制作を進めていた童話、「小さな幸せ」の、4枚目の挿絵が完成したので公開します。
お話も、今回で完結するので、良かったら絵と一緒にお楽しみ下さい。私のお話は、未完のものが多いので、エンディングにたどり着けたことが、何よりも嬉しいです。^^(「小さな幸せ」は、完成までに8カ月もかかりました。)
なお、挿絵は、一つ前の場面なので、今回のシーンとは結びつきません。初めて読む方は、どんなことがあったかを、想像しながら読んでもらえると嬉しいです☆


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お腹一杯になったジョーとトニは、横穴を後にして、さっきの、薄い光が一条差し込む、大きなほらの底に出て来ました。トニは、ほらの入口に、さっきの青い光が見えないので、「おかしいなあ。」と言いながら、目を手で隠したり、手を離して目を細めながら、入口を見あげました。
ジョーが、「何がおかしいの。」と聞いたので、トニは、
「目にね、赤いお日様が入っていたの。でも、見たのは青いお日様だったの。」と答えました。
ジョーはぶら下がったクモの糸をつかまえながら、「僕もそんなの、見た気がするよ。あれ、お日様の思い出なんだよ。」と言いました。
それで、トニも安心して、ジョーよりも先に、クモの糸を登り始めました。
ほらの入口では、帽子を握ったムラサキシジミが、何かブツブツ言いながら、歩きまわっていました。
ジョーとトニは、クモの糸を登りきると、ムラサキシジミに駆け寄って、息を切らせて笑いながら、「ただいま。」と言いました。
ムラサキシジミは、最初、ぽかんと口を開けていましたが、次第に笑顔になって、今度は、触覚をつり上げると、
「お前たちは、こんなに長いこと返事もしないで!」
とわめきました。
ジョーとトニはびっくりして、口々に小さな声で、
「ごめんね。」
と言いました。
ムラサキシジミは、鼻を鳴らして、帽子をかぶり直すと、
「うん、それで、幸せはたくさんあったのかね。」
と尋ねました。
トニは、両腕で抱えるしぐさをしながら、
「あきれるくらいあったよ。」
と真面目な顔で言いました。
ムラサキシジミはふふんと笑いました。
「そうだろう。あれはね、掃除穴。」
「そうじあな?」
「そう、リスたちが野原をかけ回ると、毛にたくさんの草の種が付くだろう。それを掃き入れる掃除穴。」
トニはそれを聞いて、「じゃあ、これから掃除穴の掃除ね。」と言ったので、ジョーは「大掃除だ!」と言って笑いました。
ムラサキシジミはうなづいて、笑いながらコートの襟をかき合わせると、
「さあ、私は行くけれど、お前たちは、自分で家まで帰れるかい。」
と聞きました。
「この土手たどって行くよ。」
ジョーが土手を指さしたので、ムラサキシジミは満足そうに、
「うん、じゃ、元気でやるんだよ。さよなら。」
と言いました。
「さよなら。」
ムラサキシジミは、その返事を聞くや否や、もうパッと飛び立って、青空のずっと高い所まで、木の葉のように舞い上がって行きました。
トニは、あごに指を当てて、その様子をじっと見送っていましたが、やがて、
「ああ、さっき目の中に入った青い光ね。あれ、春の妖精のお空だったんだよ。」
と言いました。
ジョーは、「本当にそうだ。」
と思いながら、ムラサキシジミの羽の、あの美しい、るり色の模様を、思い浮かべました。
冷たい風はいつしか止んで、南の空の高みでは、綿毛のようにまっ白なお日様が、二人のいるナラの木や野原を、洗い立てのまっさらな光で照らしていました。

おしまい








この童話に登場する、「草の種を主食にするアリ」は、日本にも生息していて、名前をクロナガアリと言います。クロナガアリは、秋だけ巣から出て来て、草の種を集め、巣に備蓄すると、その他の季節は、ずっと巣から出ずに生活するという、ちょっと珍しい暮らしをしています。ただし、クロナガアリは蜜を好まないので、作中のありんこの性質は、蜜も種子も好むトビイロシワアリの方が近いです。

童話、『アリとキリギリス』の中のアリも、きっとこの種類のアリではないかと思います。

それから、下の写真は、フリー素材のサイトからお借りした、実際のムラサキシジミの姿です。


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ムラサキシジミの羽は、上から見ると、こんな風に、美しい青い模様なんですが、裏側は、灰色の地味な色で、左右の羽を合わせた時は、ちょっと蛾のようにも見える、面白いちょうちょです。



