このブログではこれまで、私自身が製作した小説やイラスト、写真をメインに紹介してきたんですが、今日は趣向を変えて、私が今、一番応援しているロックバンドの動画をご紹介しようと思います。
バンドの名前は、Led Zepagain(レッドツェッパゲイン)といいます。
洋楽ロックが好きなら、1970年代を中心に活躍したロックバンド、Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)を知らない人は居ないのではないかと思いますが、今回紹介するレッド・ツェッパゲインは、レッド・ツェッペリンの音楽を忠実に再現することで高い評価を得ているアメリカのトリビュートバンドです。

私がこのバンドを知ったのは二年ほど前、YouTubeという動画サイトを通じてなんですが、2014年に、このバンドのギタリストとして、新しく日本人のジミー桜井さんが加入したことで、すっかりファンになってしまいました。

ジミー桜井さんのギターワークは、レッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジ氏のテクニックとサウンドを深く研究し、本物に迫ろうとする大変素晴らしいものです。
さらに彼の凄いところは、ステージごとに異なるアドリブを展開できる、即興性を備えたミュージシャンだという事です。
アドリブが主体のレッド・ツェッペリンの音楽を再現する場合、この部分が、非常に重要になってきます。

また、メンバーのスワン・モンゴメリー(ヴォーカル)、ジム・ウートゥン(ベース、キーボード)、ジム・カーシー(ドラム※追記 2015年10月現在のドラマーはデレク・スミスです。非常に高度で強力な演奏力を持った方です。最近の動画でご確認あれ。)の演奏も、レッド・ツェッペリンのロバート・プラント(ボーカル)、ジョン・ポール・ジョーンズ(ベース、キーボード)、ジョン・ボーナム(ドラム)の演奏をほうふつとさせる完成度で、ずっと聴いていたくなるような情熱や音楽愛が伝わって来る点も大きな魅力となっています。

今回紹介するのは、2014年7月24日にアメリカのカリフォルニアにあるチノ・シビック・センターで行われたライブ動画です。
観客による撮影で、1時間51分に及ぶライブの全体が収められています。

画像中央の再生ボタンを押して、お楽しみ下さい。




また、ジミー桜井さんが執筆する、レッド・ツェッパゲイン加入後の活動を伝える連載コラムが、池部楽器のホームページで公開されています。
アメリカの豊かな音楽事情を知ることができる大変面白い内容なので、ご興味があれば下記のリンクから足を運んでみて下さい。

Jimmy SAKURAI presents “米国ROCK紀行” Vol.1
Jimmy SAKURAI presents “米国ROCK紀行” Vol.2
Jimmy SAKURAI presents “米国ROCK紀行” Vol.3
Jimmy SAKURAI presents “米国ROCK紀行” Vol.4
Jimmy SAKURAI presents “米国ROCK紀行” Vol.5



 お早うございます。
きょうは、ファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の、第10章・第1話を書き進めてみたので、ご紹介します。
新しい章に入って、登場人物も、サキとカイザールから、ダンケルとマイネの役人コンビへとバトンタッチされます。

それでは、新しい挿絵とともに、お話の続きをお楽しみ下さい。

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【魔法使いサキの物語 第10章・第1話】

ところ変わって、魔法庁長官スナクフの命を受けてサキを追うダンケルとマイネは、フラトの西の国境にほど近い、ミナンザの谷に来ていました。
この谷を抜ければ、開けた荒野の先に、国境警備団の西部方面師団が詰める検問所が見えてくるはずです。
実は、彼らはこの谷の手前のバンサの丘で、野盗と思われる白い頭巾姿の男五、六人に取り囲まれて、あやうく荷物を奪われそうになっていました。マイネがすぐに魔法の笛を吹き鳴らして、男たちを踊らせたので、事なきを得たかに思われましたが、彼らの中の一人が魔法使いで、マイネに縄を打って魔法を打ち消してしまったので、二人は大慌てで逃げ出して、ようやく男たちの追跡を逃れ、丘を迂回してミナンザの谷に入る頃には、予定から半日も時間を無駄にしてしまっていました。
この半日の遅れが、二人の運命をおかしな方向へ向かわせてしまうのですが、それはまだ、彼らには知る由もないことでした。

