今日は、オリジナルのSF小説(シナリオ)、『ハテナ』の主人公、ハテナのイラストを描いてみたので、ご紹介します。



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ハテナは、兵器として作られたアンドロイドです。作中では、感情を持たず、指令を受ければどんなことでも遂行する、危うい存在として登場しました。
現在は、心優しい少女、文(ふみ)の助力で、情緒を理解し、自分の意思で行動できる、人間らしい心を持っています。

ハテナは、もともとミディアムロングの髪型でしたが、文がショートヘアにしたのを見て、自分も真似をして、短くカットしました。
見た目が、サン・テグジュペリの童話『星の王子さま』の、王子さまそっくりになったので、文は彼女を、「星の王女さま」と呼ぶことにしました。
ハテナも、その童話が大好きなので、そう呼ばれることが嬉しいのでした。

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 今日は、制作途中だったSF小説、『ハテナ』の、第12話を書いてみたいと思います。物語は、今回で完結を迎えます。(最後の挿絵も、これで完成です。)
宇宙でのトアル軍との戦闘の末、フランネに保護されたアンドロイド"ハテナ"は、そこで英雄として迎えられ、正式な市民権を与えられ、さらには、一般人として生活する自由を保障される事になりました。

今、カノチの河畔に座り、トアルに残った親友、文とのメールを、頭の中で楽しむハテナは、もはや、かつてのような、上官の命令に絶対服従の、機械的な性質の持ち主ではありませんでした。
彼女は、今や、生きた瞳で、世界を見つめているのです。


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文は、パソコンの画面に映る、きれいな河畔や水鳥の様子を楽しみながら、ハテナに返信のメールを送りました。
『水鳥の事、ワッチさんから教わったの?』
ワッチというのは、フランネ政府からハテナの元に派遣された、国立科学技術研究所の職員のことです。
ハテナはうしろを向いて、土手の上からこちらを見ている、白シャツにネクタイ姿のワッチの姿を、文に見せました。すらっと背の高い、ブロンドの巻き毛の、穏やかそうな若者です。
ワッチが、ちょっと手を振ると、ハテナも軽く手を振りました。
『今、私に手を振ったのかしら。』
文が、メールでハテナに聞きました。
『そうかもしれない。』
二人がこっそりメールを交わしている事は、外見上、ワッチには分からないのです。でも、そういうことができる、という事は、ワッチにも分かっていました。
文は、映像が、再び川面の水鳥に戻ったところで、ハテナに話しました。
『私、髪を切ったの。今、すごく短いよ。』
『そうなの。見たいな。』
ハテナからの返事は、まるで本物の会話くらい、早く届きます。だから、文も頑張って、なるべく早く、キーボードを打つようにしています。
『今から、写メで撮った写真、送るね。』
しばらくすると、ハテナの受信箱に、文の画像が届きました。ロングのひっつめ髪が、思い切ったショートヘアになっていました。ちょっとおどけて、肩をすくめながら、微笑んでいる様子です。
『とても可愛いね。似合っているよ。』
『ありがとう。学校に行ったら、みんな、最初誰だか分らなかったって。』
『うん、分からない。』
文はくすくす笑いました。
『僕も、髪を短くしたいな。』
ハテナが言いました。
『ハテナこそ、似合うと思うよ。本当の星の王子さまみたいになる・・・。』
文は、赤毛の癖っ毛を、短く切ったハテナの顔を想像して、一人うなずきました。
そして、
『ハテナに会いたいな。』
と、言いました。
『僕も、文に会いたい。』
二人は、すこし黙って、川面を泳ぎ回る水鳥達を見つめました。
その時、ハテナの視界に、赤い小さな警告が表示されました。軍事作戦の、指令に使う、暗号化された電文が、届いた事を知らせる合図でした。
ハテナは、文に、『メッセージが届いたから、ちょっと待っていて。』と言いおいてから、その電文を解読しました。

『アナタハミライナノ?』

電文には、そう書かれてあるだけでした。ミライというのは、ハテナの前身であるアンドロイド、UM-02に、開発者のサトーと、その恋人ジャムが付けた、ニックネームでした。
ハテナは、いくつかのサーバーや衛星回線をさかのぼって、発信元が、ドリアン海のウレタ島である事を割り出しました。そこで、発信元のコンピューターに、こんなメッセージを返信しました。