物語を書き始めた時は、それぞれの生態を、よく調べていなかったので、作中には、いくつかの矛盾点が生じています。でも、物語は、勉強ではないので、面白かったらそれで良いと思っています。^^


最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
これを良い経験にして、また新しい物語やイラストを制作して行きたいと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いします☆


Kobito

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 今日は、ありんこジョーとトニが活躍するオリジナル童話、「小さな幸せ」の、4枚目の挿絵を描き始めたので公開します。画像は、下絵の線画に、色鉛筆で荒く色を付けて、アクリル絵の具で背景色の当たりをつけた状態です。
物語は、今回が一つの山場だったように思います。あとは、緩やかに下りながら、きっちりとしたエンディングにつなげていきたいなと思っています。上手に山を越えられたかな?^^



壁は、登るにしたがって、おうとつが無くなって、磨かれた大理石みたいにつるつるしてきました。トニは、何度か足をすべらせながら、横穴のあるくぼみまで登りつめると、その青く照らされた暗い穴をのぞき込んで、
「ジョー!」と呼びかけました。
返事はありませんでしたが、奥の方で、何かが、「ゴソッ」っと動いたので、トニは急に怖くなって、後ろを向いて逃げ出そうとしました。
すると、ほらの入口から、青くまぶしい光が照らしつけたので、目がくらんだトニは、「わー!」と言って、後ずさりすると、そのままうしろ向きに、穴の底まで落っこちてしまいました。
ごろごろした固まりの中にうずまって、トニはしばらく身動きもできませんでした。
ぶるぶる震えながら、耳を澄ましていると、やがて、とても美味しそうな、甘い匂いがただよってきました。トニは鼻をひくひくさせながら、あたりを見回すと、お腹の上に乗った、柔らかな毛の生えた、固まりの一つを手にとって、匂いをかいでみました。
「あ、これ、『空飛ぶ幸せ』だ。」
それは、トニの大好物の、タンポポの花の種でした。
「こっちは、『花火の幸せ』だ。」
もうひとつをかいでみると、それはヒメシバの種だと分かりました。
トニはようやく、自分が、たくさんの草の種の中に、うずまっている事に気がつきました。


img120 cs

すぐ横で、何かが動いたので、トニははっとして、音のした暗がりを見つめました。
そこには、ジョーが座って、皮をむいた美味しそうなススキの種を、両手で抱えて、じっとしていました。
「ジョー、何してたの。」
トニは、ジョーが何にも言わないので、怖々たずねました。
ジョーは、口いっぱいに頬張ったススキの種を、やっとのことで呑みこんでから、顔を赤くして、
「僕、食べてたの。」
と言いました。
そうです。ジョーは、あんまりお腹が空き過ぎて、トニたちの呼びかける声にも気付かずに、夢中で、草の種を食べていたのです。
トニは、種の山からはい出すと、「わーい!」と言って、トニに抱きつきました。
そして、「これみんなありんこの幸せだね。」と聞きました。
「うん、湿気ていない、上等の幸せだ。」
ジョーは、真っ白なススキの種を、半分に割ってトニに渡しました。トニは、うっとりするその匂いをかいでから、大きな口をあけて、柔らかなその角にかぶりつきました。そして、よく噛んで味わいながら、こんなにおいしい、幸せを食べたのは、生まれて初めてじゃないかしら、と思いました。
「みんな、こんなにいっぱいの幸せを見たら、おお喜びだねえ。」
「うん、お腹一杯になったら、みんなに知らせようね。」
「そうしようねえ。」
ジョーとトニは、そんなことを話しながら、自分の大好きな種を探しては、夢中になって皮をむき始めました。



つづく


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 制作を進めていた童話「小さな幸せ」の、3枚目の挿絵が完成したので公開します。前回と、あまり変わった所はないんですが、ありんことちょうちょに色ぬりしたのと、野原の色彩を少し濃くして土手の盛り上がりに立体感が出るようにしてみました。(画像をクリックして、表示された絵を再度クリックすると、若干拡大したクリアな画像が見られます。)
物語も、続きを書いてみたので、良かったら絵と一緒にお楽しみ下さい☆
今回は、ありんこのトニに頑張ってもらっています。^^