むき出しの堆積岩の丘に挟まれた谷間を、追手に用心しながら突っ切って、二人は赤茶けた礫(れき)と砂の平らかな荒野に出ました。
行く手のはるか先には、小さな白い点のような建物が、陽炎(かげろう)に揺らめきながらかすかに見えて来ました。
二人はそのまま馬を駆けさせて、白い切石を組んで建てられた検問所の近くまで一息に来ると、やっと警戒を緩めて速度を落としました。
検問所は表の鉄の扉が開いたままになっていましたが、二人の到来に気が付いて出てくる警備団員は一人もありませんでした。
二人は下馬した馬を、建物の横手の馬止めにつなぐと、スナクフから預かった書類を手早く荷から取り出して建物に入りました。
マイネは書棚に囲まれて机が並んだこじんまりとした部屋を見回してから、「こんにちは。」と、大きな声で二度呼びかけました。けれど、いくら待っても役人が現れることはなく、奥の二階へ続く階段から降りてくる者もありませんでした。
マイネは冗談めかして、「やけに物騒な検問所だね。」と言いました。
ダンケルは疑わしそうに部屋の隅々をながめながら、「物騒なだけじゃない。この道中、ずっとおかしな事づくめじゃないか。」と言うと、ふんと鼻で息をついて、「馬に水を飲ませてくる。」と表へ出て行きました。
それから、二人はずいぶん長い間、警備団員が戻って来るのを待ちましたが、荒野にそれらしい人影が見えることはなく、念のために検問所の中も探してみましたが、奥の部屋や二階の見張り台にも、人が隠れていそうな気配さえまったくないのでした。
「真面目な話、これからどうする?」
マイネは椅子に座って、頭の後ろで手を組みながら、あきらめ気味に尋ねました。
「南の検問所に行ってみるか、昨日の宿場に戻って、役所に早馬を出して状況を知らせるか・・・。」
ダンケルも机に腰かけて、腕組みしたまま決めかねている様子でした。
マイネが突然飛び上がって、
「一ついい方法があるよ。」
と言うと、ダンケルを手招きしながら表に駆け出しました。
ダンケルがついて出ると、マイネは検問所の横の、国境線を定めた点々と続く標石の列のそばで得意げに立っていました。彼はダンケルにいたずらっぽく目をやると、ワナイの側に足を延ばし、その国境線をおもむろにまたぎ越えました。
検問所の中から、途端にけたたましい鈴の音が鳴り響くのが聞こえて来ました。
「これで誰も駆けつけなかったらお笑い草だね。」
マイネが国境をフラト側に戻りながら言いました。
ところが、それから二人はまた、半時間ほど検問所で待ったのですが、彼らの行為をとがめ立てる警備団員など、予想に反してただの一人も現れなかったのです。
これには二人もすっかりあきれて、とても笑うどころではなくなりました。


つづく



 梅雨です。
雨は、高度500~2000メートルの上空から落ちてきます。私たちの顔に落ちる、その一滴は、秒速6~7メートルで、70秒~300秒もかけて雲から落下して、ようやく到着したものです。
こう考えると、普段何気なく打たれていた雨も、とても尊いものに思えてきます。

さて、今日は、製作中のオリジナル童話、『アンチャンの小人たち』の、第4話を書き進めてみたので、ご紹介します。
小人たちが葉っぱの舟で川下りをするという、ごくシンプルな物語ですが、意外と書き進めるのが難しくて、毎回、ほんの少しずつしか進展しません。

挿絵は、今回で完成で、次回からはまた新しい内容の絵を添えようと思っています。

それでは、挿絵の下から、物語の続きをお楽しみ下さい。

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では、話を舟の上に戻しましょう。
舟のまん中に陣取ったムスビが、かいで岸の小石を突きながら、「帆をあげろ!」と言って、舟を流れに押し出しました。
ケラが、舟の上をくまなく見まわしてから、「どこに帆があるのさ。」と聞きました。ツキヨが「帆を張ったって思ったほうが気分が出るでしょう。」とこっそり教えたので、ケラはなるほどと思って、手を手繰(たぐ)って綱を引くふりをしながら、「帆を五枚も張ったぞ!」と言いました。
舟はするすると流れをくだって、ススキの葉のトンネルをくぐり、白い花がたくさん咲いたハコベの林のそばを通り、やがて村の外れのカラスムギの森の近くまで来ました。
森の傍(かたわ)らに、先日の雨で生えたらしい、一本のひょろ長いキノコが立っていました。一人の小人が、その幹を貝の刃で切り取って、タンポポの皮で編んだかごに集めていました。
小人は川下りをする一行を見付けると、岸辺の石にのぼって、手を振りながら、
「川下りしてんのか。」
と聞きました。ウタオが、
「そうさ。スッカラン村まで行くんだ。」
と答えました。
「おれも乗せてってくれよ。」
川岸の小人が頼みましたが、その時には舟はもうずいぶん下流に通り過ぎていましたし、
「ウヌイの葉っぱは五人乗り!」と、一行が声をそろえて答えたので、川岸の小人は、「次は六人乗りの葉っぱにするんだぞ。」と叫んで、残念そうに舟が遠ざかるのを見送りました。