『あなたはジャムですか?僕はハテナといいます。僕の中に、ミライの記憶はありません。でも、あなたとサトーの事は、父から聞いて知っています。あなたが僕に送った命令のうち、一つは、僕の大切な人を、傷つけるものでした。だから、僕は、従わないで良かったなと思います。もう一つは、多くの人を、助ける内容でした。だから、僕はあなたに感謝しています。ありがとうございました。あなたと話せて、嬉しいです。』

このメッセージに対する返事は、おそらくないでしょう。
そして、このやり取りは、ハテナのメモリーの奥深くにしまわれて、誰にも探し出すことができなくなるでしょう。
そこで、このお話を読んでいるあなたに、お願いがあります。
ハテナが自分から打ち明けようとするまでは、この事を誰にも、話さないで欲しいのです。
これは、ハテナにとって、とても大切な記憶だからです。

このお話を、初めから最後まで読んでくれたあなたになら、きっとできると思います。








この中編小説を書き上げるまでに、9か月もかかっている事に、今さらながら驚きました。^^;
無事に結末までたどり着けて本当に嬉しいです。
更新が滞る中、辛抱強くお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
今回の成果を、また、新しいお話作りに生かして行きたいと思います☆

Kobito


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 今日は、制作中のSF小説、『ハテナ』の、第11話を書き進めてみようと思います。
宇宙での激しい戦闘の末、全機能を停止した主人公ハテナが、その後どうなったのか、今回のお話で明らかになります。
挿絵も、新しく描き始めたんですが、今までと違って、ハテナも文も出てこない、風景画のようになりました。
どうしてこうなったのか、自分でも分からないんですが、何だかほのぼのして、このお話のエンディングには、ちょうど良いような気がします。

物語は、ちょっと説明的な内容になったんですが、良かったら、絵の下から続きをお楽しみ頂けると嬉しいです☆


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「ほら、白い船が来た。運搬船だよ。」
「きれいだねぇ。」
「うん、とってもきれい。」
「鳥がいるね。」
「渡り鳥だよ。ハナジロドリっていうんだ。怒ったみたいに、ゲーッ、ゲーッて鳴くよ。でも、怒ってるんじゃないんだって。」
「『ここにパン屑があるぞ。』って言ってるのかな。」
「うん。」

ハテナは、川辺の土手に座って、柔らかな日差しを浴びながら、文とおしゃべりをしていました。
でも、文が、隣にいるわけではありません。
ハテナの頭の中で、メールのやり取りをしているのです。
ハテナは、今、文から遠く離れた場所にいました。ここは、フランネの首都、カノチという町です。

半年前、ハテナがトアルの核ミサイル計画の映像を公開した時、主要国は協議を重ねた上、その映像が真実であるとの結論に達しました。
間もなく、BASE-9の周辺軌道を周回していた国際宇宙ステーションから、三隻の作業艇が派遣され、BASE-9の乗員と、宇宙空間を漂っていたハテナの救助活動が行われました。

トアル政府は、各国の非難を受けて、この計画が、トアル軍の独断によって進められたものであると発表しました。
囚われていた文は無事に解放され、首謀者のテッペン大佐は逮捕を免れるため、国外に逃亡したと報道されました。

回収されたハテナは、フランネの国立科学技術研究所に運び込まれ、そこで目を覚ますことになりました。
フランネ政府は、ハテナの英雄的な行為を讃え、正式な市民権をハテナに与え、一般人として、この国で暮らす権利を保障すると約束しました。

・・・というわけで、ハテナは今、フランネで暮らしているのです。
ハテナの気がかりは、文と共にトアル軍に捕まった、父親代わりのAIの行方が分からないということでした。
報道では、今も軍に囚われたまま、ひそかに研究を続けさせられているのではないか、という事でしたが、真偽のほどは分かりませんでした。


つづく


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 今日は、SF小説、『ハテナ』の、色塗り中だった挿絵が完成したのでご紹介します。
アンドロイドのハテナが、人の心を獲得した瞬間です。
人の心といっても、誰もが同じ心を持っているわけではありません。ハテナの中に生まれたのも、まぎれもない、『ハテナらしい心』です。
では、ハテナらしい心とは、どんなものでしょう?
それは、物語の第10話の中で、描いた通りです。


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ハテナは、友達の文のために、また、多くの見知らぬ人達のために、トアル軍の恐るべきミサイル計画を告発しました。
それは、命令に従うだけだったハテナにとって、とても難しい行為だったはずです。
でも、ハテナは、ためらうことなく、それを実行しました。
これが、ハテナの心です。
物語を考え始めたころ、私はハテナの心の目覚めについて、描こうと思ってはいませんでした。
むしろ、兵器としてのハテナが、人の手に負えなくなって行く、その過程を、シリアスに描こうと思っていたのです。