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「ああ、大変な事になった。私が降りるから、お前はここに居るんだよ。」
ムラサキシジミは、そう言ってクモの糸につかまりました。でも、脚はがたがた、手はぶるぶる震えて、今にもほらの中に落っこちてしまいそうでした。
「だめだよ!そんなことでは!貸してごらん。」
トニは、ムラサキシジミからクモの糸を受け取ると、ほらの中に、頭を下にして、ぶら下がりました。
「なんてかっこうだい!危ないよ!」
ムラサキシジミが止めましたが、トニは、
「この方が早く降りられるよ。」
と言って、するすると降りて行ってしまいました。ムラサキシジミは、はらはらしながら揺れる糸を見つめていましたが、しばらくすると糸の揺れが納まったので、暗闇に向かって、
「トニ、大丈夫かい。」
と呼びかけました。
「頭をぶつけたけど、落ち葉だったよ。」
という返事が聞こえたので、ムラサキシジミは、
「木の根元の方に、横穴があるかい?」
と聞きました。
トニは、ちょっと静かになりましたが、やがて、
「木の根元は、どっちなの?」
と聞き返しました。
ムラサキシジミは、すっかりあきれてしまって、
「やっぱり私が降りよう。」
と言うと、震える手でクモの糸をつかんで、恐る恐るほらの中にぶら下がりました。
トニはその様子を、ほらの底から見上げていましたが、空が急にまぶしく光ったので、目が痛くなって壁の方を見ました。すると、そこに、青空のような青い光が、横穴を照らしているのを見つけました。
「あれ!?大きな穴があいてるよ!あれかな!?」
トニが指すと、ムラサキシジミは、
「気をつけるんだよ。誰が居るか分かりゃしないよ。」
と、早口に言いました。ムラサキシジミは、やっぱり震えがひどくて、クモの糸にしがみついているのがやっとのようでした。
トニは、不思議な青い光を目印に、真っ暗なごつごつした壁を、一生けんめいによじ登って行きました。


つづく

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 制作中の童話イラスト、「小さな幸せ3」の、色塗りが進んだので公開します。ちょっと珍しい感じにしたいと思ったので、それぞれの固有色にとらわれずに、自由な気持ちで色を塗り重ねています。
お話の続きも書いてみたので、よかったら絵の下からお楽しみください☆


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「僕先に降りてみよう。」
クモの糸をつかんだジョーが、ほらの上に身を乗り出して言いました。
「糸が、ほらの底に届いているかね。」
ムラサキシジミが、暗がりをのぞいて言いました。
「届いているよ。かさかさ言うもの。」
トニが、ジョーの横にかがんで、クモの糸を揺さぶると、たしかに下の方で乾いた音がするのが聞こえました。そこでジョーは、クモの糸にぶら下がって、手足で器用に糸をつかみながら、するすると底の方へ降りて行きました。
ムラサキシジミとトニが、揺れるクモの糸を、じっとみつめていると、やがて暗がりの奥から、こんな声が聞こえました。
「ついたよ。底だよ。」
ムラサキシジミは、毛皮の帽子を押さえながら、かん高い声で言いました。
「木の根元の方を見てごらん。小さな穴があるはずだよ。」
それから、また長い間、ジョーは返事をしませんでしたが、突然、大きな声で言いました。
「あ!あったよ。でも大きな穴だよ!」
ムラサキシジミは、額を叩いて笑いました。
「そうだ、リスの夫婦には、小さな穴だけど、私達には、大きな穴だったね。そこに入るんだよ。」
「うん。」
ジョーは、また黙って、穴に入ろうとしているようでした。
ところが、
急に、「あー!」という声がして、そのあと、何にも聞こえなくなりました。
「ジョー!返事をして!」
トニが呼んでも、ムラサキシジミが叫んでも、返事はありませんでした。
ジョーはいったい、どうなってしまったのでしょう。



つづく

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 制作中の童話、「小さな幸せ」の、3枚目の挿絵の色塗りの様子です。
夏に、冬の野原の色を思い出すのは、けっこう難しいですね。それとも、私の物覚えが悪いだけでしょうか?・▽・;
お話は、絵の場面からまた少し進みますが、ジョーやトニやムラサキシジミが、どんな仕草をしているか、文章を読みながら、想像して頂けると嬉しいです☆