つづく


 お早うございます。
きょうは、オリジナルの新作童話『話の種』が書き上がったので、ご紹介しようと思います。
童話の文章としては、中編の長さで、小学校高学年くらいから大人までが、楽しめる内容ではないかと思います。

私は出不精なので、旅などめったにしませんが、空想の中で旅行をするのは大好きで、現実の国の観光名所や、ファンタジーの中の珍しい国々を、心に思い描いては楽しんでいます。

今回は、イタリアのヴェネツィアが舞台のお話ですが、この小路と水路が張り巡らされた小都市は、ファンタジーの要素をふんだんに含んでいる、とても魅力的な街です。

じつは、ヴェネツィアは、グーグルマップのストリートビュー機能で、町の中を見て回ることができるようになっています。
グーグルマップは、私のとっておきの海外旅行の手段です。
色んな国の、いろんな場所が、まるでそこに自分が立っているように見て回ることができるので、ご興味があれば、「Googleマップ」を検索で探して、利用してみて下さい。

それでは、挿絵の下から、物語を始めたいと思います。


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『話の種』


 小さな小箱の話をします。
私が以前、まだ子供だった時に、持っていた不思議な小箱の事です。
中には、米粒くらいの小さなお話が、たくさん入っていました。
どれもごく短くて、ためになって、面白いお話ばかりです。
私はそれを、ヴェネツィアの、細く入り組んだ路地に並んだ、帽子屋や仮面屋やガラス細工屋の中の一つの、店構えからして古そうな、玄関の木戸に円いのぞき窓のある小さな骨董屋で、父から買ってもらったのです。
骨董屋の主人によると、この小箱が作られた頃には、話の種は、千粒以上も入っていたそうです。それが、長い年月をかけて、人手に渡るうちに、少しずつ使われて、今では、百粒くらいになってしまったのだそうです。それでも、まだ百粒も残っているなんて、すごく運が良いな、と思いませんか?どうやら、小箱の持ち主は、いずれも大人で、話の種が減ると、小箱の価値が下がると思って、できるだけ使わないようにしていたらしいのです。
ともあれ、私はこんな珍しい小箱を手に入れて、急に財産家になったような、ずいぶん得意な気分でした。

