四人の共作で完成させた童話、『クリスマスの天使』の、第6話です。
描き下ろしの挿絵と一緒に、お楽しみ下さい。

前回までのあらすじ
ウサギのシュンくんが、拾った宝石を持ち主のブタさんに返したいと言うので、天使たちは、警察署にいるブタさんを、シュンくんの家まで連れて来ることにしました。


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クリスマスの天使

作:Kobito、nao、かまど猫、Sian
絵:Kobito

第6話


しばらくすると、天使たちは、今度はブタの宝石商さんや、ブルドッグの刑事さんといっしょに空を飛んで、戻ってきました。
ブタの宝石商さんは、目をぎゅっとつぶって、ブルブル震えながら、ブルドッグの刑事さんの背中に、おんぶされていました。
天使たちが二人をシュンくんの家の前に下ろすと、ブルドッグの刑事さんは、
「さあ、着きましたぞ。いいかげん目をお開けなさい。」と言って、ブタの宝石商さんの耳を引っぱりました。
ブタの宝石商さんは、ブルドッグの刑事さんから下りて、きまり悪そうにフロックコートのえりを直すと、
「やれやれ、こんな乱暴な運ばれ方をされたのは、生まれて初めてだ。飛ばしたのが子供じゃなかったら、訴えてやるところだ。」
と言って、シュンくんの家を値踏みするようにじろじろと見て、
「みすぼらしいあばら家だな。泥棒のかくれ家じゃないのか。」
と、ばかにしたようにつぶやきました。
すると、玄関の扉が開いて、クマのお医者さんが顔を出しました。
「やあ、いらっしゃい。空の旅はいかがでしたかな。まあともかくどうぞお入り下さい。と言っても、私の家ではないんだがね。そら、天使たちも入んなさい。」
「いいの?」
ヨルダとヒルダが一緒に聞くと、クマのお医者さんは、
「シュンの具合がずいぶん良いからね。さっきから、窓を開けて外の空気も吸わせているんだ。」
と言って、みんなを家の中に招き入れました。
シュンくんは、目をきらきらさせて、枕元に来た天使たちを見あげると、
「君たち、本物の天使なんだね。ぼく、君たちが空を飛ぶのを見たよ。すごいなぁ。」
と言って、さし出された二人の手と、おっかなびっくり握手しました。
「そうさ、ぼくたちはね・・・、」
ヨルダが返事をしようとすると、ふんぞり返ったブタの宝石商さんが、それをさえぎるように、
「さあ、私の宝石はどこかね。出したまえ。」
とシュンくんに命令しました。
シュンくんは、「ごめんなさい。宝石はここにあります。」と言って、サイドテーブルの引き出しに入れておいた、あの宝石の入った小瓶を取り出して、ブタの宝石商さんに差し出しました。
ブタの宝石商さんは、受け取った小瓶を、下から見上げたり、上から見おろしたり、窓から差しこむ光にすかして見たり、念入りに確かめはじめました。
ブルドッグの刑事さんが、「どうです。あなたの宝石ですか?」と聞くと、ブタの宝石商さんは、「そうです。」と大きくうなずいて、
「こんな胃薬の小瓶なんかを使いおって。あああ、表面も曇っちまってるじゃないか。また研磨士に頼んで磨き直さなくちゃならん。まったくえらい損害だ。」
といまいましそうに言いました。
クマのお医者さんは、ブタの宝石商さんがあんまり失礼なので、腹が立ってきて、
「あんた、文句を言う前に、届けてもらった礼くらい言ったらどうかね。」
と注意しました。
ブタの宝石商さんは、シュンくんを見おろしながら、
「ふん。こんな事でもなけりゃ、お前なんかに一生さわれもしない途方もない価値の宝石だぞ。それをしばらくの間持っていられたんだ。こっちとしては、貸出料を取りたいくらいなんだ。だがまあ、正直に警察に届けた事に免じて、請求はしないでおいてやるよ。」
と、いかにも横柄な態度で言いました。
「なんて奴だ!シュンが見つけなければ、あんたは二度とその宝石を手にできなかったかもしれないんだぞ。」
クマのお医者さんが怒ってつめ寄ると、ブタの宝石商さんは肩をすくめて、
「おあいにくさま。警察の方でも、署員総出で川をさらってくれる事になっていたんだ。この子供が持って行かなければ、警察の方で間違いなく見つけてくれていたさ。」

