ちょっとご無沙汰でした。
きょうは、童話「アンチャンの小人たち」の、第9話を書き進めてみたので、ご紹介します。
第1話で、私はこの物語について、「中編の童話にしたいので、6話くらいを目標に書き進めて行きます。」と書いたんですが、どうも6話どころでなく、倍くらい書かないと終わりそうにありません。^^;物語を広げ過ぎないように、川下りというシンプルな舞台を用意したんですが、それでも、登場人物五人それぞれの個性を描き切るには、6話ではあまりにも紙幅が不足だったようです。
物語がどのくらいの量になるか、書き始めた時に予測するのは、本当に難しい事です。
では、今回も、描き下ろしの挿絵と一緒に、物語をお楽しみ下さい。

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アンチャンの小人たち・第9話

「何か役立ちそうなものがないか、島を探検してみようよ。」
ウタオの提案に、ムスビは「何にもありゃしないさ。草一本生えない岩の島だぜ。」と言って、面倒くさそうに寝転がりました。
すると、ツキヨが、「ナイナ(探し物)はないと思う所にあるのよ。」と言って立ちあがったので、ケラとユニオも、腰を上げました。ケラは、あごをなでながら、「僕はここにナイナはないと思う、ということは、ナイナはやっぱりここにあると思うよ。」と、いかにも賢そうに言いました。
四人は、ウタオとツキヨ、ユニオとケラの二手に分かれて探す事にして、
「何か見つけたら、ムスビのところに戻って来よう。」と申し合わせてから、
それぞれ、別の方向に歩いて行きました。
このうなぎ捕りの石積みというのは、漬物石くらいの石を、小山のように積み重ねただけの、人間なら一人でも作れる小ぢんまりとした仕掛けなのですが、小人たちにとっては、丘や崖ばかりの、高くて険しい岩山の島でしたから、ユニオとケラは、助け合いながら、汗だくになって、この急な上り下りを乗り越えて、進んで行かなければなりませんでした。
ずいぶん歩きましたが、なめらかな石の道にも、ごつごつした石の道にも、石と石の境目にある大きなすき間にも、役に立ちそうな物はもちろん、役に立ちそうにない物さえ、何ひとつ見つけることはできませんでした。
しだいに、からだは小さいけれど、身軽でせっかちなケラが、運動の苦手なユニオより、少し先を歩くようになりました。
ユニオはケラが、勢い余って崖から転げ落ちやしないかと、ひやひやしながら、ふうふうあえぎあえぎ、ついて行くしかありませんでした。
とうとう、二人は山の頂上近くまで来ましたが、ユニオは目の前のひときわそそり立つ石壁を見て、へなへなとその場にへたり込んでしまいました。
「ユニオはそこで待ってて。ぼく探検してくるから。」
ケラはそう言って、くぼみに足をかけ、伸び上がってでっぱりをつかみ、そのままひょいひょいと、小気味よく石壁をよじ登って行きました。
間もなく、ケラはてっぺんまで登りきると、さらにその上に積み上げられた、お椀をさかさにした形の、まっ黒な大岩を見上げました。ケラは、「ナイナはここになさそうだから、きっとここにあるんだな。」と、自分に言い聞かせるようにひとり言を言うと、その大岩のふちに沿って、ひとまず一周歩いてみる事にしました。
しばらく行くと、大岩の端が、足場の崖っぷちよりも外にせり出していて、行き止まりになっているところがありました。でも、ケラは、大岩の下にわずかなすき間を見つけると、そこを腹ばいになって、身体をくねくねくねらせながら、上手にくぐり抜けて行きました。すると、その先に、少し開けた場所があって、そこの大岩の壁には、雨風もしのげそうな、深くて大きなほら穴が一つ開いていました。
ケラはそのほら穴の中をのぞき込んで、なんだかわけのわからないキーキー声で叫びました。
なぜって、そのほら穴の奥には、色々な種類の枯葉が、きれいな形のまま、たくさん詰まっていたからです。
無人島に取り残された小人たちにとって、これ以上に素敵な光景が、他にあるでしょうか。
ケラはさっきの絶壁に大急ぎでとって返すと、石ころにもたれて休んでいたユニオを見おろして、さかんに手まねきしながら言いました。
「よりどりみどりの舟があるよ!」
こういう時、私は、からだが小さいという事は、本当に素晴らしい事だな、と、思うのです。
なぜなら、私たち人間が、もし岩だらけの無人島に取り残されたとしても、こんなふうに、岩のくぼみに、よりどりみどりの舟が置いてある、なんてことは、めったに、あることではありませんからね。

