久しぶりに、ファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』を書き進めてみました。今回から、第14章が始まります。

第14章では、ナーグリアを脱出して、交易船に潜り込むことができたサキたち一行のその後の様子を、書いて行きます。
サキは現在、フラトの元国境警備団員カイザールと、ナーグリアで出会ったホピンとレカの母娘と一緒に旅をしています。

魔法使いサキの物語
第14章・第1話「三等船室にて」

ギリーニャ行きのナーグリアの交易船、〝コメッサ号〟に潜り込むことに成功したサキたち一行は、三等船室が男用と女用に分けられていたので、カイザールとひとまず別れて、サキとホピンとレカで、船底近くの女用の船室に下りて、くたびれた身なりの人々でごった返したその部屋の片すみに、なんとか三人分の小さな居場所を確保しました。ホピンは晴れて正式な乗客として、長い船旅を過ごすことができることが決まって、心底ほっとしたようで、薄よごれた板壁にぐったりもたれかかると、「私はもうここから動きたくないよ。」と、うなるようにつぶやきました。
すると、ホピンのすぐ横で、すり切れた敷布にくるまった老婦人が、自分の居場所が狭くなったことに腹を立てて、サキたちに、
「あんたたちは、出港の時は居なかったのに、どっから湧いて出たのかね。」
と嫌味を言いました。
レカが、「乗り遅れたので、泳いで追いかけて、やっとさっき乗り込めたのよ。」と答えると、周りの乗客が「そいつはご苦労だったね!」と言ってどっと笑いましたが、サキとホピンは、レカの大胆さに冷や汗が出る思いでした。
この船が、こうもたくさんの乗客を乗せているのは、イストパ(大陸東部)からシンギ半島への航路が、ナーグリアのサドゥから出ているこの交易船の一本しかないからでした。
激しい荒波と、内海から外洋へ急流のように出て行く潮流に逆らって半島に渡れるほどの優れた船艇を建造できるのは、イストパではまだ、魔法動力の発達した小国フラトと、イストパ最大の貿易国家、ナーグリアだけだったのです。
「あたしは今までに貯め込んだ金を、船賃でほとんど持ってかれたよ。でもいいのさ。半島へ渡れば、ナーグリアの通貨は百倍の値打ちがあるんだから。残りの金でも、田畑を買って、夫と二人で使用人を雇って暮らしていけるくらいはあるよ。」
「為替(かわせ)役人が持ち金を預かってくれるから、船旅の間も安心だしね。」
「そうだよ、でも、引きかえの割符(わりふ)だけは絶対に失くしちゃいけないよ。役人から金を返してもらえなくなるからね。」
女たちがあけすけにそんな会話をしているのが、ホピンの肩にもたれて休むサキの耳に聞こえてきました。
「カイザールさんは、一人でかわいそうね。どうしているかしら。」
サキの隣にしゃがんだレカが聞きました。
「あの人は大丈夫よ。強い人だもの。」
「そうかな。時々、お母さんにそっくりって思うのよ。あの人。」
「どこが?」
「寂しがりやなところ。」
「うん。」
サキは、ちょっとホピンの方を見ました。するとホピンは、目を閉じたまま、
「おませさん。あなたも疲れたでしょう。お休みなさい。」
と、たしなめるようにレカに言いました。
「あら、寝たのじゃなかったの。」
「あなたを野放しにして眠れるほど、お母さんは気丈夫じゃありませんよ。」
サキとレカは、思わず大きな声で笑いましたが、隣の老婦人が目をむいてにらんだので、あわてて口を押さえました。

つづく

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