秋は、天ぷらの美味しい季節ですね。魚、なす、さつまいも、れんこん、ふっくらカリッと揚げて、ダイコンおろし入りの天つゆにさらりとひたして、衣が柔らかくなったところをほおばる。最高です。

きょうは、新作童話、「アンチャンの小人たち」の、第10話をご紹介します。

アンチャン村の小人たちが、落葉の舟で、川下りをする物語です。

ミニあらすじ
舟が沈んでしまい、無人島にたどり着いて、今はそこを探検している所です。

それではさっそく、挿絵の下から、お話の続きをお楽しみ下さい。



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アンチャンの小人たち 第10話

だから、ユニオもすっかりよろこんで、勢いよく崖をのぼろうとしたのですが、どんなにがんばっても、一二足のぼったところで必ずずり落ちてしまい、てっぺんまでたどり着くなんて、とっても無理そうでした。
そこで、ユニオはケラに、手振りを交えて、「そこで待ってなよ。」と言うと、しばらく足踏みをしてからいっさんに山を下って行きました。
ふもとの川岸では、ムスビがあいかわらず、そっぽを向いて寝転んでいましたが、そのそばには、ウタオとツキヨも、ひざをかかえて、腰を下ろしていました。
そこへ、よたよたユニオが駆けて来たので、ツキヨは立ち上がって、
「私たちの方は、途中で行き止まりになっちゃったのよ。」
と言いました。ウタオが、
「君たちの方は、何かあったかい?」
と聞いたので、ユニオは、荒い息の合い間に、やっとこつばを飲み込んでから、
「舟があった。」
と言いました。
「そりゃすごい!」
ウタオはムスビを揺さぶると、耳元で、「舟があったぞ!」と大声で教えました。
ムスビは半分目を開けて、
「おれも今、舟を見つけるところだったさ。」
と寝言のように答えました。
「夢の話じゃないのよ。ユニオが見つけたのよ。」
ツキヨがムスビの手を引いて、座らせてから言ったので、ユニオはあわててかぶりを振ると、
「ケラだよ。」
と小声で訂正しました。
ムスビが大あくびをして腰を上げたので、小人たちはそろってユニオが下りて来た道をたどり、間もなく、さっきの絶壁の下に到着しました。
崖の上では、ケラが「舟はこっちだよ。早く来て!」と言って、踊りながら飛び跳ねていました。
だけど、ウタオもツキヨも、それからムスビも、崖があんまり急すぎるので、何度登ろうとしても、半分も行かないうちに滑り落ちてしまって、どうしてもケラのところにたどり着けませんでした。
「よくこんなとこのぼったなぁ。」
ムスビが感心して言ったので、ケラは、
「ぼくが得意なのは、がけのぼりと、木のぼりと、山のぼりだよ!」
と胸をはって言いました。
「一人で、こっちまで舟を運んで来れるか?」
「だめだめ。岩のすき間をくぐらなきゃいけないところがあるもの。」
二人のやりとりを聞いて、ウタオが、
「ひとつ方法があるよ。いい方法かは分からないけれど。」
と、自信なさげに言いました。ムスビは、さっきウタオの案を試したら、落葉の舟に乗ったまま、空高く跳ね上げられた事を思い出して、
「オプオプにけ飛ばされる方法か?」
と尋ねました。
「たぶんその心配はないよ。」
ウタオはよく考えてから、肩をすくめて答えました。
それで、ムスビは、「じゃあ、さっきよりはいい方法だな。」
と、しぶしぶ納得しました。

つづく



 ハロウィンの当日は10月31日です。ですが、今日は、ハロウィンがテーマのイラストが描き上がったので、ちょっと早めにご紹介しようと思います。

イラストの主人公は、去年のハロウィンから登場した、ベビージャックというオリジナルキャラクターです。(ハロウィンの時しか描かないので、年一回の貴重な出番です。)
今回も、イラストに添える短い物語を書いてみたので、絵と照らし合わせながらお楽しみ下さい。


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『ベビージャックと不思議なえんぴつ』


ベビージャックは、カボチャのお化け、ジャック・オ・ランタンの息子です。
ジャック・オ・ランタンはおばけの国の王様ですから、ベビージャックは王子さまというわけです。