でも、物語を読んで下さった方が、ハテナの事を応援してくれているのを知った時、私はそういう結末を、書いてはいけない、と思うようになりました。

だから、ハテナが心を得ることができたのは、ひとえに、お話に根気強く付き合って下さった方の、温かい励ましの言葉のおかげなのです。
本当にありがとうございました。

次回が、最終回になるので、挿絵も、新しいものを描こうと思っています。
ハテナや文が、その後どうなったのか、みんなが納得できるように、書いてあげられると良いなと思います☆


Kobito


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 今日は、制作中のSF小説、『ハテナ』の、第10話を書き進めてみようと思います。
前回までのお話で、自我に目覚めたハテナが、初めて自分の意思で行動するようすが、今回の主要なテーマです。
挿絵は、色鉛筆の薄塗りで、全体の色調を確認した状態です。手早く塗って、綺麗な仕上がりにできたらいいなと思っています。
切りの良いところまで、お話を書き進めたので、かなり文章が長くなってしまったんですが、^^;ハテナができる精いっぱいの事をしてくれたので、絵と照らし合わせながら、辛抱して読んで頂けると嬉しいです。


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BASE-9の最後の砲台は、ハテナの放ったビーム砲によって粉々に撃ち砕かれました。それと同時に、BASE-9の船内では、配電盤から激しい火花が飛び散り、、コンピューターの操船システムが、完全にダウンするという事態に陥りました。照明が落ちて、やがて、非常灯のほの暗い明かりが灯ると、船長は乗員達に機器の状態を確認させましたが、BASE-9のコンピューターは、酸素の供給と、通信回線以外、全く機能しない状態になっていました。

ハテナは、BASE-9に構えていた砲筒をBIRDに格納すると、しばらく、目の中のモニターに映った文の顔を、じっと見つめていました。そして、慰めるような、穏やかな声で、
「文、こんな事に巻き込んでしまって、ごめんね。」
と言いました。
文が、唇を震わせながら、泣きそうな顔になったので、ハテナはまた、朗らかに微笑むと、両腕を広げてみせて、
「僕は、星の王子さまになったよ。」
と言いました。
「宇宙に来た時から、ずっとそうなんだ。星が、僕に語りかけて来るのを感じた。その星は、文だったんだよ。」
文は、ハテナの言葉にうなずつくと、涙目をぬぐって、
「ハテナは、女の子でしょう。星の、王女さまよ。」
と言いました。
「ほんとだ。僕、女の子だったよ。」
ハテナが、あらためて、セーラー服を着た自分の姿を見まわしたので、文は、怖いこともすっかり忘れて、クスクス笑ってしまいました。

ハテナも、文の笑顔を見て、安心したように笑いました。
すると、文の見ているモニター画面の隅に、小さな映像が映りました。それは、ハテナが見ているはずの、BASE-9のはんぺん形の船体でした。
「これは、BASE-9と言って、二年前から稼働している、宇宙ごみを回収するための宇宙船なんだ。トアルが建造して、各国の依頼を受けながら、ロケット打ち上げの際のはがれた部品や、故障した人工衛星の撤去などを行っている。」
ハテナは、BASE-9の画像を指さすように、文に説明を始めました。テッペン大佐は、ハテナが破壊行為を思いとどまったと知って安堵すると、彼女が完全に制御できると分かるまでは、ひとまず文との対話を続けさせることにしました。
ハテナは言いました。
「でもね、本当の目的は、デブリの回収なんかじゃないんだ。これは、地上を攻撃するための、核ミサイルを搭載する、発射基地なんだよ。」

テッペン大佐は、トアル軍の最高機密を、ハテナが知っていて、文に打ち明けはじめたことを、驚くと同時に、大そう苦々しく思いました。ハテナの思考回路は、やはり、軍事機密も守れないほど、混乱しているようでした。けれど、やがて、慌てた様子の兵士が、部屋に入って来て耳打ちすると、ハテナが何をしようとしているのか、テッペン大佐にもようやくはっきりと分かって、愕然となりました。
「映像が、インターネットに流れています!」

ハテナは、現在自分が見ている光景を、インターネットや、衛星テレビを通じて、世界中の国や地域に配信していたのです。
音声は、それぞれの言葉に変換されていましたし、映像も、BASE-9から撮影されたものを含めて、無人戦闘機との交戦場面まで、織り交ぜながら放映されていたので、人々は、ハテナがどんなに恐ろしい事態について話しているのかを、即座に理解する事ができました。
ハテナは続けました。
「二月には、補給物資にまぎれて、最初の核弾頭が搬入される予定なんだ。そうなったら、世界中の人々が、頭の上の爆弾を気にしながら暮らさなければならなくなる。でも、もう大丈夫なんだ。この船は、すっかり壊れてしまったから。今は、酸素の供給と、照明と、通信回線くらいしか機能していない。」