つづく



ちょっとご無沙汰でした。
今日は、四人による共作童話、『クリスマスの天使』の、第5話をご紹介します。


前回までのあらすじ
タヌキとキツネの泥棒に盗まれたブタの宝石商さんの宝石は、どうやらウサギのシュンくんが河原で拾った二色の石に間違いないようです。
天使たちは、ブタさんもシュンくんも悲しませないで、宝石の持ち主を決める良い方法が思い浮かばなかったので、クマのお医者さんに相談することにしました。


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クリスマスの天使

作:Kobito、nao、かまど猫、Sian
絵:Kobito

第5話


二人はまた空を飛んで、クマのお医者さんの、緑の屋根のおうちに行きました。
クマのお医者さんは、暖炉のそばで、揺り椅子に座って、紅茶を飲んで、くつろいでいる所でした。
天使たちは、クマのお医者さんにかけ寄って、ひざにつかまって、シュンくんの持っている宝石のことを話しました。
そして、
「どうすれば、みんなを幸せにできると思う?」
と、聞きました。
クマのお医者さんは、ひげをひねって少し考えてから、
「シュンに相談してみるんだな。あの子なら、ちゃんとそれが分かってるだろうよ。」
と言いました。
ヒルダが、クマのお医者さんの手を引っぱって、
「クマさんも来て!私たち、シュンくんのお家に入れないんだから。」
と言いました。
「だって、わしは今日はもう、二回も、シュンの家に行って、今帰って来たところなんだぞ。紅茶も、今淹れたばかりなんだ。」
クマのお医者さんは、惜しむように口をとがらせて紅茶をすすりました。
「後で、ぼくたちが淹れ直してあげるよ!早く行こう!」
ヨルダが、クマのお医者さんのおしりを押して、揺り椅子から立たせると、ヒルダが、玄関からコートを持って来て、クマのお医者さんにすっぽりと着せてしまいました。
「それになあ、わしは今日は歩き疲れて足が痛いんだ。」
「だいじょうぶ、私たちにつかまって。」
ヒルダとヨルダは、両方からクマのお医者さんの手をとると、玄関からふわりと飛び出して、そのままクマのお医者さんと一緒に、空を飛び始めました。
「子供の頃から、空を飛ぶのが夢だったが、わしはいつから飛べるようになっていたんだろう!?」
クマのお医者さんは、自分の力で、空を飛んでいると思っていたので、天使たちは、
「その夢は、私たちのおかげで、叶ったのよ!」
「そうさ、そして、それは、今日がクリスマスだからだよ!」
と教えてあげました。
三人は、野を越え川を越え家々も越えて、あっという間に、シュンくんの家の玄関前に降り立ちました。
クマのお医者さんが家に入ったので、天使たちはぐるっと表へ回って、シュンくんの部屋の窓辺に行きました。
「先生、さっき、空を飛んで来なかった?ぼく窓からちらっと見えた気がするんだ。」
ベッドに寝たシュンくんが、枕元に来たクマのお医者さんに聞きました。
「そうさ。わしは空を飛んだんだ。クリスマスってのは、奇跡が起こる日なんだ。」
クマのお医者さんは、サイドテーブルのおかゆの皿が空なのにうなずくと、シュンくんのひたいに手を当てて、熱が少し引いたのを確かめてから、
「シュン、お前さん、河原で、きれいな石を拾ったろう。」と、聞きました。
シュンくんは、ベッドの下に手を伸ばして、宝石の入った小瓶を取り出すと、
「天使たちは、おしゃべりだなあ。おかあさんには、まだ内緒だよ。」
と言いながら、クマのお医者さんにそれを見せました。クマのお医者さんは、二つの宝石をよくよく確かめてから、
「シュン、これはね、先週山の上旅館で盗まれた、ブタさんの宝石なんだ。ブタさんは、買い手の大金持ちから、早く見つけて持って来いと、毎日責められているそうだよ。」
と言いました。
シュンくんは、「そうだったの。」と言って、うつむいて宝石を見つめました。
そして、
「先生、ブタさんに、早く持って行ってあげて。盗まれたものを、おかあさんに贈るわけにはいかないや。」と言って、小瓶をクマのお医者さんにさし出しました。
天使たちが、窓の外から口々に、
「ぼくらがブタさんを連れて来るよ!」
「クマさんもそこで待ってて!」
と言うなり、上の方に飛び上がっていなくなりました。
「今、あの子たち、空を飛ばなかった?ぼく、そんな風に見えたけど。」
シュンくんが、窓の外を見あげながら聞くと、クマのお医者さんは、
「飛んださ。もどってくるときには、見逃すなよ。」
と言って、窓をすこし開いてあげました。