倒れたコナラ色ぬり1色強調縮小

「誰か住んで居やしないかしら。」
ジョーは、耳を澄ましながら、ほらの中の様子をうかがいました。
「リスの夫婦が住んでいたけれども、今はもう誰も居ない。別荘の木が倒れてすぐに、引っ越してしまったからね。」
ムラサキシジミは、そう言って木のこぶに腰かけると、心配そうなジョーやトニを見て、こう付け加えました。
「残ってるのは、なめくじや、団子虫たちだけだよ。」
「ジョー、あれを伝って下りられるよ。」
トニが、大きな声で上の方を指さしたので、ジョーとムラサキシジミもそっちを見ました。
コナラの枝から、クモの糸が、一本長く垂れ下がって、先端に絡まった枯葉が、風に揺れていました。
「どれ、私が取ってやろう。」
ムラサキシジミが、立ち上がって、羽ばたこうとしましたが、ジョーが呼びとめて、「僕がかみ切るよ。クモの糸、固いんだから。」と言ったので、ムラサキシジミはジョーを抱えて、パタパタ上の枝まで飛んで行きました。
やがて、クモの糸と一緒に、ジョーたちが降りてきたので、トニは枯れ葉を両手で受け止めて、ほらの中に落としてやりました。
ムラサキシジミとジョーは、クモの糸をゆっくりほらに下ろすと、もう一方の端を、ほらのふちの出っぱりに結びつけて、
「やれやれ。」と言いました。



つづく


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 制作中の童話、「小さな幸せ」の3枚目の挿絵を描きはじめたので、下絵を公開します。
お絵描きが好きな人に、一つアドバイスするとしたら、何の絵を描くにしても、まず実物(もしくは写真)を確認しながら描いた方が良いという事です。
この下絵も、コナラの木(冬の木)と、ムラサキシジミの写真を見ながら描き進めましたが、100%記憶を頼りにした場合より、それぞれの特徴が観る側に伝わりやすくなったのではないかと思います。
ただし、100%写真の通りに描くのも、面倒だし、面白くないと思うので、いくつかの特徴をつかんだら、後は自分の好きなように描く、という感じでまとめると、最終的には自分にとっても、観る人にとっても気持ちの良い仕上がりになって来ると思います。

倒れたコナラ ホワイトカラー縮小

線だけの下絵だと、分かりにくいかもしれませんが、土手が崩れて、コナラの木が、河原の方へ倒れている様子を、上空から見ているという構図です。右上に、蝶のムラサキシジミと、ありんこのジョーとトニが居ます。これまでの挿絵は、登場人物を大きく描く構図だったので、遠景の構図の絵を見ると、新鮮に映るかもしれないですね。



コナラの木色鉛筆 ホワイトカラー縮小

今回は、絵の具で塗る前に、色鉛筆で補助的な色付けをしておくことにしました。広い風景の絵は、人物画に比べて退屈になりがちなので、見栄えがするように、工夫をしてあげると良いと思います。
物語も、また少し考えてみたので、良かったら絵と一緒にお楽しみ下さい☆


逆さまになったコナラの木は、近くに行くと、ジョーが思っていたよりもずっと大きいと分かりました。
ムラサキシジミは、ジョーとトニを、コナラの木の、ごくごつした幹の上に下ろすと、うんと背伸びをしながら、「さあ、ここにお前たちの幸せがあるよ。」
と言いました。
ジョーは、すぐにあたりを見回して、幸せを探しはじめました。
トニもようやく、つぶっていた目をあけて、ジョーといっしょに、幹のくぼみや、こぶの後ろをのぞいて歩きました。
ムラサキシジミが、
「幸せの入り口は、木の高い所にあったよ。」
と言ったので、トニは、幹の高い方へ登ろうとしましたが、ジョーが、「そっちは木の根っこだよ。この木逆さまなんだ。」と言ったので、トニはかけ戻って、ジョーと一緒に、でこぼこした皮を乗り越えて、こずえの方へ下って行きました。
しばらく歩くと、幹に、大きなほらが、ぽっかり空いているのが、見えてきました。
「大きな幸せの入り口だねえ。」
トニが、ジョーの後ろから嬉しそうに言いました。でも、ほらのふちに着くと、底が見えないほど深かったので、トニは、小声で、
「真っ暗。」
と言いました。
「このほらの中を探すんだよ。おまえ達の幸せが、きっとたくさん見つかるよ。」
足の遅いムラサキシジミが、やっと二人に追い付いて、息を切らせながら言いました。