つづく

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 童話や小説を書く事を趣味にしたいと思っている人が、「書き方が分からない」と、途方に暮れているのを、時々見かけますが、文章の技術的問題や、筋書きが思い浮かばない、という発想力の問題のいずれにも共通する、良い解決方法が一つだけあります。
それは、他の人が作った良質な作品を、たくさん見たり読んだりすることです。
アイデアというのは、完全な無からでも生み出せる、と、私は信じていますが、アイデアの元となる知識が多ければ多いほど、幅広いアイデアが容易に生み出せるようになる事も事実です。

また、良質な作品の判断基準としては、「ここ十年ほどの間の流行り物でなく、すでに高い評価が定まっている昔の作品」から選ぶ、というのが良いと思います。

なぜなら、新しい作品は、いずれも過去の作品から影響を受けて製作されているので、過去の作品から直接学んだ方が、アイデアの意図や美点をより純粋な形で感じ取ることができ、自分の作品に活かすことができるからです。

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(この絵は、ぼんやりと浮かんだイメージに基づいて描き上げました。二人の女の子が、道端の石に座って、馬車の到着を待っている、といった光景です。この一枚の絵からでも、書き手によって、十人十色のさまざまなストーリーが生み出せると思いませんか?)





 ちょっとご無沙汰でした。
きょうは、オリジナルの新作童話、「アンチャンの小人たち」の第8話を書き進めてみようと思います。
落葉の舟に乗って、川下りの冒険に出た、アンチャン村の五人の小人たちのお話です。

今回のお話に出てくる、”うなぎを捕るための石積み”というのは、以前私が住んでいた地域の川では、ごく当たり前に見られた漁法で、人が川に入って行って、石と石のすき間に潜むうなぎを手さぐりで探している様子も、目にしたことがあります。

童話の書き方は人それぞれですが、現実に見た事のある光景を物語に取り入れて、無理なく楽にストーリーを書き進めた方が、結果的に感情移入しやすい、親近感のあるお話が書けると思います。

それでは、挿絵の下から、物語の続きを、お楽しみ下さい。

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「アンチャンの小人たち」 第8話

ちょうど、川上から、川風が吹き渡ったものですから、落葉の舟はそれに乗って、するする空をすべり、やがて川の中ほどに人間が作った、うなぎを捕るための石積みの近くまで来たところで、水の上に落ちました。
小人たちは、落葉の縁をつかんで、張り付くように伏せていましたが、おそるおそる顔を上げたムスビが、
「全員無事か?」
と聞いたので、みんなも用心しいしい顔を上げて、それぞれのようすを確かめました。ツキヨは、息をのんだウタオとユニオを見て、それからまだ見てない顔がないか探しましたが、はっと気がついて、「ケラちゃんがいないわ!」と叫びました。すると、小さなケラは、幸いなことに、ユニオの陰から顔を出して、「僕は無事だった!」と言ったので、それで、みんなはようやく安心して、笑顔になりました。
でも、ほっとしたのも、つかの間でした。
「あっ、浸水だぞ!」
ウタオが、舟のまん中あたりに、ひびが入って、そこから水があふれ出しているのを、見つけたのです。
みんなはすぐに、手で水をすくい出しましたが、水はどんどん溜まるばかりで、どんなに急いでも、とても追いつきそうにありません。ウタオは、前方の石積みの島を指さして、「あの島にこぎつけよう!」と言うと、舟べりから手で一心に流れをかいて、舟をそちらに向けようとしました。
みんなも、水をすくい出すのはあきらめて、すぐに夢中で川面をかきはじめたので、舟はだんだん沈みながらも、しだいしだいに、石積みの島の方へ近づいて行きました。
やがて、舟は島のすぐ横を通り過ぎようとしましたが、みんなが、いっそうがむしゃらに水をかきつづけたので、どうにかこうにか、島の下流側の岸にたどり着くことができました。
小人たちは次々に岩場に飛びつくと、そこをはい上がりました。落葉の舟は、もうほとんど水に浸かっていて、小人たちが残らず島に移ってしまうと、透き通った水の中に沈み、ゆっくり回転しながら下流に流されて行きました。
みんなはくたくたに疲れて、丸い岩のてっぺんに座り込みました。ムスビが、すっかり遠くになった川岸を見つめて、「泳いでむこうに渡るのは無理だろうな。」と、つぶやきました。
確かに、私たち人間なら、歩いて渡れるほどの何でもない浅瀬なのですが、小人たちにとっては、海峡みたいな広さの大河を、流れや、渦に逆らいながら、泳ぎ続けなければいけないわけですから、とんでもないことでした。

