こんばんは。
今日は、制作中のファンタジー、『魔法使いサキの物語』のお話の続きを、書き進めてみようと思います。
前回、駅馬車を乗り継いで、フラトの都テトに到着したサキですが、帽子のトミーの話では、尋ね人の消息を知る秘術を会得した魔法使い、スナクフと会うためには、まだまだ、乗り越えなければいけない壁がいくつもあるようです。


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挿絵は、アクリル絵の具で塗る前に、色鉛筆で当たりを付けた状態です。色を塗ると、長身の男の、大きさが際立つような気がしました。ただ、二人とも、顔つきからすると、そんなに意地が悪いようでもなさそうなので、案外、先々サキのことを、助けてくれる存在になるかもしれません。^^
では、これから、彼らと、サキにまつわるエピソードをお話ししたいと思います------。


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サキは、広場の石段に腰かけて、ぼんやりカン・ソクのことを考えていました。あの、奇妙な白い影に襲われたとき、自分にもっと力があったら、もっと上手く、逃げ出せていたら、カン・ソクに、迷惑をかけることなどなかったのだと、これまで、繰り返し考えてきたことを、また、思っていました。
帽子のジャックを燃やしてしまった時のように、カン・ソクを死なせてしまったら・・・サキは、そのことを考えると、手足が震えてしまうほど、不安で不安で、仕方がありませんでした。
あんまりもの思いにふけり過ぎて、サキは、石段の上から、一人の少年が、足早に降りてきた事に、気がつきませんでした。
その少年は、当たり前のように、サキの旅行鞄をつかむと、ついっと向きを変えて、また石段を駆け上って行きました。
帽子のトミーが、それに気がついて、
「泥棒!」
と叫んだので、サキもようやく振り向きましたが、少年はもう石段を登りきって、通りの向こうへ、走り去る靴音だけを響かせていました。
サキは慌てて、石段を駆けあがると、広い通りを行き交うたくさんの人々の中から、鞄を抱えて街角を曲がろうとする少年の姿を見つけました。
「靴音を追うんだ!早く!」
トミーに言われて、サキは低く呪文を唱え始めました。その魔法は、ある音を大きく、他の音は小さく聞くことができるようになるものでした。
呪文を唱え終えると、すぐに通りの雑踏は静まって、少年の靴音だけが、サキの耳にはっきりと届くようになりました。サキはトミーの小箱を開いたまま、通りを渡って、少年の後を一心に追いはじめました。

商店の並ぶ大通りを通って、靴音は徐々に、人通りの少ない路地の方へ入って行くようでした。やがて少年が、駆けるのをやめて、歩きはじめたので、サキは新たに呪文を唱えて、自分の靴音を消しながら、やっぱり駆け足で相手の靴音に近付いて行きました。
木樽を積んだ家の角を曲がったところで、不意に少年の後ろ姿を見つけたサキは、思わず、
「泥棒!」
と叫びました。
少年は、ギクッとすると、鞄を抱え直して、振り向きもしないでまた走りはじめました。
「何やってるんだ。縄でくくるんだよ!」
トミーがあきれて叫びました。サキは、息も荒く走り出しながら、
「縄、鞄の中だもの!」と言いました。
「今、唱えるんだよ!鞄に!」
それで、サキは魔法を唱えましたが、疲れているのと、走りながらなので、呪文がつっかえて、なかなか上手く言えませんでした。
そうこうするうちに、少年は、どんどん遠ざかって、やがて、赤く塗られた大きな石の門をくぐって、電気の塔を見上げる、住宅街の裏道の方へ駆け込んでしまいました。
サキも、やっとのことで、その門をくぐって裏道に出ましたが、そこで、奇妙な光景を目にして、ハッと足を止めました。
浅黄色の巻き毛の、眼鏡をかけた小柄な青年が、路地の真ん中に立って、きれいな音色で、横笛を吹いていました。その、愉快な旋律に乗せられて、少年は、鞄を抱えたまま、滑稽な恰好で踊らされていました。
鷲鼻で、腕っ節の強そうな大男が、少年の横で、腕組みしながら、笑って言いました。
「上手いじゃないか。そうやって、踊りながら、憲兵の所まで行進するんだぞ。」
サキは、ようやく、この二人が、泥棒を捕まえてくれたのだと分かって、両手をひざに付くと、すっかり息も切れ切れになりながら、「ありがとうございます!」とお礼を言いました。

つづく

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この記事へのコメント:
浅黄色の巻き毛の、眼鏡をかけた小柄な青年の笛の意味がようやくわかりました

どんな音色だったのでしょうね
2013/01/23(水) 23:05 | URL | 湖の麓より #-[ 編集]
麓さん、
そう、私も、絵を描いたときは、笛の意味が分からなかったんです。^^
でも、お話を書く段になって、自然と使用方法がひらめきました。
お話を書いていると、時々こういう不思議な事があります。

音色は、澄んでいて、優しい響きだと思います。祭囃子の、笛の音を、丸くしたような音です。~♪
2013/01/24(木) 00:26 | URL | Kobito #-[ 編集]
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【ファンタジー小説】 魔法使いサキの物語 第3章・第2話|Kobitoのお絵描きブログ