包んでいた紫色の淡い光も、それと一緒に少しずつ輝きを失って行きました。

光が完全に消えてしまうと、サキは力が抜けたようにふらついて倒れそうになりました。カン・ソク先生はすぐにサキを支えて、嬉しさのあまり彼女を抱きしめながら叫びました。
「おめでとう!君は今日から正式な魔法使いだ!」
サキはうれし涙を流して、カン・ソク先生といつまでも抱き合っていました・・・。


・・・これ以上書くと、ペンの置きどころがなくなるので、ここでひとまず終わりにしたいと思います。><
また、サキ達のイラストを描く機会があれば、物語の続きを書いてみたいと思います。

長い長い文章でしたが、最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました☆

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魔法使いサキの物語 第1章・第4話 「見習いを修了した魔法使い」 完成|Kobitoのお絵描きブログ