制作を進めていた童話、「小さな幸せ」の、4枚目の挿絵が完成したので公開します。
お話も、今回で完結するので、良かったら絵と一緒にお楽しみ下さい。私のお話は、未完のものが多いので、エンディングにたどり着けたことが、何よりも嬉しいです。^^(「小さな幸せ」は、完成までに8カ月もかかりました。)
なお、挿絵は、一つ前の場面なので、今回のシーンとは結びつきません。初めて読む方は、どんなことがあったかを、想像しながら読んでもらえると嬉しいです☆


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お腹一杯になったジョーとトニは、横穴を後にして、さっきの、薄い光が一条差し込む、大きなほらの底に出て来ました。トニは、ほらの入口に、さっきの青い光が見えないので、「おかしいなあ。」と言いながら、目を手で隠したり、手を離して目を細めながら、入口を見あげました。
ジョーが、「何がおかしいの。」と聞いたので、トニは、
「目にね、赤いお日様が入っていたの。でも、見たのは青いお日様だったの。」と答えました。
ジョーはぶら下がったクモの糸をつかまえながら、「僕もそんなの、見た気がするよ。あれ、お日様の思い出なんだよ。」と言いました。
それで、トニも安心して、ジョーよりも先に、クモの糸を登り始めました。
ほらの入口では、帽子を握ったムラサキシジミが、何かブツブツ言いながら、歩きまわっていました。
ジョーとトニは、クモの糸を登りきると、ムラサキシジミに駆け寄って、息を切らせて笑いながら、「ただいま。」と言いました。
ムラサキシジミは、最初、ぽかんと口を開けていましたが、次第に笑顔になって、今度は、触覚をつり上げると、
「お前たちは、こんなに長いこと返事もしないで!」
とわめきました。
ジョーとトニはびっくりして、口々に小さな声で、
「ごめんね。」
と言いました。
ムラサキシジミは、鼻を鳴らして、帽子をかぶり直すと、
「うん、それで、幸せはたくさんあったのかね。」
と尋ねました。
トニは、両腕で抱えるしぐさをしながら、
「あきれるくらいあったよ。」
と真面目な顔で言いました。
ムラサキシジミはふふんと笑いました。
「そうだろう。あれはね、掃除穴。」
「そうじあな?」
「そう、リスたちが野原をかけ回ると、毛にたくさんの草の種が付くだろう。それを掃き入れる掃除穴。」
トニはそれを聞いて、「じゃあ、これから掃除穴の掃除ね。」と言ったので、ジョーは「大掃除だ!」と言って笑いました。
ムラサキシジミはうなづいて、笑いながらコートの襟をかき合わせると、
「さあ、私は行くけれど、お前たちは、自分で家まで帰れるかい。」
と聞きました。
「この土手たどって行くよ。」
ジョーが土手を指さしたので、ムラサキシジミは満足そうに、
「うん、じゃ、元気でやるんだよ。さよなら。」
と言いました。
「さよなら。」
ムラサキシジミは、その返事を聞くや否や、もうパッと飛び立って、青空のずっと高い所まで、木の葉のように舞い上がって行きました。
トニは、あごに指を当てて、その様子をじっと見送っていましたが、やがて、
「ああ、さっき目の中に入った青い光ね。あれ、春の妖精のお空だったんだよ。」
と言いました。
ジョーは、「本当にそうだ。」
と思いながら、ムラサキシジミの羽の、あの美しい、るり色の模様を、思い浮かべました。
冷たい風はいつしか止んで、南の空の高みでは、綿毛のようにまっ白なお日様が、二人のいるナラの木や野原を、洗い立てのまっさらな光で照らしていました。

おしまい








この童話に登場する、「草の種を主食にするアリ」は、日本にも生息していて、名前をクロナガアリと言います。クロナガアリは、秋だけ巣から出て来て、草の種を集め、巣に備蓄すると、その他の季節は、ずっと巣から出ずに生活するという、ちょっと珍しい暮らしをしています。ただし、クロナガアリは蜜を好まないので、作中のありんこの性質は、蜜も種子も好むトビイロシワアリの方が近いです。

童話、『アリとキリギリス』の中のアリも、きっとこの種類のアリではないかと思います。

それから、下の写真は、フリー素材のサイトからお借りした、実際のムラサキシジミの姿です。


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ムラサキシジミの羽は、上から見ると、こんな風に、美しい青い模様なんですが、裏側は、灰色の地味な色で、左右の羽を合わせた時は、ちょっと蛾のようにも見える、面白いちょうちょです。



物語を書き始めた時は、それぞれの生態を、よく調べていなかったので、作中には、いくつかの矛盾点が生じています。でも、物語は、勉強ではないので、面白かったらそれで良いと思っています。^^


最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
これを良い経験にして、また新しい物語やイラストを制作して行きたいと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いします☆


Kobito

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この記事へのコメント:
Kobitoさん


童話も素敵ですが

色がなんともいいですね

今朝は色を見に来ました
2012/12/01(土) 10:18 | 湖の麓より
麓さん、こんにちは~。^^
挿絵、気に入ってもらえて嬉しいです。(蝶の写真のことかな?^^;)

この物語の挿絵は4枚目だから、色についてもイメージしやすかったです。
この子たちのように、元気に冬を乗り切りましょうね。^^
2012/12/01(土) 12:13 | Kobito
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童話「小さな幸せ」完結編です。|Kobitoのお絵描きブログ