さて、私たちが買い物を終えて、ホテルに戻ると、部屋の前には、いつものように、ズボン吊りに小粋に腕をからめたルチオが待っていました。
ルチオというのは、父の友人の画家バッジョさんの子供で、私たちがヴェネツィアに到着した日に、バッジョさんの家を訪ねて以来、私のところにしょっちゅう遊びに来るようになった、六歳くらいの男の子でした。私はルチオのがさつさがあまり好きではありませんでしたが、遊びに来てくれるのは嬉しかったので、ルチオの案内で市場やあちこちのせまい路地をぶらついたり、あんまり暑い日は部屋の中でスコーパ(イタリアの伝統的なカードゲーム)などをして遊んでいました。
ルチオは私の上着のポケットのふくらみを目ざとく見つけると、「何を買ったんだ!」と言っていきなり手を突っ込もうとしました。
私はルチオを押しのけて部屋に逃げ込むと、追ってきたルチオから腰に抱き付かれながら、明るい窓辺にあるフランネルのソファまで逃げて、その上に倒れ込みました。
ルチオはうつ伏せになった私に馬乗りになって強引に裏返そうとしました。
伸びた爪で腕を強く引っかかれて、私はたまらず、
「コップに水を注いで来いよ!そしたら見せてやるから。」
と叫びました。
ルチオは洗面所まで走って行って、ガラスのコップに注いだ水をやたらにこぼしながら持ってきました。
私はポケットから例の小箱を取り出して、箱の横手の引き出しを開けると、中から一粒の話の種をつまみ出して、それをルチオが持ったコップの水の中にはじき入れました。
種の周りに炭酸のような細かなあぶくが出て、やがてそのあぶくがはじける音が、こんなことを言っているように聞こえて来ました。
『エジプトのピラミッドが本当は何のために作られたのかをエジプト人が一人も知らないのはおかしい。驚かそうと思って隠しているのじゃないか。』
ルチオも私も、こんなにおかしな話は聞いたことがなかったので、お互いを揺さぶり合って腹がよじれるほど笑いました。
「おい他のも聞かせろよ!」
ルチオにうながされて、私はもう一粒、話の種を取り出すと、笑いをこらえながらコップの水に落としました。
すると、さっきと同じで、種の周りには細かな泡が立って、泡がはじける時にはこんな話がかすかに聞こえて来ました。
『デンマークの学者が国によって猫の言葉が違うのかを調べるためにはるばる日本から三毛猫を取り寄せて自分の飼い猫と話をさせてみたが、言葉が通じたのかは猫同士にしか分からなかった。』
私たちはまたしても、ソファの上を絡まり合って転げながら、笑って笑って笑いました。
ところが、ルチオは私が油断をした隙に、ポケットから小箱を抜き取ると、それを私から取られないように後ろに隠しながら、「いっぺんに水に浸けたら面白いぞ!」と言いました。
私が腕をつかもうとすると、ルチオは身を低くしてかわし、乾いた声でからかうように笑いながら部屋の入り口の方へ駆け出しました。
私はかっとして、ルチオの後を追うと、彼の肩口を強くつかみ、はげしく振り回すように窓辺に連れ戻しました。そして、力が緩んだ彼の手から、小箱をひったくるように奪い取りました。
その時勢い余って、小箱の引き出しがすっぽ抜けて、部屋の開いた窓から外に飛び出しました。
私があわてて窓から顔を出すと、引き出しはくるくると宙を舞って、ホテルのすぐ横の水路に、話の種をばらまきながらゆっくりと落ちて行きました。
百粒の話の種は、水に落ちるやいなや、いっせいにそれぞれ違った話を語り出しました。それはまるで、昼時のリアルト市場のような大変なにぎわいでした。
でも、すぐに騒ぎは小さくなって、二つ三つのお話が聞こえるだけになり、やがて何にも聞こえなくなりました。
たぶん、種がみんな魚の昼ごはんになったのでしょう。
ルチオはこんなに面白い事はないという様子で、部屋中を跳ね回りながら笑い転げました。
私はというと、怒りに身を震わせていて、できればホテルの受付に頼んで警察を呼んでもらおうかとさえ思ったくらいでした。
でも、話の種をみんな魚の昼ごはんにしてしまったなんて、どんなに話の分かる警官でも、信じてはくれないだろうし、ルチオもそれを分かっているから、あんなに心置きなく笑い転げているに違いないのです。
私はルチオの腕をつかんで廊下に連れ出すと、何にも云わずに部屋へ戻って扉をバタンと閉め、鍵をかけました。
締め出されたルチオは、扉の向こうでしきりに私の名前を呼んでいましたが、私が一向に返事をしないと分かると、あきらめて家に帰って行ったようでした。
翌日、父の仕事の都合で、私たちは突然ヴェネツィアから離れなければならなくなりました。
あわただしく旅支度をすませて、部屋を出ると、廊下の壁にもたれて、ルチオがいつものように私を待っていました。私たちの荷物を見て、ルチオはちょっと驚きましたが、私に歩み寄ると、イタリア式のあいさつの頬ずりをして、「チヴェディアーモ。」と言いました。
私は、「チャオ。」とだけ言って、父に続いて足早にホテルを後にしました。
私は、最後にルチオに冷たい態度がとれて、心からせいせいしていたのです。でもそれは、ポケットに手を突っ込んでみて、そこに折りたたまれた薄紙を見つけるまでの間でした。
その薄紙には、あのすっかり失くしたと思っていた話の種が、一粒だけ包まれていたのです。押しつぶされて、扁平になってはいましたが、それはきっとルチオが、水路の岸辺を一心に探し回っているうちに、あやまって踏みつぶしてしまったからに違いないのです。
私は雑踏の中で立ち止まり、ホテルの方を振り返りましたが、船の時刻が迫っていたので、父を見失わないように、すぐに前を向いて歩いて行かなければなりませんでした。
それから、私は日本に帰ってきて、もう何十年も、イタリアを訪れる事はありませんでした。
ルチオは大人になって、舞台美術の仕事で、その筋ではある程度名前が知られるようになりましたが、私たちが連絡を取り合うことは、あれ以来一度もありませんでした。
そして、私は昨日、知り合いの舞台通から、ルチオが亡くなったという事を、知らされたのです。
だから、今日、私は、ずっと大切にしまっていた、ルチオが見つけてくれた話の種の、最後の一粒を、なぐさみに、水に浸けてみる事にしました。
そして、そのなぐさみの結果が、私にこの思い出話を、書こうと思い立たせたのです。
なぜなら、コップの水に浸した話の種には、声の聞こえるあの不思議な細かい泡など、これっぽっちも立ちはしなかったからです。
それもそのはず。よく見れば、それは、イタリアっ子が年越しによく食べる、ただの小粒な、レンズ豆でしかなかったからです。


