ちょっとご無沙汰しました。
今回は、ぐずついた天気の続く今日この頃に合わせて、新作童話の短編を書いてみたので、ご紹介します。
雨の精の、雨の日のひとり言についてのお話です。
描き下ろしの挿絵も添えたので、お話と照らし合わせながら楽しんで頂けると嬉しいです。



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『雨の精としずく』

雨が降り続きます。
雨の精は、今日は南天の葉っぱに座っています。
白装束に、水色の薄絹の烏帽子(えぼし)をかぶった、小指の先くらいの可愛らしい子供で、手にはユリノキの種で作った笏(しゃく)を持っています。
南天の枝先に、たくさんの赤い実が実って、そのひとつひとつに、水晶玉のような雨のしずくがぶら下がっています。
しずくの中には、向かいの通りの家並みや、庭のすみの柿並木が、すっかり逆さまになって映っています。
「あの家には、逆さまに人が住んでいて、さかさまにご飯を食べて、逆さまの夢を見ているにちがいない。」
雨の精はそうひとり言を言って、しだいに大きくなったしずくが、南天の実から離れて根方の水たまりに落ちるのを見送りました。
「水たまりの家は、しずくの家と形が同じだけども、ずいぶん大きい。そして、やっぱり逆さまだ。だから、しずくの家の人は、手ぜまになったしずくの家ごと、水たまりの家に引っ越したのだ。」
そう言っているうちに、南天の実からは、また一しずく、雨粒がこぼれて、水たまりに落ちました。
雨の精は、南天の実にぶら下がったしずく、一つ一つに映った小さな家を見て、
「何軒引っ越しても大丈夫。水たまりの家では、一部屋が一つの国くらい大きいもの。」
と言いましたが、ちょっと小首をかしげると、
「もし、水たまりの家が、空き家じゃなかったら困るな。そういう時は、しずくの家の人たちは、『ちょっと屋根裏を間借りします。』と断わったり、近所に手ごろな空き家がないか、あっせん所を訪ねて回ったりするかもしれない。」
と付け加えました。
雨の精は、自分の思い付きが気に入ったので、足をぶらぶらさせて、南天の冷たい葉っぱをゆらしました。
すると、しずくの家の何軒かが、それならと、まとめて水たまりに引っ越しました。


おしまい



 子供の絵、特に、幼児期に描かれた絵というのは、大人が描いた絵にはない独特の雰囲気があります。
自由で、大らかで、常識にとらわれない奔放さが魅力だと思います。

パブロ・ピカソは、デッサン力の優れた画家として知られていますが、晩年、幼児画の魅力に惹かれて、技術を重視しない『子供のような絵』を描くようになりました。

この試みは、当時評論家からこっぴどくけなされましたし、現在でも、彼の膨大な作品群の中では、一段低く評価されているような気がします。

ただ、この時期にピカソが描いた絵に、励まされている描き手は、私も含めてけっこう多いのではないかと思います。

下の絵は、私なりに幼児画の雰囲気を出そうと努めて描いた絵です。


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タイトルは、『子供』です。
テーマを決めずに自由に描いているうちに、微笑んでいる子供の顔に思えたので、こういうタイトルを付けました。
ハガキサイズのケントボードに、色鉛筆で彩色してあります。

ピカソは、「本能的に、そして無意識に、私は絵のために絵を描く。」と語っています。
それは、子供が絵を描くときの理由と同じですし、だからこそ、ピカソは子供の絵に強く共感できたのだと思います。

私も、そこまで自然体で、自由な気持ちで絵が描けるようになりたいな、と願っています。



 きょうはオリジナルのファンタジー小説、『魔法使いサキの物語』の第8章・第1話を書き進めてみようと思います。
第7章では、フラトの王アモスが、全ての魔法使いを国から追放する命令を出した理由が語られましたが、今回は、白い影によってナップに飛ばされたカン・ソク先生が、同じ頃どうしていたのかをお話ししたいと思います。
挿絵は、今回用に描き上げたものです。
では、挿絵の下から、物語の続きをお楽しみ下さい。


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 通年風雪に閉ざされるナップでも、夏期には風が止んで、晴れ間が見られる日もあるのです。
けれど、今年の夏は、激しい吹雪が一向に収まらず、チェロとフキの兄妹が暮らす小屋でも、外出することさえままならない日々が、二カ月間も続きました。
カン・ソクは二人の介抱のおかげで、怪我の具合は良くなりつつありましたが、魔法を使いすぎた事から来る疲労がなかなか癒えず、まだベッドから起き上がることができずにいました。
フキは普段、家事をしたり、機織りをしたりで、小屋の中にいたので、カン・ソクは時折、彼女を呼んでは、話し相手になってもらいました。
「君たちが二人きりになってから、誰か、村から引き取りに来たり、世話をする人が来たりしなかったのかい?」
カン・ソクが尋ねると、フキは頭を横に振って、
「私たちは、大人と同じように何でもできた。村の人たちも、それが分かっていたから来なかった。」
「ダジーから教わったのかい?」
「ここで生きていくために必要な事は、初めから知っていた。星を授かったから。」
「星?」
「チェロも授かった。空から落ちた光、幸運の証。」
カン・ソクはフキの青く澄んだ瞳に見入っていましたが、引き込まれるような力を感じて、ハッとすると、窓の外で吹き荒れる風雪に目をそらしました。
すると、玄関扉を開く音がして、チェロが薪の束を持って隣の部屋に入って来ました。
「チェロ、ちょっと来てごらん。」
カン・ソクが呼びかけると、チェロは薪を持ったまま、部屋の入り口につっ立ちました。
フキがふたの付いた大きなガラス瓶をカン・ソクの枕元に置きました。
カン・ソクは、ガラス瓶のふたに包帯の巻かれた手を当てて、つぶやくように短い言葉を唱えました。
すると、瓶の中に、ぱっと火花が散って、青や赤や黄色に輝く光が、伸びたり輪になってはじけたり、まるで生き物のようにせわしく飛び回りはじめました。部屋の壁や天井にも、その光が映って、すすでくすんだ部屋は、にわかに色鮮やかな別世界のような景色に変わりました。
チェロもいつしか、フキの横に立って、瓶の中の美しい花火に見入っていました。
不意にフキが手を伸ばして、カン・ソクの手に自分の手を重ねたので、花火は光を弱めて、やがて消えてしまいました。
フキが言いました。
「私にも魔法が使える気がする。風の声がそう言っている。」
「風の声?」
「星を授かった時、風の声も分かるようになった。いまは、私に力を与えると言っている。」
カン・ソクは耳をすましてみましたが、聞こえるのは、外で吹き荒れる風と、雪が窓を打つ、うなりのような音だけでした。
ただ、そのうなりは、不思議な意思のようなものを、持っているように感じられるのでした。

つづく

 これは、うちの近所の港に泊まったクレーン船のクレーンの写真です。
このクレーンは、写真で感じられるかは分かりませんが、とても大きくて、高さが50メートルくらいあるのではないかと思います。クレーンを載せた船は、クレーンの半分くらいの大きさなので、倒れないのが不思議な感じです。
このクレーンは、遠くからでもよく見えるので、外出した時は、家の方向を知る目印になったりします。


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この大きなクレーンも、誰かが部品を組み立てて作ったんだなぁと感心しながら、いつも見上げています。



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