王様は、いろいろ不思議な道具を、宝物庫に隠していました。
ベビージャックは、ある日、王様が宝物庫のかぎをかけ忘れたのを見て、ベロ(地獄の番犬見習いのダックスフンド)とバーニン(ろうそくの火から生まれたコウモリ)を連れてさっそく中に入ってみました。

自分とは別の顔が映る鏡や、鎖でつながれてわんわん吠える本、なくした甲(かぶと)を探しまわる甲冑(かっちゅう)など、おかしなものがたくさんあって、ベビージャックたちは、怖がるどころか大よろこびです。
やがてベビージャックは、机の上に、指揮棒のように長い鉛筆が置いてあるのを見つけました。
「これはどんなおかしなえんぴつだろうね。」
ベビージャックは、ためしに壁に、ちょうちょの絵を描いてみました。
すると、そのちょうちょは、ひらひらと壁から出てきて、部屋の中を本物のちょうちょのように飛び回り始めたではありませんか。
「町をぼくの絵でいっぱいにしよう!」
ベビージャックはこんないたずらを思い付くと、その鉛筆を持って、さっそくお城の外に飛び出しました。ベロとバーニンも、大はしゃぎで飛んだり跳ねたりしながらついて行きました。
大熊、大蜂、大蛇、大ワニ、大ムカデ、何でも思い付くものを、ベビージャックは町中の壁という壁に描いて回りました。それらがみんな、壁から出てきてあばれ回るものですから、おばけの世界はてんやわんやの大さわぎです。
しまいに、ベビージャックは、「かんじんの、おばけを描かなくちゃ!」と言いながら、蝶ネクタイに、スーツをつけた、ひょうきんながいこつの絵を描きました。
すると、そのがいこつは、壁から出て来るやいなや、「さあ、ぼっちゃん、つかまえましたよ。」と言いながら、ふしぎな鉛筆を取りあげて、ベビージャックを小脇にかかえました。
ベビージャックはじたばたしながら、
「ぼくが描いた絵なのに、なんでぼくをつかまえるのさ?」
と聞きました。
がいこつは、「ぼっちゃんがわたくしを描いてくれたので、わたくしはぼっちゃんのしつじになることにしたのですよ。」と答えて、お城の方へ、駆け出しました。
そして、「いたずらっ子は、王様にうんとしかっていただきます。」
と付け足しました。
ベロとバーニンは、しゅんとしながら、大あわてで二人の後について行きました。
王様は、がいこつの話を聞くと、ベビージャックたちに、「なんという悪いおばけたちだ。当面、自分の部屋に鍵をかけて、わしが開けていいと言うまで開けてはならん。」と、言い渡しました。それから、がいこつを見て、「王子のいたずらには手を焼いていたのだ。これからしっかり、見はり番をしてくれよ。」と言いました。
がいこつは、「穴が開くほど見はっておりますので、どうぞ、ご安心ください。」と答えました。
すると、ベビージャックが、がいこつの服のそでをちょいちょいと引っぱって、
「さあ、ぼくの部屋はこっちだよ。ちゃんと見はっててね。名前はなんていうの?」と聞いたので、がいこつは、「コツガイでございますよ、ぼっちゃん!」と答えると、ベロやバーニンを付き従えて、いそいそと部屋まで案内されて行きました。

おしまい



 きょうは、リスのパン屋さんのイラストが完成したので、ご紹介します。
ピーターラビットの世界のように、ちょっとリアルな感じを出したかったので、窯の形や、リスの体型を、デフォルメし過ぎないように気を付けました。

窯は、西洋の古いパン焼き釜の写真を参考にしました。
土台の火をたく部分がレンガ造りで、上のパンを焼く部分が土?を固めたドームになっています。

絵に添えた文章は、下記の通りです。


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リスのパン屋さんは
パンが焼き上がると、みんなで一列に並んで
パンをじゅんじゅんに
手わたして、
お店まで運びます。
リスたちはせっかちなので
あわててパンを落としたりしないで
すむようにです。




 きょうは、新しく描きはじめたイラストの下絵をご紹介します。
小動物のパン屋さん、というテーマで、どういう風な絵にしようか考えて、リスたちのパン屋さんを描くことにしました。
シマリスを、資料を見ながらきちんと描くのは、これが初めてです。
模様が思ったより複雑で、シマリスらしさを出すのが難しいです。
セピア色の万年筆で、ふわっとした毛並みを意識しながら仕上げる予定です。