つづく


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 制作中の童話イラスト、「小さな幸せ、その2」が完成したので公開します。冬の物語なんですが、落ち葉を描き入れると、どうも「秋」の物語と感じる方が多いようです。雪を描かないで、冬らしく見せるって、難しいですね。^^;
物語の続きも、絵の下に書いてみたので、良かったら読んでみて下さい☆

ムラサキシジミ完成 色調整縮小

「春の妖精さん。僕たちを、そこへ、案内してくれない?」
ジョーが、ムラサキシジミに聞きました。
「いいとも。さあ、私の手につかまりなさい。」
ムラサキシジミは、二人に両手を伸ばしました。
ジョーとトニは、目をぱちぱちさせて、その手をじっと見つめました。
「飛んで行くんだよ。野原の向こうだから。」
ムラサキシジミは、そう言って両手を二人につき出しました。
ジョーがその手をにぎったので、トニもこわごわにぎりました。
「しっかりつかまっておいで。空では風が強いよ。」
ムラサキシジミは、二人をつかんだまま、パッと飛び立ちました。
目が回るくらい、、素早く地面から離れて、さっきいた場所が、もうどこだか分からないくらい、遠くになりました。
ジョーは、冷たい風を受けながら、一面の枯れた野原や、広々した河の流れ、それに、土手の向こうの、どこまでも続く青白い木立を眺めて、「なんてこの世界は広いんだろう・・・。」とつくづく感心しました。

「ほら、あれがそうだよ。私たちが、冬越しをしていた『別荘の木』だよ。」
ムラサキシジミが、前方をあごで示して言いました。
見ると、土手が大きく崩れた場所があって、そこに、大きなコナラの木が、根こそぎになって逆さまに倒れていました。

ムラサキシジミは、風にゆらゆらゆられながら、そのコナラの方へ、まっしぐらに降りて行きました。


つづく

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 オリジナルの童話、「小さな幸せ」の、2枚目の挿絵を描いてみたので公開します。ありんこのジョーとトニが、ちょうちょのムラサキシジミと出会った場面です。色を塗るかどうか、迷っていますが、少し色が入った方が、草などの形が見分けやすくなって良いかもしれません。ストーリーの続きも、絵の下に書いてみたので、合わせて楽しんで頂ければと思います。

小さな幸せシジミ下絵4 正視化2縮小

ジョーは、川のふちに着くと、ドングリの帽子で水をすくって、それをトニと一緒に抱えました。ドングリの帽子は、トニがすっぽり入れるくらいの大きさでした。水はとても冷たくて、両手が、凍えてしまいそうでした。それでも、ジョーとトニは、うんうん言いながら、その水を抱えて、ムラサキシジミの所まで戻りました。
苔の上に、ドングリの帽子を下ろすと、ジョーはさっきの砂糖のかけらを取り出して、水の中にそっとひたしました。
見えない毛糸のもじゃもじゃが、ゆっくりゆっくり、水の底から広がりました。
砂糖がすっかり溶けてしまうと、ジョーはムラサキシジミに聞きました。
「この幸せなら、どうかしら。」
ムラサキシジミは、コナラの落ち葉から降りて来ると、うっとりその水の匂いをかぎました。
「ああ、春の風の香りだよ。なつかしいねえ。」
「好きなだけ飲んでいいよ。」
ジョーが勧めたので、ムラサキシジミは「本当かい。じゃあ、お言葉にあまえて・・・。」と言って、一生けんめいそれを飲みました。あんまり夢中で飲んだので、ジョー達の分を残すのを、忘れたくらいでした。
ムラサキシジミは、空になったドングリの帽子を見ると、
「ああ、一人で飲んでしまうなんて、私は何て悪いちょうちょだろう。」
と言いました。
ジョーは、
「良いよ。飛べるくらい、元気が出た?」
と聞きました。
ムラサキシジミは、羽をパタパタゆらして、
「もちろん、仲間の所に飛んで行って、冬越しもできるくらい、お腹いっぱいになったよ。」
と言いました。
そして、
「おまえ達、草の種を探しているんだろう。私は、それが山ほどある場所を知っているよ。」
と言いました。
ジョーとトニは、びっくりしました。
そんな所が、本当にあるのでしょうか・・・。
ムラサキシジミは、二人の返事を黙って待っていました。


つづく

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 制作を進めていたファンタジーイラスト、『小さな幸せ』が完成したので公開します。
もっとしっかり色を塗ろうか迷ったんですが、素朴な味が薄まるような気もしたので、ここで筆を止めることにしました。

