去年のクリスマスに、私は「アッチ」という、南極に住むペンギンの子供のお話を書きました。
一年経って、また、クリスマスがめぐって来たので、今日は、そのアッチの事を、もう一度、お話にしてみようと思います。
でも、今回の主人公は、アッチではなくて、きっと友達のカモメの方です。
私は、このお話に出てくるカモメのような、ノンキで気ままなキャラクターが大好きです。

それでは、描き下ろしの挿絵と一緒に、2015年のクリスマスシーズンの南極のようすをお楽しみ下さい。

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カモメが世界旅行から帰ってきた

アッチの事を、おぼえていますか?
去年のクリスマスにお話しした、南極の昭和基地の近くに住んでいる、小さなペンギンの、ひなのことです。
では、覚えている人には今年も、おぼえていない人には初めて、今年アッチが、クリスマスのころをどんなふうに過ごしたか、お話しすることにしますね。
一年の間に、アッチはずいぶん大きくなって、ふわふわの産毛は、テカテカの大人の羽毛に生え変わりました。
「赤ん坊の時は、大人の羽毛が、薄手で寒そうに思えたけれど、自分が生え変わってみると、ちっとも寒いことはなかったのよ。こういうのを、取り越し苦労と言うのよ。」と、アッチがカモメに話しているのを、私は聞きました。
でも、そのカモメは、去年のクリスマスのあと、里帰りする日本の観測船に乗せてもらって、世界一周の旅行に出かけたのでした。
カモメが言うには、「カモメは、軽いから、運賃は、いらないんだ。」ということでした。
ですから、アッチはこの一年、時々岬(みさき)のとっぱなへ上っては、カモメを乗せた観測船が今日戻るか、明日戻るかと、大海原を見渡しながら、心待ちに待ちつづけました。
それで、とうとう、クリスマスの前の日の今日、沖の方から、あの橙色の大きな船が、氷を砕きながらやって来るのが見えたので、アッチは飛び上がるほど両手をバタバタさせて、岬の上の雪が凍った坂を、寝そべって勢いよく滑り下って行きました。
海岸まで駆けて行くと、昭和基地の近くに泊まった観測船の方から、カモメが、よたよた歩いてアッチの方へ近づいて来ました。
「あれ!見かけないペンギンがいるぞ。」
カモメは、産毛の時のアッチしか知らないので、こんなことを言いました。
そこで、アッチは、小さくしゃがんで見せて、「私アッチよ!」と教えました。
カモメは、
「そうか、産毛が生え変わって、見違えたんだな。」と言うと、「僕はどうだい、世界旅行して、ずいぶん立派になったろう。」
と、その場で一回りして見せてから、聞きました。
アッチは、よくよく見てから、
「たぶん、そんなに変わってないわ。でも、そう思うのは、私が、出かけた時のあなたを、忘れちゃってるからよ。きっと。」
と言いました。
カモメは、いかにも残念そうでしたが、気を取り直して、「僕は、君宛ての、手紙を、預かったんだぜ。」
と言って、ふところから、一通の封書を、取り出しました。封書の表には、『南極の昭和基地の近くのペンギンのアッチ宛て』と大きく書いてあって、横の方に小さく、『北極のサンタクロースより』と書いてありました。
「まあ!サンタクロースさんに会ってきたの?」
「フィンランドのイワシ漁の見学のついでにさ。だけど、表札も出てないもんだから、ずいぶん方々探したぜ。」と言って、アッチに封書を手渡しました。
アッチは早速封筒を開いて、のぞき込むカモメと一緒に、広げた手紙を声に出して読みました。
『アッチよ。この一年、いい子にして、お父さんの日曜大工や、お母さんの庭造りの手伝いをして、えらかったね。今年のクリスマスも、楽しみにしておいで。それから、カモメに、また日本のお米を持って来てほしいと、伝えておくれ。……追伸。今年はいたずら者のオーロラの精たちに注意するようにと、トナカイたちに言って聞かせてあるから、安心おし。』
アッチは手紙を胸に抱いて、ホウッとため息をついてから、
「こんなに素敵なお手紙は、去年のクリスマスに、サンタクロースさんからいただいて以来よ。」と言いました。
そして、「カモメさん、ありがとう。今日は、旅のつもる話を、たくさん聞かせてね。」と頼みました。
すると、カモメは、首をちぢめて、一つ大きなあくびをすると、
「うん、だけど僕眠いんだ。昨夜は故郷に帰ってきた嬉しさで、一睡もできなかったんだもの。君ん家で寝かせてくれたら、明日の朝、つもる話をするよ。」
と言いました。
「あら、じゃあ、早く帰りましょう!」
アッチは、まぶたの重そうなカモメの肩を抱くと、サンタクロースからの手紙をしっかりくちばしにくわえて、凍った雪の道を、右によろけ左によろけしながら、支え合って家の方に帰って行きました。


おしまい


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 今日はクリスマスイブなので、季節限定イラスト&童話製作にチャレンジしてみました。
イラストはシャープペンシルでシンプルな下絵を描き、アクリル絵の具であまり色数を使わずに彩色しました。