つづく


四人による共作で完成させた童話、『クリスマスの天使』の、第4話です。
描き下ろしの挿絵と一緒に、お楽しみ下さい。

前回までのあらすじ
双子の天使、ヒルダとヨルダは、クマのお医者さんとコリー犬の巡査さんの立ち話から、宝石泥棒の事を知りますが、泥棒たちが盗んだ宝石というのは、どうやら・・・。


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クリスマスの天使

作:Kobito、nao、かまど猫、Sian
絵:Kobito

第4話

こそこそ話しをしている二人に、クマのお医者さんは
「川は雨で増水しているんだから、宝探しなんかしたらダメぞ」
「新聞には、赤と水色の飴玉みたいな宝石だと書いてあったかな。。。。」

「あれ?二人が居ない?お~~い」
「わしとした事が、まだ名前も聞いていなかった」

天使たちは、きょろきょろあたりを見回しているクマのお医者さんを残して、高く空を飛んで、町のまん中の、大通りにある警察署までやって来ました。
二階の部屋の窓をのぞくと、ちょうどブルドッグの刑事さんが、泥棒のタヌキとキツネを取り調べているところでした。
「……それで、お前たちは、まんまと宝石商から宝石を盗み出したというわけだな。」
「刑事さん、そこんところは、もう何十回も話しましたぜ。だいたい、あんなに『途方もなく高価な品が入ってるんだ。』とか、『貧乏人が気安くさわるんじゃない。』とか、始終かばんを自慢して、行く先々でいばり散らしてたら、泥棒に目を付けて下さいと言っているようなもんですぜ。」
キツネの泥棒が、はなはだ迷惑そうに言いました。
ブルドッグの刑事さんは、キツネをじろっとにらんだだけで、話を続けました。
「宝石を盗んだお前たちは、すぐに旅館を出て、鉄道の駅に向かったが、途中でコリー犬の巡査に出くわして、あわてて宝石を川に投げ捨てた。まだ警察の捜査など始まっていないと知りながら、なぜそ知らぬ顔で通り過ぎなかった?」
タヌキの泥棒が、待ってましたとばかりに答えました。
「兄貴が隠せ隠せと言うから、おいらは川に隠したんだ。おいらは悪かねぇよ。」
「おれはポケットに隠せと言ったんだ。」
「いいや、兄貴は隠せとだけ言った。おいらは鼻も目も利くし、耳もいいのが自慢なんだ。」
「なんだと!」
キツネの泥棒が立ち上がりましたが、ブルドッグの刑事さんが「よさんか!」と叱ったので、キツネはしぶしぶ椅子に座り直しました。
「そして、コリー犬の巡査が通り過ぎたのち、お前たちは二人して川に入って、宝石をさがし回ったが、その日は見つけることができなかった。翌日、宝石泥棒の件が新聞に出て、昼間に探すと怪しまれると思ったお前たちは、夜中にランプの明かりを頼りに探すことにしたが、なおさら見つけることができなかった。」
「夜中に探そうと言い出したのは兄貴なんだ。まったく、おいらは最初から、無駄なことだと言ったんだがね。」
「『砂地の多い川だから、裸足になって探せば踏んだ時にすぐ分かるよ。』と言ったのはどこのどいつだい!」
「そりゃ言ったけどさ。だけど、無駄だとも言ったじゃないか。」
「なんだと!!」
キツネとタヌキが立ち上がりそうにしたので、「やめんか!」とブルドッグの刑事さんがどなって、二人をすぐさま坐らせました。
「そして、雨が降り出した四日前、お前たちは川が増水し始めたのを見て、宝石が流されることを心配し、昼間にもかかわらず川に入って宝石を探し始めた。そこにコリー犬の巡査が通りかかり、冷たい川につかってふるえているお前たちを怪しみ、所持品検査をしたところ、宝石の鑑定書を持っていたことから、宝石泥棒の容疑者として逮捕されたというわけだ。」