世界中に配信された映像には、テッペン大佐や、文の姿も映し出されていました。映像の重要性に気が付いた人々は、これが作り話ではなく、真実なのかどうかを確かめるために、映像に映った人物が誰なのかを、いっせいに探り始めました。
それらの中には、報道関係者や、各国の政府関係者も含まれていました。そして、その動きは、驚くほど早く、さらに多くの人々の間に伝わって行きました。

ハテナは、全てを語り終えると、あらためて文を見つめました。文も、心配そうに、ハテナを見つめ返しました。
そこで、ハテナは言いました。
「文、僕は何にも分からなくて、泣かせてしまったね。文が優しくしてくれたとき、僕は何にも、考えられなかったんだ。」
文は、頭を横に振りました。目にはまた、大粒の涙が溜まりました。ハテナは、切なそうに笑いました。
「でも、今なら分かるよ。文は、僕のこと、本当の友達だと思っていたんだ。文は、僕のことが大好きだったんだ。だから・・・、僕も・・・、僕も・・・。」

突然、ハテナは、口をつぐむと、うつむき加減になって、両手を広げたまま、宇宙空間に浮かんでいるだけになりました。

BASE-9の破壊命令が達成されたことで、トアル軍の送った、『自らの全機能の停止』命令が、実行されたのでした。
BIRDの両翼が、地球からの淡い光を浴びて、本物の青い鳥の翼のようにきらめきました・・・。

トアル軍の一室では、テッペン大佐が、ぼう然とたたずんでいました。アンドロイド計画と、BASE-9のミサイル基地計画が、同時に世界中の人々の知るところとなったのです。そして、二つの計画は、ハテナの手によって、完全に破たんさせられていました。

文は、ハテナの名前を、繰り返し呼びましたが、ハテナは人形のように浮かんで、BIRDと一緒にゆっくり暗闇の中を回転しているだけでした。文は、モニター画面に額を押しつけて、祈るように呻きました。そして、立ちつくしたテッペン大佐を振り返ると、震える声で、懇願するように言いました。
「ハテナを助けてあげて。ハテナは何にも悪くない・・・。」


つづく


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 今日は、制作中のSF小説、『ハテナ』の、第9話を書き進めてみようと思います。
挿絵も、また新しいシーンを描き始めました。これまでのお話が、ハテナと文を幸せにするために書かれたもの、と感じてもらえるような、さわやかな仕上がりにしたいと思っています。
下のあらすじを参考に、これまでの事と、これからの事に、思いをはせて頂けると嬉しいです。^^

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自らの意思を持たず、指令を忠実に実行するハテナは、宇宙船BASE-9に対して攻撃を仕掛け、無人戦闘機十一機と、BASE-9に備わった、十二の砲台を破壊する事に成功しました。
地球からの通信で、テッペン大佐に制止されたハテナですが、メモリーの中の司令官の序列に混乱が生じていたために、一向に大佐の言う事を聞こうとしません。
大佐は、拉致した文を脅して、ハテナに、破壊行為をやめるように言えと命令しますが・・・。
-----------------------------------------

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BASE-9の船内では、モニターに映し出されたハテナと、テッペン大佐達のやり取りを、乗員達が、かたずを飲んで見守っていました。エンジンを点火して、この場を逃れようとする事もできましたが、ハテナの正確な射撃が、すぐに船体の急所を打ち抜く事は分かっていたので、うかつに行動することができなかったのです。
その時、為す術なくたたずむ船長の元に、副船長が歩み寄って耳打ちしました。
「五番のビーム砲は、砲筒の一部を破壊されただけです。出力を上げれば、十分に標的を狙えます。」
モニターを見ると、ハテナは、地上との通信に集中しているらしく、動きを止めて、何事かつぶやいているようでした。
船長は、テッペン大佐から、ハテナを破壊せよという命令を受けていました。ですから、テッペン大佐がハテナの注意を引き付けているうちに、攻撃しなければならない、と思いました。
そこで、船長は命じました。
「奴がビーム砲の照準を外した時を狙え。一撃で仕留めるんだ。」