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 この絵に描かれているのは、南極の、昭和基地の近くに住んでいる、コウテイペンギンのひなの”アッチ”です。
アッチは、ほかのヒナたちに比べると、ずいぶん体が小さいので、お父さんとお母さんは、ことのほか大切に、アッチを育てました。
ある日、アッチは、雪の野原で、おかしな袋を見つけました。その袋の中には、リボンを結んだいくつかの小箱と、何通かの手紙が入っていて、手紙には、それぞれのあて名と、『メリークリスマス。良い子へのご褒美だよ。サンタクロースより』というメッセージが書いてありました。
「これは、サンタクロースさんが、空からうっかり落っことした、クリスマスのプレゼントじゃないかしら。」
アッチはそう思って、袋をかついで、ふらふらと、雪の野原を歩き出しました。
サンタクロースの家まで、落し物を届けようと思ったのです。
アッチはまず、ペンギンの村長さんの家をおとずれました。
ペンギンの村長さんは、すごく年をとっていたので、物知りだったのです。
「サンタクロースさんのお家はどこなの?」
アッチが聞くと、ペンギンの村長さんは、
「わしは知らないが、オットセイさんが知ってたな。」
と言って、灰色の羽で雪の野原の向こうを指さしました。
アッチが袋を担いで、雪の上をせっせと歩いて行くと、オットセイさんは、岩の上に座って、手を打ちながらクリスマスキャロルを歌っていました。
「サンタクロースさんのお家はどこなの?」
アッチが聞くと、オットセイさんは、
「僕は知らないけど、アザラシさんが知ってたよ。」
と言って、前ひれで海岸の方を指さしました。
アッチは袋をかついで、またよろよろと海岸の方に歩いて行きました。
アザラシさんは、子供のアザラシといっしょに海に浮かんで、海藻でリースを作っていました。
「サンタクロースさんのお家はどこなの?」
アッチが聞くと、アザラシさんは、
「私は知らないけど、カモメさんが知ってたわ。」
と言って、岬の方を鼻で示しました。子供のアザラシもまねをして、岬の方に鼻を向けました。
アッチはまた袋をかついで、えっちらおっちら、岬の方に歩いて行きました。
カモメは岬のとっぱなに立って、うつらうつら、いねむりをしていました。
「サンタクロースさんのお家はどこなの?」
アッチが聞くと、カモメは、
「グリーンランドだよ。海の向こうの、そのまた向こうだよ。」
と答えて、ねむけざましの伸びをしました。
アッチはまだ泳げなかったので、グリーンランドまでどうやって行くか考えるために、袋を下ろして、カモメのとなりに座り込みました。
カモメが、「その袋は何だい。」と聞いたので、アッチは、「サンタクロースさんの落し物なの。」と言いました。
「南極には、おまわりさんがいないから、届けられないものな。」
カモメは、袋の周りをひと歩きすると、
「元のところに置いておきなよ。きっとサンタクロースさんが探しに戻るよ。」と言いました。
そこでアッチは、袋をかついで、うんせうんせと元の雪の野原に、戻ってきました。
すると、赤い三角帽子をかぶり、赤い服を着た、もじゃもじゃの白ひげのおじいさんが、眉をハの字にして、そこに立っていました。
「サンタクロースさん。落し物よ。」
アッチが袋をさし出すと、サンタクロースは、大喜びでそれを受け取って、「やあアッチ、ありがとうよ。」と言いました。
アッチが、
「いそがしそうね。」と聞くと、サンタクロースは、
「今夜はイブだからね。それで、急いでいたんだが、トナカイが空でくしゃみをしたひょうしに、袋がそりから転げ落ちてしまったのさ。」と答えました。
「トナカイは風邪を引いたの?」
「オーロラの妖精が鼻をくすぐったのさ。ここらの空はいたずら者たちの遊び場だからね。」
「そう。じゃあ、気を付けてね。」
「ほぅほぅ、ありがとうよ。」
サンタクロースが指笛を吹くと、どこからともなく八頭立てのトナカイのそりが現れて、サンタクロースとアッチの前にとまりました。
トナカイにはそれぞれたくさんの鈴飾りが付いていて、歩くたびにシャンシャンと良い音色が響きました。
「アッチが欲しがっていたプレゼントも、ちゃんと用意しているからな。じゃあ、行ってくるよ。メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
サンタクロースは、トナカイのそりに乗って、鈴の音を響かせながら、まっすぐに空へ昇って行きました。
アッチはすっかり嬉しくなって、走って家に帰りました。
次の日の朝、アッチは目を覚まして、枕元に、プレゼントの箱が置いてあるのを見つけました。
プレゼントには、『アッチへ、メリークリスマス。良い子へのご褒美だよ。サンタクロースより』という手紙が付いていました。
箱を開けると、中にはサンタクロースがかぶっていたのと同じ、小さな赤い三角帽子と、プレゼントの小箱を二つ包んだ袋が入っていました。
アッチは、さっそく三角帽子をかぶって、プレゼントの袋をかついで、家の裏口から表に出ました。そして、玄関に回ると、ドアをこんこんと叩いて、「メリークリスマス!」と大きな声で言いました。
間もなく、お父さんとお母さんがドアを開けて、「やあアッチ、メリークリスマス!」と言って、アッチを抱きしめました。
アッチは袋から、二人へのプレゼントを取り出して、「サンタクロースさんからの贈り物よ。」と言いました。
プレゼントには、『メリークリスマス。がんばり屋のお父さんお母さんへのご褒美だよ。サンタクロースより』という手紙が付いていました。
お父さんとお母さんは、アッチをもう一度抱きしめて、「ありがとうよ。サンタクロースさんからプレゼントをもらうのは、子供の時以来だよ。今年のクリスマスは特別素敵になったね。」と言いました。
アッチは、「ええ。素敵だわ。後でいっしょに、サンタクロースさんにお礼のお手紙を書こうね。」と言いました。
そして、お父さんとお母さんの嬉しそうな顔を、かわるがわる見上げると、まん中で二人と手をつないでから、ほくほく笑ってスキップで家の中へ入りました。


おしまい



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