「宝石は放り出したくせに、鑑定書を後生大事に持っている奴があるか!」
「兄貴は、鑑定書を隠せとは言わなかったぜ。おいらは鼻も目も利くし、耳も記憶力もいいのが自慢なんだ。」
「なんだと?!」
ブルドッグの刑事さんは、やれやれと頭を振りながら席を立って、怖そうなドーベルマンの巡査さんに見張りを任せて、部屋を出て行きました。
天使たちは、隣の部屋をのぞいてみました。すると、フロックコートを着た大きなブタさんが、眉をひそめて、何かぶつぶつ言いながら、落ち着きなく歩き回っているのが見えました。
さっきのブルドッグの刑事さんが、「や、お待たせしました。」と言って、部屋に入ってきました。
「どうです。やっぱり、別な場所に隠していたでしょう?」
ブタさんは、ブルドッグの刑事さんに歩み寄って、すがるように聞きました。
「いや。川に放り込んだのは、どうも間違いないようです。」
そう言うと、ブルドッグの刑事さんは、ブタさんに椅子を勧めながら、自分も向かいの椅子にどかりと座って、難しい顔で腕組みをしました。
「では、今すぐ警察で川をさらって下さい。宝石はまだ、あの川のどこかにあるはずですから。」
どうやら、このブタさんは、旅館で宝石を盗まれた、宝石商のようでした。
「川には署員をやっています。これから増員もかけましょう。しかし、先日の雨で、宝石は放り込んだ場所から、流されちまった可能性があります。もし、橋の近辺で見つからなければ、発見するのはよほど難しいですよ。」
「そんな弱気じゃ困る!あの宝石は、刑事さんが一生かかっても買えないくらい、途方もなく価値の高いものなんですよ!そして、私は買い手の大金持ちから、電話や電報で、必ず見つけて持ってこいと、朝から晩まで、ひっきりなしにせっつかれ続けているんだ。それどころじゃない。このまま行くと、私は破産して、夜逃げをしなくちゃならないんだ!そうなったら、どうしてくれるんだ?!」
ブタの宝石商さんは、話しているうちに顔が赤くなって、しまいにはどなり声でまくし立てました。
ブルドッグの刑事さんは最後まで聞くと、
「我々もできる限りのことはやりますよ。署員たちに覚えさせるから、鑑定書の写真を出しなさい。」
と、すこし仏頂面で言いました。
ブタの宝石商さんが、カバンから取り出した鑑定書の写真を見て、天使たちは、「やっぱり!」と声をそろえて言いました。
それもそのはず、写真に写っていたのは、シュンくんが河原で拾ったと言って、小瓶に入れて持っていた、あの赤と水色の、飴玉みたいな、透き通った、きらきらした石ころだったからです。
「ブルドッグの刑事さんと、ブタの宝石商さんに、宝石のありかを教えてあげようよ。」ヨルダが言いました。
「だめよ。あの宝石は、シュンくんがおかあさんの、クリスマスのプレゼントにするのよ。」ガラス窓を叩こうとするヨルダの手をつかんで、ヒルダが言いました。
「だって、あの宝石はブタさんのものだよ。ブタさんに返さなくちゃ。」
「私たち、シュンくんを幸せにすると決めたでしょう。それなのに、宝石を取りあげたら、シュンくんはますます不幸になっちゃうじゃない。」
「でも、シュンくんが宝石を返さないと、今度はブタさんが不幸になっちゃうよ。」
「それもそうねぇ。」
ヒルダは唇に指を当てて考えてから、
「クマのお医者さんに相談しましょうよ。きっと、シュンくんもブタさんも、幸せにする方法を、知っていると思うわ。」
と言いました。