ハテナは、文から名前を呼ばれたとき、自分の中に、今まで気が付かなかった小さな場所がある事を知りました。それは、大切にしないと、簡単に壊れてしまいそうなほど、繊細で、柔らかな光を放っていました。ハテナは、文の声が、その光に、触れたような気がしました。だから、ビーム砲の照準を外して、こう言いました。
「文、僕ね------」
その時、BASE-9の砲台から、鮮やかな光の線が、ハテナに向かって放たれました。
ハテナが光に包まれながらのけ反ったので、文は小さな悲鳴を上げて、モニターの前で目をつぶりました。
恐る恐る、画面を確かめると、ハテナはのけ反った体勢から、くるりと宙返りして、BIRDのビーム砲を構えると、素早くBASE-9の砲台に発射しました。
砲台は音もなくばらばらに砕けて、宇宙空間に飛び散りました。
文は、胸をドキドキさせながら、あらためてハテナを見ました。
そして、びっくりしました。
ハテナが、笑っていたのです。
文の映像を見つめて、本当に嬉しそうに・・・。
ハテナの笑顔を、文は初めて見ました。


つづく

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 今日は制作中のSF小説、『ハテナ』の、第8話を書き進めてみようと思います。
イラストも、新たに描いてみましたが、主人公ハテナの、内面の変化について表したかったので、ちょっと不思議な感じの仕上がりになった気がします。


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下塗りに使った色鉛筆の風合いが、繊細で綺麗に思えたので、絵の具を塗らずに、これで完成にする事にしました。絵の中央の少女は、ハテナの友達の文(ふみ)です。
正面にいるハテナと、見つめ合っているイメージです。

では、これから、この絵にまつわるエピソードを、お話したいと思います------。


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ハテナの通信機に、BASE-9から、コンタクトを求めるシグナルが届いたのは、その時でした。
ハテナはビーム砲の出力をいったん落として、回線を開きました。
すぐに、聞きなれたテッペン大佐の声が、耳に届きました。
”UM-03、直ちに攻撃を中止して、BASE-9に帰投せよ。繰り返す、直ちにBASE-9に帰投せよ。”
ハテナのモニターに、テッペン大佐の姿が映りました。地球から、BASE-9を通じて送信された映像でした。
「お前は僕の最高司令官ではない。それに、お前は僕の味方でもない。」
ハテナは、通信機を通じて、自分の音声をBASE-9に送りました。
すると、テッペン大佐の横から、研究所長のシレットが顔を出して言いました。
”お前にインプットされた指令は敵が送りつけたものだ。トアル軍からのものではない。送信元を調べれば、それが分かるはずだ。”
「どこから送られようと、認証を通過した正式な命令だ。僕はそれを実行する。」
ハテナは再び、ビーム砲の照準をBASE-9に合わせました。
すると、テッペン大佐が、
”最高司令官ならここにいるぞ。任務は直ちに撤回される。”
と言って、画面を退きました。そこには、椅子に腰かけて、じっとこちらを見つめる、悲しそうな文の姿がありました。文は両手をきつく握りしめて、何か言いたそうにしていましたが、言葉にならない様子でした。

ハテナは、文の映像に、釘づけになりました。文の胸には、敵を意味するレッドフラグが灯っていました。

テッペン大佐が、文の肩を小突いて、小声でこう言いました。
「さあ、UM-03に攻撃を止めるよう命じるんだ。そして、BASE-9に帰投するように言え!」
文は、モニターに映し出された、宇宙空間に浮かぶハテナを、震えながら、一心に見つめました。ハテナは、ビーム砲を、こちらに構えて、身動き一つしませんでした。
その時、かすかに、ハテナのつぶやく声が聞こえました。それは、
「ふみ・・・ふみ・・・ふみ・・・ふみ・・・ふみ・・・。」
と、自分の名前を、機械的に呼び続けているのだと分かりました。
文は、ハテナがあまりに可哀想で、声を絞り出すように、
「ハテナ。」と声をかけました。

文の声が、ハテナの耳に届いた瞬間、ハテナの身体を、激しい稲妻のような衝撃が走りました。



つづく


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 こんばんは。Kobitoです。
今日は、制作中のSF小説、『ハテナ』の、第7話を書き進めてみようと思います。
このお話を書くとき、私は、他の物語とは違って、登場人物達の、人生に関わっているという、責任感のようなものを感じています。なぜ、そんな風に感じるのかというと、このお話が、実際にあってもおかしくはない内容だからではないかと思います。
人は、機械に対して、より高度な性能を求めています。このまま、科学技術が進歩すれば、いずれは、人が行うすべての行為を、機械が行えるようになるでしょう。
人と同じように行動できて、判断できる機械、それが、感情さえも、獲得したとしたら、私達は、彼らと、どのように向き合って行けば良いのでしょうか?
これは、手塚治虫さんが、『鉄腕アトム』の中で描いた問題でもあります。

アトムは、生まれた時から、感情を持っていたから、人とロボットの関わり方について、悩まされることも度々あったようです。
一方のハテナは、人間らしい、情緒というものを、まだ十分には獲得していないので、人の言うなりに、どんな事でも行ってしまうことができます。
人にとって、より便利なロボットとは、一体どちらでしょうか?