つづく



 こんにちは。
きょうは、久しぶりに、ファンタジー小説、「忘れかけていた物語」の、第11話を書き進めてみたので、ご紹介します。

このお話は、ルイス・キャロルの、「不思議の国のアリス」のような、奇想天外なユーモア小説にしたいなと思いながら書いています。
”アリス”のような突拍子もない、それでいて無理のない展開にするのは、けっこう難しくて、長いこと考えては、少し書き進める、という感じで取り組んでいます。

下記が、登場人物と、あらすじです。

少女=さえ
かえる(大)=ブーン
かえる(小)=チョコ
緑の小人=グル
赤い小人=ピコ
蝶=フール
テントウムシ=ピック
樹木=トンおじさん
ロバ=ローマン
操り人形=ジョージ
猿=チャッキー
熊=リリィ

あらすじ
十五歳の少女さえは、小さなころは、空想が大好きでしたが、あんまりおかしなことばかり言うので、心配した両親から、空想をやめるように注意されました。
さえは両親を安心させるために、物語を書きためていたノートを、ちり紙交換に出しました。それから何年も経って、さえは物語の内容もすっかり忘れてしまいましたが、ある日、熱を出して寝込んだ時に、妙な世界に迷い込んでしまい、そこで暮らすおもちゃやぬいぐるみたちと出会います。彼らは、悪い魔法使いのズルから物語の世界を取り戻そうとしていて、ズルのところに行くためにはさえの協力が必要だと言うのでした・・・。

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チャッキーはリリィの前に進み出ると、キーキーと鳴きながらクルリと宙返りして、自分で自分に盛んな拍手を送りました。
リリィはまず、上座に立ってふんぞり返ったピコに、ひざを曲げてうやうやしくあいさつをすると、チャッキーの頭の上に赤い帽子をかかげ、エッヘンと咳払いをしてから話しました。
「なんじチャッキーは、このサンタクロースの帽子と引きかえに、これから先はつまみ食いやいたずらを止め、行儀良いお利口な猿になる事を誓うか。」
チャッキーは、両手を広げてぽかんとつっ立っていましたが、あわてて列の中ほどのローマンを振り返ると、肩をすくめながらキキッと鳴きました。
みんなもローマンの方を見たので、ローマンは首をすくめて、
「『なんでそんな誓いを立てなきゃならないんだ?』、と聞いてるよ。」
と、教えました。
フールが、赤い帽子の上にとまって、子供に言い聞かせるように言いました。
「戴冠式では、冠を受け取る者が、自分にとって一番難しい誓いを立てるのが、大昔からの決まりなのよ。」
すると、ピコの横に立ったブーンが、
「いにしえの時代、と言った方が優雅だわね。」
と言ったので、フールは「たしかにね。」と答えると、「いにしえの時代っていつごろなの。」と、トンおじさんに聞きました。
トンおじさんは待ってましたとばかりに、
「さよう、ざっと八百二十万年ほど前じゃな。」
と物知りそうにまぶたをとじてから言いました。
チャッキーは地団太を踏んで、ローマンを振り返ると、キキッキ!と鳴きました。
また、みんながローマンを見たので、ローマンはチャッキーと同じように口をとがらせながら、
「『そんな誓いはまっぴらだ!』と言ってるよ。」
と、教えました。
フールが、
「誓いが立てられないのなら帽子はもらえないわよ。」
と、チャッキーの鼻先をくすぐるように飛びまわって言いました。
チャッキーは地面を両手でたたきながら、ピョンピョン飛び跳ねて、ウッキキ!と高く叫びました。
みんなはまたすぐに、ローマンの顔を見ましたが、今度はローマンは、目をぱちぱちさせながら、首をゆっくり左右に振って、ブルルッと申し訳なさそうに鼻息をついただけでした。
「『帽子なんかまっぴらだ!』と言ってるわ。」
困り顔のローマンを見て、かわいそうに思ったさえが、代わりにチャッキーの言葉を通訳しましたが、みんながいっせいにさえを見て感心したので、とたんに自信がなくなって、小さな声で、
「たぶん。」
と付け足しました。
そこで、リリィは回れ右してピコと向き合うと、
「じゃあ、戴冠式はお開きよ。」
と言って、ピコの頭に丁重に赤い帽子をかぶせました。みんなが「ベラボー!」と言いながらさかんに拍手をしたので、ピコは誇らしげに、
「や、おかげさまで!」と言いながら、まるで王様になったみたいに、上品にみんなに会釈をしました。