つづく



四人による共作童話、『クリスマスの天使』の、第3話です。
描き下ろしの挿絵と照らし合わせながら、お楽しみ下さい。

前回までのあらすじ
クリスマスの朝、不幸な人を幸せにするために、天から舞い降りてきた双子の天使、ヒルダとヨルダは、クマのお医者さんに教わって、病気がちなウサギのシュンくんの所へお見舞いに行きました。






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クリスマスの天使

作:Kobito、nao、かまど猫、Sian
絵:Kobito

第3話

シュンくんは、窓の外の天使たちに気が付いて、にっこり笑顔を返しながら、「こんにちは。」と言いました。そして、
「ぼく熱があるから、窓、開けられないんだ、ごめんね。」と二人に謝りました。
「気にしなくていいよ。ぼくたち、クマさんの服を、六枚重ねに着せてもらったから、あったかいんだ。」
と、ヨルダが言いました。
するとヒルダも、
「そうよ、クマさんの野菜スープもごちそうになったから、なおさらあったかいのよ。」
と、付け加えました。
シュンくんは、「ねえ、君たちはクマのお医者さんと一緒に来たの?」と聞きました。
「そうだよ。不幸な人を、幸せにするためにね。」と、ヨルダが答えました。
「私たち、天使なのよ。天から降りて来たのは、クリスマスだからなのよ。」
ヒルダがすかさず、説明しました。
シュンくんは、なるほど、と言うようにうなずいて、「ぼくも、元気になったら、天使遊びの、仲間に入れてね。」と頼みました。
ヨルダは、「ぼくたち、今日中に、天に帰らなくちゃいけないんだ。だから、今日中に、シュンくんを幸せにするよ。」と言いました。ヒルダは、残念そうにしているシュンくんに、「さっき、見ていた物はなに?」と聞きました。
シュンくんは、手に持っていた小瓶を、二人がのぞく窓ガラスに近づけて、中に入った赤と水色の透き通った石を見せながら、
「この前、河原で遊んでいて、見つけたんだ。きれいだから、クリスマスの贈り物として、お母さんにあげようと思って。でも、ぼくが具合を悪くして、お母さんがてんてこ舞いになったから、言い出せなかったよ。」
と言いました。
そこへ、おかゆの器を持ったクマのお医者さんが戻って来ました。
「シュン、じゃあ、わしは帰るよ。熱が下がったら、これを食べなさい。食後には、薬を忘れずに飲むんだぞ。」
シュンくんは、おかゆをサイドテーブルに置いたクマのお医者さんに、
「先生、この子たちは、先生の子どもなの?」と聞きました。
「そうじゃないよ。実を言うと、まだどこの子だかも、知らんのだがね。おいお前さんたち、どこの子だい。」
クマのお医者さんは、窓の外の天使たちに聞きました。
天使たちは、二人して、笑いながら、薄曇りの空の方を指さしました。
「な。この調子だよ。じゃあ、何かあったら、また電話しなさい。」
肩をすくめてコートを羽織ったクマのお医者さんに、シュンくんが、ベッドの上で少し体を起こして、
「先生、ありがとうございました。」
と、ていねいにお辞儀をしました。
クマのお医者さんは、シュンくんの家を出ると、天使たちと連れだって、もと来た道を戻りはじめました。
「シュンくんは、お母さんと二人きりなの?」
ヒルダが聞きました。
「そうだよ。シュンの父親は、私の親友でね。シュンと二人きりになってから、トチリさんは、ずいぶん苦労したよ。」
クマのお医者さんは、そう言うと、行く手の川にかかった橋の上で、顔なじみのコリー犬の巡査さんが、虫取りあみを持って、しきりに橋の下をのぞき込んでいるのを見つけて、「どうしたんだね。」と、声をかけました。
コリー犬の巡査さんは、「お勤めご苦労さまです。」と、あわてて敬礼をすると、「事件の捜査をしているところです。」と答えました。
「事件?物騒だね。何かあったの?」
クマのお医者さんは、虫取りあみと巡査さんを見比べながら聞きました。
「は。いや、大したことではないんです。物取りが、盗品を川に投げ込んだと言うものですから、念のために探していたところです。」
「この寒いのに、盗品を探して川さらいかね!よほど、高価な品物なんだな。」
巡査さんは、いよいよあわてて、
「先生、騒ぎになるといけませんから、当面、伏せておいてくださいね。」と頼みました。
「そう言えば、先週山の上旅館で、宝石泥棒があったと、新聞に出ていたな。しかし、先日の大雨で、そんな小さなものは、下流に流されちまったんじゃないかね。」
巡査さんはそれを聞くと、「じゃあ、下流の方を探してみます。」と言って、あたふたと自転車をこいで川下の方へ行ってしまいました。
クマのお医者さんは、
「コリー君は、子供の頃から隠し事が下手でね。わしは、彼が腹痛を起こした時に、クコの実のゼリーを食べ過ぎた事を、たやすく白状させたもんさ!」
と言って、大口を開けて笑いました。
ヒルダとヨルダは顔を見合わせて、「ねえ、その宝石って……。」とささやきました。