そして、そんな事を考えることが、はたして、人間らしい行為と言えるのでしょうか?


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〈ハテナ、ほら、花が咲いたよ。日々草の花。〉
〈ハテナは、何の花が好き?〉
〈きれいでしょう、ハテナ。〉
〈日々草の、花言葉はね、ハテナ・・・〉
〈ハテナ、ハテナ、ハテナ・・・〉

暗黒の宇宙空間に、ハテナは一人、浮かんでいました。
周囲に散りばめられた無数の星は、凍ったように、またたき一つしません。そして、音も、一切ありません。ですから、ハテナが動かなければ、あたりは、時間が止まったように見えます。

ハテナのモニターに、さっきから、警告のメッセージが表示されていました。何かが、こちらに近付いて来ていました。
ハテナは、じっとして、軌道に身を任せていました。そして、いつでも点火できるように、BIRDのエンジンに指令を送りました。
やがて、行く手に、いくつかの機影が映りました。それは、望遠機能で見た映像でしたが、十一機の、小型戦闘機だと判りました。丸い胴体に、十字に翼が付いた、コンピューター制御で動く、自立型の無人戦闘機です。

それらが、網のように、行く手に散らばって、ハテナを待ち構えていました。

ハテナの目は、その先に浮かぶ、大型宇宙船BASE-9の機体も捉えていました。BASE-9は、普段、外装に灯している灯火を全て消して、紫色の扁平な姿を、地球からの反射光にぼんやりと浮かび上がらせていました。

ハテナは、BIRDの出力を全開にして、まっすぐに無人戦闘機の防衛網の中に飛び込んで行きました。
戦闘機の放つ、ビーム砲の熱線が、音もなく幾筋も、ハテナのすぐ脇をかすめて過ぎました。ハテナは鋭く旋回しながら、手近な一機に狙いを定めると、BIRDの二門のビーム砲を、角度とタイミングを変えて発射しました。
無人戦闘機は、初弾を回避したところへ、二射目が到達したために、機体の上部を撃ち抜かれて、爆発しながら散り散りに弾け飛びました。

「何にも分からないんだ。」

無人戦闘機のコンピューターには、ハテナの人工知能の技術が、応用されていました。ですから、ハテナには、それらの行動パターンが、手に取るように分かりました。一方の無人戦闘機は、研究所にいたころのハテナのデータしかインプットされていないので、ハテナの動きを、ハテナほど正確には予想する事ができませんでした。

ハテナは、激しい砲火の中をさらに直進して、一機の戦闘機を撃破すると、防衛網を突破して、彼方に浮かぶBASE-9のおぼろな機影に近付いて行きました。

BASE-9は、船体の両舷から十二の砲台をせり出すと、ハテナに向けていっせいにビーム砲の熱線を放射し始めました。

ハテナは後方から追って来る戦闘機の一機を、振り向きもぜずに撃墜すると、入り乱れる熱線の嵐の中で、砲台の一つを、出力を落とした熱線で焼き切るように破壊しました。

無人戦闘機は、ハテナがBASE-9を回り込むように移動するので、BASE-9への誤射を防ぐために、攻撃の手を緩めざるを得ませんでした。
ハテナはそこで、動きの鈍った戦闘機を、片っ端から撃ち抜いて行きました。ハテナの手にかかれば、逃げ回るだけの戦闘機など、静止した標的と、さして変わりありませんでした。

------五分の後、無人戦闘機は、全て破壊されました。BASE-9の十二の砲台も、熱線に熔解されて、無残な姿をさらしていました。
それらは、全て、音のない中で行われました。

ハテナはBASE-9の船尾に、ビーム砲の照準を合わせました。そこを撃ち抜けば、燃料タンクが爆発して、BASE-9は、乗員もろとも粉々に吹き飛んでしまうでしょう。

BIRDの砲門が、エネルギーを充てんして、淡紅色の光を放ちました・・・。


つづく


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 今日は、制作中のSF小説、『ハテナ』の第6話と、新しい挿絵をご紹介しようと思います。