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 秋は、ちょっとさびしくて、天使を描くのに、ちょうどいい季節です。
先日、三人の天使のイラストを描いたら、幸い好評をいただいたので、今日は、新たな天使の手描きイラストと、イラストに添える新作童話を、ご紹介しようと思います。

私の描く天使は、羽の生えた赤ちゃんです。天使も赤ちゃんも、私にとっては、無垢と善の象徴です。
昨今は、露悪趣味的な傾向の強い創作物が、世の中に増えて来ているので、私はできる限り、そういうものの対極にある作品を作りたいと思っています。ただでさえ嫌なことの多い世の中に、あえて嫌な作品を増やすのは、それ自体、思いやりのない行為だと思うからです。


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星を調べる天使


わんわんわんわん、小さな星が泣いていました。
その声を聞きつけて
天使が三人飛んできました。
いたわりの天使が、泣いてる星をだっこして、
「ぽんぽんいたいいたい?」
と聞きました。
そしたら、なぐさめの天使が、星の顔をのぞきこんで、ふんふんとうなずいてから、
「ちがうよ、さびしいんだってさ」と言いました。
「さびしかないよ。空にはいつでも星がいっぱいじゃないの」
楽天家の天使が言ったので、なぐさめの天使は、ぐるりと一面の星を指さしてから、
「近くで見るとあんなに遠いんだもの。話しかけても聞こえやしないよ」
と言いました。
「じゃあ、今度からお前を、もう一つのさびしがりやの星の近くに、置いてやるね」
三人の天使は、星をかかえて飛んで行き
同じようにべそをかいていた小さな星の近くにおろしました。
星たちは、はにかみながら、すっかり泣きやんで笑いました。
つまりは、あなた方が今見あげている、いかにも仲良さそうな二つの星は、天使たちのおかげで、そんなふうに、近くでかがやいていられるようになった、というわけですよ。

おしまい




 10月も半ばになって、朝夕がひんやりしてきましたね。
イチョウやカエデなど樹木の紅葉が、少しずつ進んで行くのを、日々楽しめるのも、この季節の良いところです。

きょうは、ファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第10章・第5話を書き進めてみたのでご紹介します。

あらすじ
サキの忘れ物を届けに、フラトの西の国境まで出向いた魔法庁の役人、ダンケルとマイネですが、そこで革命派のヘブから、『すべての魔法使いを国外追放にせよ』との王命が下されたことを知らされ、革命の一派に加わるよううながされました。
辛くもその場を逃れた二人は、王命の真偽を確かめるため、ミステル職人が集まる村、キッタスに向かうのですが・・・。


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魔法使いサキの物語ー第10章・第5話

キッタスのコロビンが、その二人の訪問を受けたのは、魔法使い追放の王命の第一報が村に届いて、半日ほどたった、たそがれ時の事でした。
あわただしく家財道具を荷車にまとめている村人たちの、右往左往の合い間を縫うように、二人はコロビンの腰かける幌馬車の荷台の方に歩み寄ってきました。
一人は丈が七尺もありそうな大男で、背中の背負子(しょいこ)には一尺くらいの木箱が頑丈にしばり付けてありました。
もう一人は背の低い、ひ弱そうな色白の若者で、あたりのようすをしきりに気にしているのが傍目にも分かりました。
「コロビンさんですね。」
背の低い若者が話しかけて来たので、コロビンは「あなた方は?」と尋ねました。
「僕らは魔法庁長官のスナクフ様の遣いです。あなたにこれを渡すようにと言い付かって来たのです。」
その若者は、連れの大男が下ろした背負子から、魔法で縄を解いて木箱を外すと、ふたを開けて中に収められた黒曜石の手水鉢をコロビンにあらためさせました。
コロビンは
「ああっ・・・。」
と嘆息を漏らすと、
「これで、スナクフ様が起こしたという事件や、魔法使い追放の王命が本当の事だと、認めなければなりませんね。」
と、力なく言いました。
二人の使者が、息をのんだ後、そろってうなだれるのを見て、コロビンは、
「あなた方も、半信半疑だったのですね。ええ、王命は本当のようです。一番早い伝書鳩が、二日前の、都の混乱のようすを伝えています。すでに、軍や市民による、魔法使い狩りが始まったという事です。」
周りがいっそう騒がしくなって、馬車や荷車が、村の出口の方へゆっくりと、いっせいに動き出しました。御者台の方から、「受け取っちゃいかんぞ!」という声がして、コロビンの乗る幌馬車も動き出しました。
よろよろと荷台の後を追う二人の使者のうちの一人が、「俺たちはどうすりゃいいのさ?」と尋ねました。
コロビンは、申し訳なさそうに、
「ミステル職人たちは、魔法使いの中でも特に危険視されていますから、身の上を隠して、行動しなければなりません。ミステルを引き取ることはできないのです。」
と言うと、途方に暮れて立ち止まる二人に、遠ざかりながらこう声をかけました。
「スナクフ様は、それを承知で、あなた方にミステルを託したのです。それは占いをする時に使う水鏡です。差し上げますから、捨てるもよし、売り払うもよし、ご自由にお決めなさい。」
難民となった村人たちの一群は、しだいに列を整えながら、ゆっくりゆっくりと西へ向けて移動して行きました。
後には、もぬけの殻のバラックや、打ち壊されたミステルの破片、テントの切れ端、そして、行く当てのない二人の使者が取り残されました。