つづく

先日、YouTubeの私のチャンネルで、ビリー・ホリディの「Without Your Love」という曲の日本語カバーの共作動画を公開しました。今回は、その共作で集まった音源を用いて、ピアノカルテットバージョンの動画を作ってみたので、ご紹介します。
カルテットというのは、4人組のことです。
演奏のメンバーは、ピアノのshingoseさん、ギターのてらやまさん、ベースのstarfish0925さん、ドラムのグローリーさんです。

それから、映像に用いたちぎり絵、写真、水彩画は、麓(ふもと)さんの作品です。



下記が、参加された方々の担当されたパートと、それぞれのチャンネルのURLです。

terayamasoさん:ギター
https://www.youtube.com/user/terayamaso

Glory Channelさん:ドラム
https://www.youtube.com/channel/UCNql3isRNAwifSJgI3vZ77g

starfish0925さん:ベース
https://www.youtube.com/channel/UCItQl4VweQ-1moE7V_fy0sA

shingose music art projectさん:ピアノ
https://www.youtube.com/user/shingose77music

麓さん:ちぎり絵、写真、水彩画

私:ミックス、映像編集
https://www.youtube.com/user/kitakabe1





ボーカルのEmiko Gettingbetterさんが参加したフルバージョンの動画はこちら。
Billie Holiday - Without Your Love 「君なしじゃ」- 日本語訳詞 Jazz Cover コラボ作品




三人の方と共作した童話、『クリスマスの天使』の、第2話です。

挿絵は、色鉛筆の灰色で、下描き無しで描きました。
普通の鉛筆で線画を描くと、手でこすっただけで線が汚れてしまうので、最近は定着の良い色鉛筆を線画に用いる事が多いです。

では、挿絵と照らし合わせながら、物語をお楽しみ下さい。



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クリスマスの天使

作: Kobito、nao、かまど猫、Sian
絵: Kobito

第2話

 そんなわけでヒルダとヨルダは、クマのお医者さんがウサギのトチリさんの家に往診にいくのについていきました。
 トチリさんのおうちはとても小さくて、周りのりっぱなレンガ屋根のおうちにちんまりと埋もれていました。

「なんてかわいらしいおうち」
「でもカーテンがついてないね」
「あらほんと。それにすごいヒビ」

 双子はクマのお医者さんに言われたとおり、窓からこっそりシュンくんをのぞいてみたのですが。その窓にはヒビが走っていて、われないようテープで止めてありました。
 お医者さんは迎えてくれたお母さんといっしょに、シュンくんのベッドのそばにきて、診察をはじめています。
 こんこん、という咳の音が窓越しに聞こえてきます。