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この絵を見て、「あれっ?」っと思った方は、きっと、童話が好きで、色々な作品を読んでおられる方ではないかと思います。なぜなら、この絵は、サン=テグジュペリの書いた『星の王子さま』という童話の、表紙絵を、ほとんどそのまま模写したものだからです。

私は、このお話がとても好きで、今でも時々、書棚から取り出しては、好きなところから読み返したりしています。最初に読んだ時、私は結末で、思わず涙を流してしまいました。心の深い所に届いて、「君には、分かるよね。」と、何度も問いかけられた気がします。
翻訳者は内藤濯(ないとう・あろう)さんです。最近、現代作家の翻訳本が数冊出版されましたが、内藤さんの表した深い深い悲しみには、到底及ばないように感じます。
もし、これから本書を手に取ろうとされる方があれば、ぜひ、内藤さんの翻訳で読んで頂きたいです。

では、これから、この絵にまつわるハテナの物語をお話しようと思います。
星の王子さまと同じように、ひとりぼっちのハテナは、ついに宇宙に飛び出してしまう事になりました・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・・・〈星の王子さまはね、宇宙を飛んで、色んな星に行くのよ。そして、最後の星で、本当の友達を見つけるの。〉
〈星の王子さまはロボットなの?〉
〈どうして?違うよ。〉
〈だって、宇宙を旅しているのに、窒息しないから。〉
〈うふふっ、これ、本当のことじゃないのよ。お話だよ。〉
〈お話?〉
〈そう、空想ってこと。〉
〈何のためにするの?〉
〈空想?うん、楽しいからよ。〉
〈どうして楽しいの?〉
〈だって空想なら、宇宙を旅することだって簡単にできちゃうでしょ。〉------------




・・・ハテナは目を開けました。そこは、真っ暗な闇と、無数の星が散りばめられた世界でした。
ハテナは、宇宙に来たのです。空想ではない、空気も音もない本当の宇宙です。

どうやって来たのか・・・それは、こういう方法でした。
ハテナは、BIRDを手に入れた晩、すぐにトアルを離れて、内海を渡ること1500㎞の、シラン領内に入りました。
シランでは、その日、新型の気象衛星の打ち上げが予定されていました。
発射準備は夜明けから進められ、カウントダウンも定刻通りに始められました。数値がゼロを切ると、轟音とともにロケットの噴射口から飴色の炎と大量の白煙が噴き出します。
その時、発射台から、奇妙なものが飛び出して、ロケットの先端に取り付きました。それは、青い翼のある、人間のような姿をしていました。

ロケットはすでに地上を離れ始めていたので、打ち上げを中止することはできませんでした。
まっ白な軌跡を描いて、ロケットは青空の彼方までぐんぐんと上昇して行きました・・・。

今、ハテナは、ロケットから離脱して、宇宙空間を、BIRDと一緒に漂っていました。
打ち上げ中、耐熱シートで、全身を覆っていましたが、圧力と衝撃から、コンピューターの機能を回復するのに、少し時間がかかっていました。

ハテナは、視界に映るいくつかの星を、細い光の線で結びはじめました。それは、宇宙空間で、自分の位置を知るための機能でしたが、ハテナは、文から見せてもらった、星座図の通りに、その星々を、結んで行きました。
自分のまわりに、たくさんの星座を描き終えると、ハテナはこう思いました。

「僕は青い鳥と一緒に宇宙を飛んでる星なんだ。そして、僕は星座の一部になって・・・。」
ハテナは、それ以上考えられませんでした。いいえ、頭の中で、自分ではない誰かが話しているような気がしたのです。

全身の機能が正常だと確認できると、ハテナはBIRDを操って軌道を修正し、目的のスペースデブリ回収船と、いずれ接触できる高度まで移動しました。



つづく


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 今日は、制作中のSF小説、『ハテナ』の第5話を書き進めてみようと思います。
挿絵は、今回少し趣向を変えて、お絵描き仲間のにゃんたろさんに、色塗りをお願いする、という共作をしてみました。
完成版を見せてもらって、まず、髪の色の鮮烈さに驚きましたが、次第に、にゃんたろさんの優しさが、全体の色調やタッチから伝わって来るような気がして、とても好きな絵になりました。^^
皆さんにも、この絵から、ハテナという少女が、何を見て、何を感じているのか、想像して頂けると嬉しいです☆
物語は、いよいよ核心に向かって進んでいきます。ハテナの過去と未来が結びついて、全てが明らかになるように、頭の中を整理しながら書き進めて行きたいと思います。