つづく








 こんにちは。
きょうは、天使のイラストを描いてみたので、ご紹介します。
タイトルは、「うち明け話」です。
まん中の天使が、左の天使に、なにやら耳打ちしようとしています。右の天使は、内緒話の内容をすでに知っているのか、左の天使がどんな反応をするのか、ようすを見守っています。


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最近、コミック用品専門のデリーターショップ(ネットショップ)で購入した、タチカワのスクールGというセピア色の万年筆(400円くらい)を用いて描いています。
インクの出方が滑らかでないのが欠点ですが、ペン先がとても細いので、微細な部分を描くのに重宝します。
画像処理ソフトでコントラストを強調して、線だけをくっきり表示するようにしています。







 こんにちは。
今日は、ファンタジー小説「魔法使いサキの物語」の、第10章・第4話を書き進めてみたので、ご紹介します。

前回は、魔法庁の役人ダンケルとマイネが、革命を画策する魔法庁の技師長ヘブから辛くも逃れるところまでを書きましたが、今回は、閑話休題で、サキと旅を共にするカイザールが、サキに物語ったミステル職人の言葉です。
ダンケルとマイネは現在、下の挿絵に描かれている、三つのミステル(魔法使いの道具)を所持しています。
左の横笛は、マイネの私物です。まん中のは、サキの忘れ物の小箱です。そして右のは、魔法長官のスナクフから、キッタスに届けるようにと頼まれた、占い用の手水鉢です。
今回のミステル職人の話を読むことで、これから物語に関わってくる、この道具たちの重要性が分かるのではないかと思います。

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魔法使いサキの物語、第10章・第4話
カイザールが物語る「ミステル職人コロビンの言葉」

「ミステルを作る職人は、魔法使いでなければなりません。
それも、一つの道具を、一人の魔法使いが単独で作り上げるのが、もっとも良い方法だとされています。
今では、ミステルの科学的な研究が進んだために、電気の塔のような大きな構造物も作れるようになりましたが、その建造に多くの魔法使いが関わっている分、その機能を維持し、安定的に運用することは非常に困難で、常に優れた魔法使いが相当数その任に当たっていなければならない、という問題を抱えています。
昔ながらのミステルは、むしろ自ら魔法を発するほどの力が込められていますから、維持するための労力などそもそも必要としませんし、使う者を助け、その力を高めこそすれ、それと引き換えに使う者を従属させる、などという本末転倒な事は起こりえないのであります。
もう一つ、重要なのは、優れたミステル職人が、優れた魔法使いだとは限らない、という事です。
逆に言うと、優れた魔法使いだからといって、優れたミステルが作れるわけではないのです。
ミステルを作るには、自然界のあらゆる約束事を、理路整然と把握することのできる、明晰な思考力が必要です。そして、その知識を形にする事のできる、高い工作の技能も身につけていなければなりません。
直観の鋭さが能力を左右する一般の魔法使いと、ミステル職人とは、こういう点が決定的に異なるのです。」

つづく


2015年10月|Kobitoのお絵描きブログ .719.717.716.715.709.706.704.702