「なんだかとても苦しそうね」
「うん、苦しそう」

 見ていると。お母さんは、クマのお医者さんがシュンくんの胸の音を聴診器で聞いている間に、家から出て行ってしまいました。長い耳を揺らして、大急ぎで。
 お仕事にいったのです。
 子ウサギのシュンくんは咳き込みながらもにっこりして、お母さんに「いってらっしゃい」と言っていました。
 でも。お医者さんがお薬を置いて部屋をでていくと。
 ベッドにいるシュンくんは急に長い耳をしゅんと垂らして、うなだれてしまいました。

「おかあさん、今日も晩ごはん、一緒に食べれなさそう。ごちそうもケーキも高いから、いらないって言っちゃったけど……。僕のお薬代を払うためだもん。しかたないよね」

 二人の天使は顔をみあわせました。

「ウサギの子、なんだか悲しそう」
「そうだね、寂しそう」
「一緒に住んでるのは、お母さんだけなのかしら。もしかしたらお父さん、いないのかしら」
「先にお仕事にいったのかもしれないよ?」
「でもお金に困ってるみたい」
「あれ? あれはなに?」

 ヨルダがヒルダの肩をくいくいつついて、シュンくんを指さしました。
 シュンくんはベッドの下から何かをとりだしています。小さな小さな、透明な瓶です。
 瓶の中には何かきらきらしたものが入っています。

「おかあさん、喜ぶかな」

 トチリさんちのおうちの事情もさることながら。二人の天使は、瓶の中身が知りたくてコツコツ窓を叩きました。

「こんにちは!」「こんにちは!」
 
 はじけるような笑顔を浮かべながら。

つづく



きょうは、SNSで知り合った方々と共作した童話、『クリスマスの天使』の、第1話をご紹介します。

私が物語のはじまりの文章を提示して、参加者各自に好きなように続きを書いてもらう、という手法で完成させたものです。
参加してくれたのは、naoさん、かまど猫さん、Sianさんの3人です。

お話は全部で8話です。童話としては、長編と言っていいくらいの長さです。
それでは、描き下ろしの挿絵と一緒に、第1話をお楽しみ下さい。

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クリスマスの天使
作: Kobito、nao、かまど猫、Sian
絵: Kobito

第1話

おせっかいな天使が、クリスマスの朝に、空から舞い降りてきました。

“その天使はね
やわらかい ふかふかのしろい羽なの

ちっちゃくて 可愛くて
やんちゃな双子の天使なの”

桃色の衣を着た天使は、ヒルダと言いました。
水色の衣を着た天使は、ヨルダと言いました。
ふたりは本当に仲良しで、いつも一緒に遊んでいたので、その日も二人して下界に下りて来たのです。
ヒルダと手をつないだ、ヨルダが言いました。
「クリスマスなんだもの。不幸な人を、うんと幸せにしたいね。」
もちろん、ヒルダは大賛成でした。
「ええ、不幸な人をさがしましょうよ。そして、ふたりで、幸せにしてあげるのよ。」
ふたりは、町外れの緑の屋根の、豪勢な一軒家を見つけて、そこに降りて行きました。