おしまい


 今回は、一話完結の、少し怖い童話を書いてみたのでご紹介します。

これは4年前に起きた福島第一原子力発電所の過酷事故がもたらした、忘れてはならない教訓を示すための物語です。

今でも、原発事故の収束作業は続いており、今後何十年かかるか、上手く収束できるのかさえも分からない状況です。
ひとたび事故を起こせば、国も電力会社の幹部も原発を受け入れた地方自治体も、責任を取ることなど到底できない規模の放射性物質による汚染を引き起こし、しかも発電で生じた放射性廃棄物は地中に貯蔵するほかなく、その廃棄物の受け入れ先すら決まっていないという無責任な発電方法は、特に、地震、津波、火山、台風といった自然災害の多い国日本では、直ちに放棄するべきだと私は考えます。

なお、物語に出てくる「鈾石(ちゅうせき)」の“鈾”は、放射性元素のウランを表す漢字です。

では、描き下ろした挿絵の下から、物語をお楽しみ下さい。


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「世界のへそを取った男」

ある男が大変な苦労をして、プルシオンの密林の奥地で、この世にまたとない宝物を見付けました。
それは大きな菩提樹の根の股に、ちょうど収まるようにはまっている、人のこぶし大もある、プルテウ河のように透き通った鈾石(ちゅうせき)でした。
男は背嚢(はいのう=リュックサック)を下ろして、中からハンマーとたがねを取り出すと、ためつすがめつその鈾石を調べて、「混じりけのない純粋な結晶だ。この瑞々(みずみず)しさを見ろ。まるで内から輝くようだ。」と、興奮気味につぶやきました。
すると、背後から、
「それを取ってはならん。」
と声をかけた者があったので、男は不意を突かれて飛び上がるほど驚きました。
振り返ると、それは荒い麻布一枚を腰に巻いた、白髪と白ひげを長く伸ばした、やせて背の高い修行僧のような老人でした。
「それは世界のへそだから、取ったら大変なことになるぞ。」
老人がさらに言うので、男は
「どうなるというんです。」
と、たずねました。老人は鈾石のある木の股を指さして、
「世界がへその穴に吸い込まれて、何もかも消えてしまうのだ。」
と答えました。
男は笑って、
『そんなおかしなことがあってたまるか。こいつは俺と同じで、この鈾石を長い間探し回って来た男なのだろう。だから、すんでのところで俺に鈾石を取られたくないばっかりに、こんないいかげんなうそをつくのだ。』と思いました。
すると、老人はまるでその声が聞こえたかのように、首を横に振って言いました。
「これはお前のためを思って言っているのだ。よいか、もしこの世界もろとも自分が消えてしまいたくないのなら、そのへそを決して取ってはならぬぞ。」
「じいさんそりゃ下らない迷信さ。それに、俺は大臣にも森の民の長にもすっかり話を付けてあるのだ。あんたにとやこう言われる筋合いはないよ。」
男は老人に背を向けて、菩提樹の根に腰かけると、根と鈾石の間にたがねを差し込んで、迷わずハンマーを振り下ろしました。
うっそうとした木立に、きいんと乾いた音が鳴り響きました。
念のために男が振り返ると、いつの間に立ち去ったのか、老人の姿はどこにも見当たらなくなっていました。
森はしんと静まり返り、男のする事を、すべての生き物が、かたずをのんで見守っているようにも思われました。
男はいっこう平気で、力強くたがねを打ち続けました。菩提樹の根は削られて、しだいに鈾石の付いた岩石があらわになって来ました。
ふいにがくんとたがねが緩んだので、男は両手でしっかり鈾石をつかむと、そろりそろりと菩提樹の根の間から取り外しました。
鈾石が外れた岩石には、どこまで続くか分からない、真っ暗な縦穴が深々と開いていました。そして、その穴の底から、風音と共に、埃(ほこり)っぽい熱気が勢いよく立ち上り、のぞき込んでいた男の顔に吹き付けました。
すると、にわかに、男の世界は真っ暗になりました。
それは男の魂が、世界のへそに吸い込まれたからでした。
力なく菩提樹にもたれた男の手から鈾石がこぼれて根と根の間に転げ落ちました。
森はあいかわらずしんとして、あの老人が現れる事も、もう二度とないようでした。


おしまい


2015年06月|Kobitoのお絵描きブログ .667.665.664.662.660