物語が、まだ半分ほど残っているので、今回少し話して、次回は簡単な挿絵を新しく描いて、エンディングに添えたいと思います。

小さな幸せ色ぬり2-2 正視化縮小


 河原の草原に着いた二人は、落ち葉をめくったり、枯れ草の茎に登ってみましたが、やはり、食べ物になりそうな草の実や、花の蜜などは、見つかりませんでした。
トニはすっかりくたびれて、枯れすすきの根元の、小石の上に座りこみました。ジョーも、トニの横に座って、しばらくぼんやり、足元の苔を見つめました。
「あ、春の妖精がいるよ。」
急に、トニが大声で言いました。
驚いたジョーが、トニの指した草むらを見ると、コナラの落ち葉の上で、一匹の蝶が休んでいました。
それは、春に、ここらの花畑を飛び回っていた、灰色の羽のムラサキシジミでした。
ムラサキシジミは、黒いふかふかの毛皮を着て、それでも寒そうに、体を縮めて、二人の方を見ていました。
「こんにちは。」
ジョーとトニが、近くで挨拶すると、ムラサキシジミも、ちょっと触角を折り曲げて、
「ああ、寒いねえ。」
と言いました。そして、
「おまえ達は、ここで何をしてるの。」
と聞きました。
それで二人は、長雨で、巣に水が入って、たくわえていた食べ物がみんな駄目になってしまった事を話しました。
ムラサキシジミは、
「それは、災難だねえ。」
とうなづくと、
「私らの家も、長雨ですっかり壊れてしまって、仲間の家に、引っ越そうと思ったんだけれど、お腹がすいて、私だけ、空から落ちてしまったんだよ。」
と言いました。
ジョーは、
「僕、幸せをひと欠けら、持ってるよ。」
と、砂糖の粒を取り出して、ムラサキシジミに見せました。
トニは、目を丸くしました。あの砂糖は、いったいどこから出てきたのでしょう。ジョーは、魔法を使ったのかしら、と、トニは思って、きらきら光る砂糖をしげしげと見つめました。
「私は、かたいものが食べられないの。花の蜜とか、樹液がいいね。」
ムラサキシジミも、砂糖を見つめて、残念そうに言いました。
ジョーは、あたりを見回して、ドングリの帽子を見つけると、それを拾って、
「ちょっと待っていて。」と言うと、走り出しました。
トニも、
「いっしょに行く。」
と言って、二人で草むらの中を走って行きました。


つづく




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 制作中のありんこの物語のイラストに、少し色を塗り始めたので公開します。前回の下絵と見比べると、ジョーとトニに触角が生えて、尻尾の形が丸く整えてあるのが分かると思います。以前より、少しアリらしくなったかな・・・。^^
お話の続きは、今から考えて絵の下に書きたいと思います。どんなお話になるのか、私にもまだ分かりません・・・。

小さな幸せ色ぬり1基礎 正視化縮小

 ジョーとトニは、野原の先にある、小川の方へ行ってみる事にしました。秋に、巣のありんこ達みんなで、シロツメクサの花の種を集めに行った場所です。
トニは、ジョーからもらった砂糖で、少し元気が出たようでした。
「シロツメクサは、雪のように白いから、きっと冬でも咲くんだよ。」
ジョーの後ろをついて歩きながら、トニが言いました。
「うん、雪は、シロツメクサに、そっくりだ。」
ジョーとトニは、去年の冬、巣の入り口が壊れて、みんなで修理をした時、真っ白な雪が、空から落ちては、地面に消えていくようすを、一緒に見たのでした。
土手の上の、わだちででこぼこな道を、やっとの思いで渡ると、坂の下に、広い河原が見えました。
けれど、そこは、秋とは様子が違って、茶色い枯れ草が、ずっとずっと、どこまでも広がっているのでした。
トニは、すっかりあきれてしまいました。ここが、本当に、バッタやテントウムシでにぎやかだった、あの河原でしょうか。
「ここで待っている?」
ジョーが、トニの顔をのぞき込んで聞きました。
トニは、びっくりしたように、目を大きくして、首を横に振りました。
それで、二人は、土手を下って河原の方へ、歩いて行きました。



つづく


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【中編童話・完結】 小さな幸せ|Kobitoのお絵描きブログ 15.147.140.121.114.101.97.84.73.61.46