その緑の屋根のおうちには、
立派な髭を蓄えた、優しいクマのお医者さんが住んでいます。

あ。ちょうど往診から帰ってきたみたいですよ。

「やれやれ、この年になると、毎回歩きで往診の行き来をするのも、くたびれるわい。しかし、いまさら車の免許を取るのも、自信がないし。」
クマのお医者さんは、そうひとりごとを言いながら、玄関の鍵を開けて、診察かばんを置いて、厚手のコートを脱ぎました。
どうやら、この広いお屋敷に、一人きりで住んでいるようです。
ヒルダとヨルダは、玄関の小窓から、頭を寄せ合ってのぞいて、クマのお医者さんが人心地が付いたのを確かめてから、呼び鈴を押しました。
クマのお医者さんは、扉を開けて、そこに、小さな可愛らしい子供が二人、寒いのに、布一枚を腰や体にまいただけで、平気そうににこにこ笑って、こちらを見上げている姿を見て、
「わしはずいぶん寒がりで、出かけるときには、コートの下に、毛織のシャツを五枚も着込むがね。たしかにそれは、やり過ぎなんだ。でも、少なくとも、お前たちが、いくら暑がりだからと言っても、そんな姿で、この寒空の下を、ほっつき歩かせるわけにはいかないんだ。」
と言って、二人を家に招き入れて、火を入れたばかりの、暖炉のそばに立たせました。
「ぼくたちね、天使なの。」
ヨルダが、あたふた歩き回るクマのお医者さんに言いましたが、クマのお医者さんは、
「そうだろうよ。まったく、あと少しで、お前たちは、本当の天使になるところだったよ。」
と言って、とりあいませんでした。
「不幸な人を、探しているのよ。私たちで、幸せにするためにね。クリスマスだからよ。」
ヒルダが、考え考え、説明しましたが、クマのお医者さんは、たんすの中から子供が着られそうな服を、手当たり次第に引っぱり出しながら、
「人を幸せにするよりも、まずお前たちが、幸せにならなきゃいけないよ。それも、今すぐにだよ。いいかい、暖かい服を六枚重ねに着て、温かいスープを、フーフー冷ましながら飲むんだ。それで、天使みたいな二人の幸せな子供の、一丁上がりの出来あがりってわけさ。」
と言って、もう二人に、セーターやらズボンやらを、何枚も着込ませてしまいました。
「ぼく、下界の服を着たのは、初めてだ!」
ヨルダは、もこもこに着ぶくれた自分によろこんで、ぴょんぴょん飛び跳ねました。
「ねえ、私たちを幸せにできたら、次に幸せにしたい人はだれなの?」
と、ヒルダが聞くとクマのお医者さんは、
「わしは医者だからね。もちろん、患者さんを幸せにしてあげるのが望みだよ。」
と言いました。
そして、暖炉で温めた野菜スープを、大きなマグカップに注いで、二人に飲ませながら、
「そういえば、さっき往診に行ったトチリさん家のシュンがちょうど、お前さんたちくらいの子でね、とてもおとなしい、お母さん思いの優しい子なんだ。だけど、しょっちゅう熱を出して寝込むから、わしもトチリさんも心配しているんだ。」
と言いました。
天使たちは、その子を幸せにしてあげたいと思ったので、
「ねえ、ぼくたちお見舞いに行ってもいいかしら。」
と聞きました。
クマのお医者さんは、
「もちろん。だけど、まだ治りきっていないからね。シュンは窓辺のベッドに寝ているから、窓の外から話しかけてごらん、きっと喜ぶよ。」と言って、二人を、トチリさんの家に連れて行ってあげることにしました。

つづく






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仲良くした事、
けんかしたこと
良いことも悪いことも
あなたがいなければ
もうできないよ
もっといっしょに、
いてほしいよ




明けましておめでとうございます。
今日から、2017年(平成29年)が始まりました。
毎年、西暦と年号の二つを覚え直さないといけないのが面倒ですが、じきに新しい表記にも慣れるでしょう。

今年も昨年と変わらず、イラストを描いたり、童話を書いたり、粘土細工や動画を作ったり、好きなことをして紹介するブログにして行きたいので、どうぞよろしくお願いします。

さて、新年のブログ更新第一回目は、イラストの描き初めから始めたいと思います。

普段イラストを描くとき、、私はややデフォルメされた漫画的なキャラクターを好んで描きます。
でも、たまには別の画風にもチャレンジしたいので、今日は、ややリアル寄りのイラストを描いてみる事にしました。
リアル寄りで、なおかつ生々しくない、天野喜孝さんの洗練された画風を参考にしました。


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最近、粘土細工で、いくつか裸婦像を作ったので、その成果として、骨格や筋肉のつき方が、以前よりも自然に見える絵が、描けるようになったと思います。
このキャラクターは、モーツァルトのオペラ、『魔笛』の登場人物、鳥刺し(鳥をつかまえる職業)のパパゲーノをイメージしながら描きました。
パパゲーノはコミカルな男性のキャラクターなんですが、この絵では、男性だか女性だか分からない、中性的な妖しい魅力を持った人物として表現しました。
ダンス&ミュージカルの舞台で踊る、シリアスなモダンダンサーのパパゲーノです。


2017年01月|Kobitoのお絵描きブログ .966.965.964.963.961.958.957.955.954.953