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 ハテナに下された指令の内容を解読した研究者達は、ハテナが今後、どのような行動をとるのかについての、シュミレーションを開始していました。トアル国民を攻撃せよという命令については、ハテナにインプットされた司令官の序列の混乱が、実行を阻んでいるという分析結果が出ました。スペースデブリ回収船、『BASE-9』の破壊命令についても、ハテナの翼、通称『BIRD』に、大気圏離脱の能力がないことから、こちらも実現不可能なのではないかという意見が大半でした。
テッペン大佐は、ハテナが世間を騒がせる前に、回収できるのではないか、という期待を持ち始めていました。研究所長のシレットも、遠からずそうなるでしょうと、安堵の表情で太鼓判を押しました。

翌朝、文は、いつもの通り、家を出ると、通学路の途中にある、ハテナの家に向かいました。ハテナと一緒に登校するのが、文の日常であり、また毎日の楽しみでもありました。
「この前、泣いちゃって、ハテナを戸惑わせただろうな。謝らなくちゃ。」
文は、ハテナの家に着くと、呼び鈴を押して、いつものように、ハテナがきょとんとした顔で、玄関の引き戸をあけるのを待ちました。ところが、いつまで待っても、家の中はしんとして、誰も居ないようでした。
鍵がかかっていない引き戸を開けて、中の様子をうかがいましたが、やっぱり室内は静かで、人の気配はありません。
文は、どうしたんだろうと思いながら、ハテナの家を出て、通学路を学校に向けて歩き出しました。

通りの角を曲がったところで、文は数人の男に行く手を阻まれました。男の一人は、拳銃を握って文に構えていました。
「永井 文だな。話がある。来てもらおう。」
文は、なぜか、落ち着いていました。男達に案内されて、文は路肩に止まったバンの後部座席に乗せられました。
そこには、仏頂面をした、AIの姿がありました。AIは、文にとって、『ハテナのお父さん』でした。ハテナがヒューマノイドだと知ったとき、文はAIにその事を尋ねました。AIは、隠そうとはせずに、話せるだけのことを、話してくれました。
だから、文はAIのことを信頼していました。
文はAIの隣に座って、バンが動き出すのを、悲しい気持ちで感じました。


軍施設に移送されたAIの尋問は、テッペン大佐とシレット所長立会いの下で行われました。
AIがまず問い正されたのは、ハテナの記憶領域が、設計図とは別の、複雑な階層を隠し持っている、という点でした。
「この構造は、UM-02(ハテナの前身となる機体)を破棄するときに、不採用にすると言ったはずだ。なぜ、UM-03に転用したんだ。」
シレットの問いかけに、AIが答えます。
「記憶領域の潜在化は、人工知能の発達にとって極めて重要な要素です。サトーの設計は天才的でした。UM-02を破棄したことは、間違いだったのです。」
サトーというのは、このアンドロイド計画に初期から参加していた、人工知能を専門に担当する技術者でした。
彼は、計画参加後、ジャムという名のシステムエンジニアと恋に落ちましたが、トアルの諜報部員がひそかに調査した結果、ジャムはトアルと敵対するボロスカの諜報機関に所属するすご腕のハッカーだと分かりました。
サトーはジャムを通じて、ボロスカに情報を流出させた罪で逮捕され、強制労働キャンプ送りになりました。彼はそこで、過酷な労働と栄養失調のために亡くなっていました。
AIは、サトーの部下でしたが、人工知能の設計を引き継ぐことになり、あらためてUM-02の記憶構造の分析を行いました。ある時、偶然から、AIはUM-02のメモリー内に、まだ誰も見たことのないデータを発見しました。
それは映像で、サトーとジャムが、UM-02に語りかけている様子でした。二人とも、仲睦まじく微笑んで、とても楽しそうでした。
「お前も、彼らが好きだったんだな。」
AIは、無機質なモニターに、語りかけました。
UM-02の破棄が正式に決まった時、AIはひそかに記憶回路の設計図を複製して、ハテナの人工知能の設計に組み込む事を決めました。
「機械的に命令を処理するだけなら、簡単にできるでしょう。だが、情緒を理解した時、ハテナは、無用な過ちを犯さずに済むようになるのです。」
AIはそう言って、強い眼差しでテッペン大佐を見上げました。

『シランの人工衛星打ち上げ』のニュースが、テッペン大佐達の元に届いたのは、ちょうどその時でした。


つづく

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