つづく



 きょうは、制作中のファンタジー小説、「魔法使いサキの物語」の、第10章・第3話を書き進めてみたので、ご紹介します。
挿絵は、ハガキサイズのケントボードに、下描きをせずに鉛筆で描いたものです。

小説の書き方で、一つ重宝するのは、現実の出来事に対する自分の考えを反映させる、という事です。
今、国会では安保関連法案が審議されていますが、私はこの法律に関する与党の議論の進め方に、「自分の正義を他者に押し付ける」傲慢さを感じています。
憲法学者の大多数が、この法案は違憲だと指摘している中で、与党はその指摘を無視し、詭弁を弄してまで成立させようとしているわけですから、そんな不誠実な人々に、この白紙委任状的法律を運用させるなど、そもそも危険極まりない事であると私は考えます。
物語の中では、こういう意見を、露骨にならないように気を付けながら、反映するようにしています。
「正義の押しつけ」は、安保関連法案の議論に限らず、人間の普遍的な問題なので、あくまでも普遍性を感じるテーマとして扱っていくつもりです。


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あらすじ
サキの忘れ物を届けるために、フラトの西の国境までやって来た魔法庁の役人ダンケルとマイネは、そこで出くわした覆面の男たちのうちの一人、魔法庁の技師長ヘブから、テトの都でのアモス王の暗殺未遂事件を知らされ、それが魔法使いたちによる革命運動であることも明かされたのでした。

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「魔法使いサキの物語」第10章・第3話

ダンケルは、先刻バンサの丘で、マイネの魔法がいともたやすくヘブに打ち消されたことを思い出しました。あの時は、覆面の男たちの動揺の隙をついてその場を逃れることができたのですが、今度こそ、ヘブは二人に付け入る隙など与えないでしょうし、革命の事を二人に話したからには、手を組まない限りここから無事に解放してくれる事もないだろうと思えました。
ダンケルはヘブの手を握ろうとはせずに、「ともかくこの目で確かめさせてくれ。」と、答えました。
ヘブは手を下ろすと、マイネに、
「お前も来るだろうね。」
と聞きました。
マイネは
「ええ、行きますとも、技師長殿。だけど・・・。」と言って、驚いたように眼を見開きながら、ヘブの後ろの開け放たれた扉を指さしました。
気を逸らすつもりだと思ったヘブは、振り向かずにマイネを見据え続けましたが、不意に背後で地鳴りのようなものすごい音がして、砂嵐が建物を揺らしながら勢いよく吹き込んだので、暴れ狂う砂埃でいっぺんに視界も耳も利かなくなったヘブは、「わぁぁ。」と叫びながら、やみくもにダンケルの居たあたりに手を伸ばして、つかんだ服の袖らしきものを、放さないようにがむしゃらに握っているしかありませんでした。
やがて、風が弱まって、建物の揺れも収まると、ヘブは息をついて手ににぎった物を確かめてみましたが、それはさっきマイネが握っていたはずの、アモス王の布告が書かれた羊皮紙でしかありませんでした。

ダンケルとマイネは、馬を駆って、砂嵐に包まれた検問所から遠ざかりながら、思わず「エーハー!」と喜びの雄たけびをあげました。ヘブたちの馬は、ワナイの方に放ったので、すぐには追って来られないでしょう。
ダンケルは、興奮冷めやらない様子で、「まさかお前が、あんな魔法を隠し玉にとっておいたなんてな!」と言いました。
でも、マイネがぎょっとして「あれ、僕の魔法じゃないよ。」と答えたので、ダンケルはもう地平にかすむほど遠ざかった砂煙を振り返って、訳が分からないという顔つきでマイネを見ると、「俺でもないぞ!」と返事するしかありませんでした。

つづく

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